会議中のバー
あれから十何年か経った。今ではお互いにみな女房、子供を持つ身である。それだけにあまり無茶も出来ないがせめて週に1度ぐらいでも、女房から文句を言われないで思いっきり美女を相手に飲んでみたいものである。
ところでそんな亭主族の願いをかなえてやるバーが西ドイツにお目見得して、非常な評判を呼んでいるという記事を新聞の「海外小話」欄で読んだことがある。
せっかくいい塩梅に飲んでいるところへ、例によって奥様たちは電話をかけてくる。「またバーで飲んでいるのね。早く帰ってこないと承知しないわよ」と。すると旦那様は「すまないが、いま重要な会議をしているところなんだ」という返事。それと同時に、会議場特有の雰囲気を伝える音、もったいぶったセキ払いなどがきこえる。「そうだったの、遅くまで大変ね」というわけ。
だが、もちろん会議などしているわけではない。種明かしをすればテープレコーダーに吹き込んだ録音の仕業なのである。世はまさに電子光学の時代。これをフルに活用すれば、ヘタな言いわけなどいらぬというわけだが、どうだろう。沖縄でもやってみてはー。
それにしても、こんな小細工を弄さなければ酒も満足に飲めないなんて、考えてみると世の亭主族もずいぶん弱くなったものである。しかも、これから、マイホームとウーマンリブにかこまれて、ますますその傾向が強くなることが予想される。そうなると、バーの方もコンピューターをつかわないと太刀打ちできなくなるだろうが、いずれにしても酒はやはり楽しく、愉快に飲めるものであってほしいものである。
次善の策
いろいろ、あることないこと書きならべてきたが、そろそろ紙数が尽きてきたので最後にもつ1つだけイミシンの小話を紹介して締め括りとしたい。なお、断っておくが、これはあくまでも筆者とは無関係のことなので、くれぐれも誤解のないように。
放蕩者にも、とうとう年貢のおさめ時がきた。医者は診察をすまして言った。「いちばんいいことは、宵っぱりをやめて酒や女を絶つことです」放蕩者は顔をしかめた。「いちばんいいことは、とてもできそうにもありませんね。次にいいことは何ですか」