【イベントレポート】泡盛BAR(石川酒造場 I.C Labo×サンシャインシティ水族館)

  • [公開・発行日] 2026/06/04
   

令和8年5月22日(金)から31日(日)の10日間、池袋・サンシャイン水族館のクラゲ展示エリア「海月空感(くらげくうかん)」で、「泡盛BAR(サンシャインシティ水族館 海月空感×石川酒造場 I.C Labo)」が開催された。「第17回サンシャインシティ 沖縄めんそーれフェスタ」の会期と連動した、水族館内での初イベントだ。

石川ラボ_会場

 

企画のきっかけは、サンシャインシティからオリオングループへの打診だった。
オリオンビールはすでにビアテラスを展開しているため出展の重複を避け、グループ傘下の石川酒造場(西原町)に白羽の矢が立った。
プロデュースを担ったのは、石川酒造場営業部課長(企画)の銘苅淳さんだ。

「通常の物産展のようにお酒が飲めますと出すだけでは面白くない」と銘苅さん。
そこで考えたのが、世に出ていない開発中のプロトタイプを試してもらい、アンケートで顧客の声を拾う「マーケティングテスト」の場だった。
石川酒造場にとって、事前マーケティングはこれが初の試みだという。

白衣の男性がプロデューサーの銘苅さん(写真:石川酒造場提供)

白衣の男性がプロデューサーの銘苅さん(写真:石川酒造場提供)

 

「I.C Labo(アイシーラボ)」の名が示すとおり、コンセプトは「クラゲの実験室」。
会場正面にはマンタや沖縄の県魚グルクンが泳ぐサンシャインラグーンの大水槽が広がり、泡盛ハイボール(Aボール)の「泡」と水中を漂う「クラゲ」をリンクさせた空間演出が施された。
運営協力の南都酒販がハブ酒を手がけていることから、「ハブとクラゲ=ハブクラゲ」というダジャレも遊び心として仕込まれている。

さらに期間中は、南都酒販のハブ酒「Double H」とのコラボショットも限定で提供。クラゲとハブが、同じ空間で相まみえた。

石川ラボ_南都

 

普段は表に出ない製造・開発担当者が白衣で接客に立った。
執行役員・製造部の石川由美子さんと研究開発部の山本博子さんがそれぞれ初日から2日間と3日間滞在し、その後は研究開発部長の上間長亮さんとバトンタッチした。
銘苅さんは「作り手のバックグラウンドを可視化し、顧客とのタッチポイントを作ることを重視した」と話す。

白衣の女性が製造部の石川さん。第一回の泡盛ブレンダー・オブ・ザ・イヤーを受賞した造り手(写真:石川酒造場提供)

白衣の女性が製造部の石川さん。第一回の泡盛ブレンダー・オブ・ザ・イヤーを受賞した造り手(写真:石川酒造場提供)

 

提供したのは3種類の「Aボール(泡盛ハイボール)」飲み比べセット。
ベースはすべて石川酒造場のライトな銘柄「島風」。常圧蒸留ながら冷却・濾過を強めに行い、泡盛特有のオイリーさを抑えたクリアな酒質の商品だ。

3種の内訳は、シークヮーサーの果皮を漬け込んで再蒸留(合計3回蒸留)した「シークヮーサースピリッツ」、スパイス好きの上間さんが遊び心から生み出し社内の飲み会でブラッシュアップされた「カルダモン(マイヤーレモン入り)」、そして通常は市販されていない島風の古酒を実験的に樽で寝かせた「樽貯蔵古酒」。
いずれも炭酸割り専用設計のプロトタイプであり「まだ名前のない商品」だ。

石川ラボ_3種

 

アンケートの結果、最も支持を集めたのは「カルダモン」、次いで「樽貯蔵」、「シークヮーサー」の順だった。銘苅さんによれば、香りの高さと飲みやすさが評価の理由だという。

一方、10日間1,000セット限定としていた提供数は350セットの消化にとどまった。
水族館という会場の特性上、家族連れや未成年者を含む若い来場者が多く、飲酒できる層が想定より限られたためだ。
「沖縄めんそーれフェスタ」の客層と、泡盛のマーケティングテストとしての場の組み合わせは、手応えと課題の両方を残す結果となった。

石川ラボ_看板

 

コスプレイベントへの参加目的でサンシャインシティを訪れ偶然この実験室に迷い込んだという女性チームは「泡盛には匂いがきついというイメージを持っていたが、飲み比べセットを体験して印象が変わった」という。特にカルダモンが気に入ったという女性は、普段は日本酒派とのこと。
少量の飲み比べという形式が、泡盛初心者の扉をそっと開く入口になっているようだ。

石川ラボ_コスプレ

 

I.C Laboは今回が初のフェスタ参加だが、プロジェクトの商品自体は、産業まつりで2回お披露目されている。
そこでは数量限定100本を完売した実績もあり、泡盛ファンの間では認知が広がりつつある。

「これが自信作です、と売るのではなく、何が好まれるかを探るテストの場として参加しています。石川酒造場は甕仕込みだけでなく、新しいことにもチャレンジできるということを示したい」と石川さん。

銘苅さんは今後について「シェリー、バーボン、新樽、ミズナラなど多様な樽を買い揃えて酒質の変化を研究している。ジンを樽に寝かせたものが非常に美味しく、手応えを感じている」と話してくれた。
カルダモンや樽貯蔵の商品化については現在検討中だ。

I.C Laboが目指すのは、ただ新しい石川酒造場の顔を作ることだけではない。
「Aボールの開発は、泡盛酒類市場全体の底上げにつなげることを目的としています」(銘苅さん)

クラゲが漂う仄暗い水槽の前で、まだ名前のないお酒を手に取った来場者の一票が、泡盛の未来をフワッと動かす力になるかもしれない。 

(文・写/岡山進矢東京支部長)

石川ラボ_水槽

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