逸材探訪 ~鑑定官が若き匠に聞く~(石川酒造場編)

   

1949年(昭和24年)、明治中期に途絶えた石川家酒蔵を首里寒川町に石川酒造場として再興し、現在は西原町に移転し泡盛を製造する石川酒造場。近代的な設備を持ちながらも、その一方で昔ながらの甕仕込み、甕貯蔵泡盛にこだわり続ける数少ない泡盛蔵です。

今回は、そんな石川酒造場の若き匠、石川由美子(いしかわゆみこ)さん、上間長亮(うえまちょうりょう)さん、知花賢吾(ちばなけんご)さんにお話を伺いました。

聞き手は、酒類業界を、技術的、行政的側面より支援するいわば酒のスペシャリスト、沖縄国税事務所の小濱元(こはまはじめ)主任鑑定官と宮本宗周(みやもとむねひろ)鑑定官にお願いしました。

逸材探訪~鑑定官が若き匠に聞く(石川酒造編)
聞き手:沖縄国税事務所 小濱主任鑑定官・宮本宗周鑑定官

右奥から石川由美子さん、上間長亮(さん、知花賢吾さん

右奥から石川由美子さん、上間長亮さん、知花賢吾さん

小濱:主任鑑定官の小濱です。よろしくお願いいたします。それでは、まずは一番お若いであろう、知花さんから、ご出身や経歴や趣味などをお聞かせ願えませんでしょうか。

知花:はい。私は、知花賢吾と申しまして、現在25歳です。興南高校(那覇市)を卒業したのち、琉球大学の生物資源科学科に進学、卒業しました。趣味はスポーツです。

小濱:スポーツというと野球やサッカーのようなものですか?

知花:野球もやりますし、学生時代はアルティメットというフライングディスクをつかった、ラグビーのようなスポーツをやっていました。今は、那覇マラソンに出場するのでそれに向けての練習をしています。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo02小濱:そのスポーツマンがである知花さんが、泡盛業界に入るきっかけは、どのようなものだったのですか?

知花:そうですね、実は二十歳になったばかりのころ、私の親戚の中にちょっと恐くて話しづらい方がいたんですね。

小濱:気むずかしいオーラを出しているような。

知花:はい。でも沖縄の場合、正月などに親戚がたくさん集まるじゃないですか。その時、みんなで泡盛を飲むんですが、泡盛を飲みながら話すとその方とも結構打ち解けて、仲良くなれたんですよ。その時、お酒ってすごいな、いいなと思いましたね。

それで泡盛を飲み始めて、その中でも石川酒造の甕仕込み泡盛が一番美味しかったので、石川酒造に就職したいなと思うようになりました。

小濱:就職はすんなりできましたか?

知花:就職活動の過程で、大学の先輩でもある上間さんと知り合いになりまして、先輩に仲介してもらう形で入社しました。

上間:一緒に飲みに行って、なかなか飲みっぷりがよかったものですから。

小濱:なるほど。ヘットハンティングをされた感じでもありますね。

知花:はい。

小濱:それでは、次に上間さんの経歴や泡盛業界に入ろうと思ったきっかけなどお話ください。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo03上間:はい。私は小禄高校(那覇市)を卒業して、琉球大学の生物資源学科に進学しました。泡盛業界に入るきっかけとしては、大学2年の時だったと思うんですが、授業の一環として泡盛の味がなぜ蔵ごとに違うのかを考えるという自主学習的なテーマを与えられたんですね。いくつかの蔵を見学させていただいたのですが、その時説明していただいた、当時私から見て、おじいちゃんみたいな人たちの目がキラキラしていて、なんかカッコいいな、と思ったんですよ。それで泡盛業界に入ろうと思いました。

小濱:業界には、すんなり入れましたか?

上間:いえ、当時、表向きの募集がなかなか無くて、大学卒業後1年間くらいは酒造所を回りながら名刺を置いてはピーアールしてました。その時、下水道管理事務所というところで沖縄県の臨時職員をしていたのですが、たまたま隣にいた職員の方が、照屋比呂子(てるやひろこ)先生と沖縄県の工業技術センターで一緒に働いていたことがあるということで、照屋先生をご紹介いただいて。

小濱:泡盛関連で多くの実績を残された研究員の方ですね。

上間:それで、照屋先生とお話する機会がありまして。当時照屋先生が県を退職されて石川酒造場の技術顧問をされていたんですが、その関係で、こちらの石川が産休に入るタイミングでお声をかけていただきました。

小濱:面接を受けてみないかと?

上間:はい。でもそれも急で「明日面接できる?」という感じで。急いで履歴書を書いて、職場には「明日休みます」と言って。それで面接を受けたら、いきなり5,6名の面接担当に囲まれまして。

小濱:最初から役員面接も兼ねている雰囲気ですね。

上間:社長も部長も石川もいて、皆にぐるっと囲まれました。別に威圧感とかは感じなかったのですが、その時社長とも話ができまして。石川酒造に拾っていただいたという感じです。

小濱:浪人までして蔵人になれたわけですね。ご苦労されてますね。石川さんはスムーズに入れましたか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo04石川:スムーズという訳ではないですね。私も出身は琉球大学の生物資源学科なのですが、卒業時期に泡盛メーカーの求人が男性しかなくて、卒業後1年ぐらいは、いろいとと仕事を探していました。その中でたまたま大学の先輩から、石川酒造が女性の職員を探しているという情報をいただきまして、面接を受けて入社しました。

小濱:女性限定だったのですか?

石川:前任が女性だったらしく、石川酒造は性別にはこだわりがないようで。面接の時も、品質管理ができれば男女どちらでもいいという感じで。むしろ女性の方がいろいろと細かいところにも目が配れるからいいよね、という好印象でした。スムーズという訳ではありませんが、思っていた以上には難しくなかったです。

小濱:なるほど。それでは、宮本鑑定官も自己紹介をお願いします。

宮本:今年4月に沖縄国税事務所に赴任しました宮本です。今年で任官10年目になります。沖縄の前は、熊本に3年、福岡に2年おりましたので、ここ最近の仕事としては焼酎関連が多かった感じですね。

小濱:鑑定官を目指した経緯など、簡単にでも。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo05宮本:そうですね、お酒が好きで、興味があったというのはありますが、ちょっと皆さんと違う感じなのかもしれません。

小濱:どのようなところがですか?

宮本:私の場合、テレビや雑誌や漫画などのメディアの影響が多少なりとも多いかと。もちろんお酒、特に清酒が好きで、酒類業界が面白そうだなとも思いましたが、それに加えて、酒造所が舞台の漫画やテレビなどから受けた影響が大きいです。その点、泡盛業界の皆さんは、泡盛が中心の漫画やドラマなどはないので、おそらく入口の環境が違う感じがします。

小濱:なるほど。さて、皆さん琉球大学出身ということですが、学生時代は今の仕事と関係するようなことを勉強されていたんですか? 

知花:そうですね、例えば黒麹菌の中でフェルラ酸を多く生成する株を見つけるため、自然界で黒麹菌を探してきて、選抜していました。

小濱:バニリン(バニラの香りの)の前駆体(元)のフェルラ酸ですね。黒麹菌は見つかりましたか?

知花:今は閉鎖されている昔の酒造所などにありました。

小濱:そこに取りに行くのですか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo06知花:直接ではなく、工業技術センターにたまたま保管されてたのを調べさせていただいたりしました。一応、高い数値を出す株はありましたね。

小濱:面白いですね。

知花:たくさん調べた中で、1、2株見つけました。自分の場合そういう研究でした。

小濱:なるほど。上間さんは卒業されてからだいぶん時間が経っているとは思いますが学生時代はどのようなことを研究されていましたか?

上間:泡盛鑑評会の審査員でもある平良先生が当時の指導教官なんです。今でも先生から言われますが、あまり真面目な学生じゃなかったですね。どちらかと言えば、人脈づくりといいますか、飲み会ばかりしていました。一応、卒論は、泡盛酵母でフェルラ酸エステラーゼの活性が高い酵母を選抜することがテーマでした。実用できるかどうかは別ですが、活性が高い酵母を見つけて卒論にはなっています。でも、今思えばもう少し頑張っておけば良かったと。

小濱:フェルラ酸を多く分離する酵母を探したのですね。そのテーマは後輩が引き継いでいるんですよね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo07上間:今は、もろみ中の乳酸菌や酵母以外のものでそういう働きがあるものを探していると思います。自分の場合、当時は実験しながら”これ何の役にたつんだろう?”という疑問が悶々とあって、だから「早く現場に行きたい!」という考えだったんですよ。でも逆に現場入ったら、こういう所でこういう研究が必要なんだなと理解できるようになって、今は、積極的にサンプル提供などで大学に協力しています。

小濱:後輩の支援をしているわけですね。

上間:現場からできることで恩返ししたいですね。

小濱:石川さんは当時のことを覚えていますか?

石川:覚えてますよ。覚えてますけど、すごく時代が違うなって感じますね。私が学生の頃は泡盛ということ自体が学問の中にあまりなかったので。

小濱:研究テーマの中に泡盛が乗らないという感じですか?

石川:あまりなかったですね。実際に教科書レベルでしか発酵学を学んでいませんし。入社した後に沖縄県などが泡盛の研究の重要性を認識し始めて、その後大学が動き出した印象があります。そういう雰囲気に変わっていくのを会社から見ていました。

小濱:なるほど。今ではすっかり泡盛が研究テーマとして定着している感じですよね。その点だいぶ違いますね。それでは、次に、現在のお仕事についてお聞きしますが、知花さんは現在どの部署を担当されていますか?

知花:担当ということなら、今はもろみ酢になりますかね?もろみ酢の絞り終わった粕を落として、ペレットという固形物を作る所を担当させてもらってます。

宮本:ペレットは飼料や肥料用ですか?

上間:もろみ酢を固液分離して固体の部分を有効利用しようということでやっている作業が彼の担当です。日本酒でいうところの”粕はがし”のような作業です。かなりの肉体労働ですね。

知花:それをやっています。

小濱:上間さんが入社した時は、どのような仕事からスタートされましたか?

上間:そうですね、石川が産休に入るというタイミングだったので、品質管理から入って、石川が復職したタイミングで造りの方に入りました。

小濱:もろみ酢と泡盛の造りということですか?

上間:泡盛が中心ではあったんですが、その中でも米蒸しや仕込みからですね。その後、今の開発にも携わるようになった感じです。

小濱:石川さんは基本品質管理ですか?

石川:私が入社した時にはまだ、品質管理も発展途上でして、もろみ酢の品管や泡盛の品管に手を加える必要があったので、そこから始めました。現在のもろみ酢の検査項目などは、当時試行錯誤しながら整理していったものです。泡盛に関しましても、当時照屋比呂子先生に顧問をお願いしていたので、相談しながら、自分自身で探して行った感じですね。

宮本:もろみ酢のデータといいますか、もろみ酢の管理が逆に泡盛の製造に役立ったことはありますか?

小濱:何かヒントを得たとか。

上間:管理と言うわけではありませんが、現場レベルで言えば、もろみ酢は工程の下流で、その一番最後の搾りの具合が分かれば、もろみの具合や麹の具合が分かる面はありますね。

小濱:搾りの具合が悪ければ、さかのぼってどこが悪かったかが分かる?

上間:そうですね。知花を下流から見せてるのはそういうのもありまして、もろみ酢が濁るとか絞れないとかそういう場合は、では、どこに原因があるのか?というのを将来的にさかのぼれるようになってもらう。石川酒造では、そういった人材育成の流れがありますね。

小濱:もろみ酢は特に衛生管理をしっかりしないといけませんからね。それが将来酒造にいきてくるということですね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo08上間:そういった目線を育むといいますか、そういった意味ではもろみ酢があることで衛生管理の面では厳しめになってくるのかなとは思います。でもやはり、全体含めて我々の作業はかなりきついんですよね。だから入社したいという後輩にはまずは実習においでと誘っています。

小濱:インターン的なお試しですね。

上間:その場合も、一般的には表面だけ見せて「泡盛っておもしろいですね」という感想を持つようなプログラムを組むんですが、泡盛の造り手になりたいという場合は掃除からやらせて「思ってたのと違うでしょ泡盛造りって」という所をきちんと見せます。知花の場合その上で「楽しい」って言っていたので、それならばやってみるか?と。弊社のタイミング的にも、若い技術者を育てる必要があって、マッチした感じですね。

やはり、そういった面では、泡盛が好きで、かつ、多少辛くてもがんばれる気持ちがないと続かない部分があるので、体験は大切かと思います。

小濱:石川酒造でお試し、体験ということですね。

上間:体験してみて、自分のイメージと合うか合わないかを知るのは大切だと思いまして。弊社に入社するかどうかは別としても、泡盛の仕事の現実はこうなんだよという、現場と学生を繋ぐ橋渡しができたらと考えています。

小濱:どうですか知花さん。暑さで汗だくのこともあるかと思いますが、辛くないですか?

知花:楽しいですよ。体力的にはしんどいですけど。全然まだまだ楽しいです。

小濱:フレッシュな気持ちで取り組んでいらっしゃるわけですね。

知花:全然楽しいです。

上間:なんだか知花を見ていると、自分も10年前になるんですが、入社したてのころを思い出すというか、こちらも楽しくなるんですよね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo09小濱:若いころの自分が楽しんでやっていたような感じで。

上間:もろみの攪拌など先輩の補助からスタートするのですが、かいを触らせてもらったり、攪拌を教えてもらったり様々な段階で感動があるんですよ。見てて楽しそうだなと。

石川:特に石川酒造はもろみ甕(甕仕込み)なのでだいたい最初に先輩に脅されるんですよ。割ったらダメだよって。

小濱:そうですよね。貴重な甕ですからね。

石川:教える側も、教わる側も誰にでもさせる仕事じゃないという自覚があるので、かい入れは非常に嬉しい瞬間でもありますね。

上間:ドキドキしながら。

知花:違うドキドキもありつつ。

小濱:カコン、カコンといったら怒られるわけですね。

知花:イッたときはヤバイと…。

上間:当てるなよ!でも、もっと大きくかきなさい!!と言われながら(笑)。若い子が入ると、自分の初心を思い出しますね。

小濱:思い出させてくれるわけですね。知花さんはまだ入社まもないですが、その中でも、ココが上手くいったとか、逆に失敗したりとか、ここを頑張っていますみたいのところはありますか?

知花:今やっているのがペレットですからね。搾りがあまい時は、水分が多くてうまくペレットが造れないのですが、先輩と試行錯誤して今はほとんど失敗がないようになってきたくらいですかね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo10小濱:入社してペレットを安定供給する工夫ができたということですね。上間さんは色々なご経験がありそうですが。

上手くいったことでもいいですし、過去に苦労したことでもいいですが印象に残っていることはどのようなことですか?

 

上間:そうですね。最近からですけど造りのメンバーで週1でミーティングするようになったんですが、これは上手くいっていますね。以前は各担当ごとにいろいろと判断していたのですが、全員で話すとそれぞれの違う視点、見方があって、互いの視野が広がりまし、情報共有もスムーズになりました。

小濱:問題を統合して解決できるようになったんですね。技術の伝承にもなりますね。それでは、石川さんはこれまで、ご苦労された話とか、上手くいった話とかありますか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo11石川:今はブレンドやお酒の味を整えるところにも力を入れていまして、それがハマった時は嬉しいですね。

小濱:狙った味になるということですね。

石川:例えば原酒が変わった時に、いままでの濾過では上手くいかなそうだという予測を立てて、それならばどうすれば良いかを考えて、結果が上手くいった時には嬉しいですよね、特に甕仕込み系と島風系では仕上げの仕方がぜんぜん違うので。

宮本:そういう話は意外と消費者の方は知らないじゃないですか。

石川:いつも同じ味が造れて当たり前というのが消費者の皆様の考え方かもしれませんが、特に古酒は貯蔵の年数によっても味が若干違ったりもするので、それを商品にする際に、同じ味に整えるのは実はかなり難しいですね。ですから、上手くいったときは非常に嬉しいです。

小濱:リキュールはどうですか?

石川:そうですねリキュールも違う意味で大変です。やっぱり泡盛は女性の方に受け入れられにくいところもあるので、リキュールも伸ばさなければ、ということでいくつか試作しましたが、泡盛に比べて意外と繊細なんですよね。火入れもするので度数調節も難しいですし、原料によっては味が変わることもありますし。あと、色も香りも見なければならないので、造るのは結構大変ですね。

小濱:確かに。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo12石川:今からは女性が飲みやすいリキュールが求められるので、それを造るように言われるんですが、その時は、大変ですが私も”女性の気持ち”になって頑張って造っています。

一同:(笑い)

小濱:いや、もともと女性だから女性の気持ちではないですか!?

石川:私あまりリキュール飲まないです。どちらかと言えばこちらが(泡盛)が好きで。

小濱:普段の感覚でこちら(泡盛)を造って、そうじゃない女性の気持ちでこちら(リキュール)を造っているわけですね。

石川:あとは、もう少し早いスパンで商品を開発できればいいなと普段から思っていますね。高い度数のお酒だとアルコール度数が1度変わってもあまり影響ありませんが、低い度数のお酒だとこの1度の違いが味に大きく影響するんですよ。この辺りの調整が難しくて。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo13宮本:男性と女性の話で言えば、男性だと年齢が変わってもお酒のイメージは大きく変わらないと思うんですけど、女性の場合は、妊娠、出産、授乳などでお酒を飲めない時期がある場合がありますよね。20代でお酒を飲んで、しばらくお酒を飲まなくて30代、40代になって飲んだ時、嗜好って変わるもんですかね?造る側から言えば、ターゲットによって造りを変えますか?

 

石川:今はどちらかと言えば、若い女性を意識していますね。若いときに飲んでもらわなければ、年配になったときにはさらに飲まれないような気がしますので。

宮本:なるほど。

小濱:言いにくい話だとは思いますが、泡盛業界に望むことや、ここは問題じゃないかと思うことなどはありますか?

知花:友達との会話で「ノンアルコールの泡盛って出ないのか?」というのはありましたね。

小濱:確かに、ビールや焼酎はありますよね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo14知花:興味はあるけど車だから飲めないということが学生でも多くあって。

小濱:琉大生は車で通学する方が多いようですからね。

知花:ノンアルの泡盛があれば、飲み会の輪に入りやすいですよね。友達から言われて「なるほど」と思いました。

小濱:それでは、将来開発してみたら?

知花:かなり技術的には難しそうですね。

小濱:そうですね、焼酎もノンアルはかなりの技術力が必要ですね。

知花:あとはもっと泡盛を知らせるイベントを多くして欲しいですね。

小濱:イベントを開催したら来てくれますか。参加者としてではなくPR側として。

知花:自分は確実に行きます。

小濱:頼もしい。それでは、上間さんはいかがでしょう。

上間:我々も含めて、泡盛といいますか、製造業者としての色々な底上げも必要かと思います。衛生面からシステムなども含めて基礎的な部分は情報共有をして横の繋がりを密にしてもいいのではなないかと思います。

もちろん秘匿すべきことは各社であってもいいとは思いますが、基本的な技術などは共有して、それをつかって自社の色とかを出すような取り組みができれば良いと。泡盛はいろいろなバリエーションがあるのでそこが強味でもあると思うんです。

私は良く「酒質のガラパゴス化」という表現をするんですが、独自の進化というのが欲しいですね。技術者がきちんとコントロールしてあえてこの味を出しているという説明ができるレベルで。理想的には、うちはソトロン系(キャラメル香)、うちはバニリン系(バニラ香)などと分かれれば、業界的にもバリエーションもあり強いのではないかと思います。

小濱:各社で系統が違うということですね。

上間:「石川(酒造)さんはメープルの香りが強いね」などと言われると、自分もしゃべりやすいですし。そういった会社の色みたいなものが、弊社だけでなく各社でできたら、それが束になった時に泡盛全体の魅力も増すのではないかと思うんです。

宮本:そうですね。最近、ある本土の方と飲んでる時に「泡盛ってどれを飲んでも泡盛なんだよね」という会話がありました。特に飲み慣れない県外の方にそのような意見が多いような。差別化は絶対に必要だと私も思いますね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo15上間:自社製品で言えば、島風のような万人受けするタイプの泡盛と、甕仕込みのような個性がある商品が石川の両輪ですね。島風は第2工場の泡盛で、甕仕込みは第1工場の泡盛で、自分のイメージとしては、第1工場はプロダクトアウトというか、アーティスティックに職人がうまいと思うものを造って、第2工場はマーケット向けという感じですかね。弊社はそれができるのが強味とも思います。

小濱:石川さんは何か業界に対する要望のようなものはありますか?言いにくいかもしれませんが、もしあれば。

石川:色々あるけど … … 何と言ったらいいのかな?

小濱:何かがしっくりこない??

石川:例えば表示関係ですね。段々と難しくなってきているじゃないですか、食品全般の話かもしれませんが。

小濱:食品表示法や公正競争規約関係ですね。

石川:はい。それと、PR用の表現も含めてですね。一例で言えば「”伝統の泡盛”というけど、伝統ってどんな根拠があるのか?」って消費者の方に聞かれたりするんですね。そうした時に、こういう理由で泡盛は伝統ですみたいなことを業界団体が言ってくれればそれが担保になると思うんですが、なかなか…。

小濱:表現の根拠が曖昧なのが不満ということですね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo16石川:おそらくこれから、消費者の方もいろいろな情報を欲しがると思いますし、それを流通させる業者さんは、その表現の正しさ、根拠を求めると思うんですよ。自分たちがラベルやパンフレットにこういう表現をしようと考えているが大丈夫かと問い合わせても、不安が残るので、もう少し、泡盛とはこういうものだよという基礎的な根拠だけでも業界としての共通認識が必要だと思うんですよね。

小濱:泡盛としてPRしていくときに、根本的な言葉、表現の根幹がガタつくとやりにくいというわけですね。

石川:おそらく資料などもそれなりにあるはずなので、まとめてもらえないかと思うんですよね。例えば泡盛の原料米としてタイ米がいつから使われているのか?と聞いてもなんだか曖昧で。そういう基本的などころ、伝統というなら、その根拠的なものを資料としてきちんと作っていただけないかと思うわけです。

小濱:なるほど。焼酎あたりでもきちんと歴史年表があって、関係者は覚えさせられますからね。泡盛でも将来的に一般の方に歴史を学んでいただこうという時に、年表がガタガタだと始まりませんからね。やはり歴史は魅力の一つですよね。その辺をきちんと整理しないと、今のような「なんか古くていいんだよね」といったフワッとした感じではちょっと問題ですね。

石川:自分なりに、一生懸命調べたんですけど、内容が本によって微妙に違うので、その辺りは業界でこの説を基本にするというのを決めてくれればいいのに、と思います。そうすれば、あちらで言っていることと、こちらで言っていることが100年も違うみたいなことは起こらないと思うんですよね。

宮本:その歴史の話、私も大事だなと思っていまして。九州から沖縄に来てみると泡盛と焼酎の製法が意外というか、全然違うんですけど、そういう意識が正直あまりなかった。対外的な説明が足りないというか。

沖縄に来て、蒸留器が馬のような形をしているのを見て、なるほど以前は地釜で釜に入れたもろみを火で炊いて、間接加熱したからその名残なんだろうとは思いましたが、その理由を聞いても「昔からあれだ」という感じで根拠がでてこないんですよね。

上間:横にしないと熱交換の長さがかせげないのでああなったのでは?

宮本:おそらく何かあるんですよね。

小濱:やはりそういうのが知りたいじゃないですか飲み手としては。こういう理由や歴史があってこうなっている。その結果がこうだといわれて納得できると飲んでみようと思うじゃないですか。そういう理由付け、歴史的なつながりが欲しいですよね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo17宮本:欲しいんです。伝統が形を変えてこうなっていますというのがあれば、ストンと腑に落ちますよね。

小濱:「なんだか古いんだよね」みたいな言われ方をしても響かないですよね。

上間:いろいろな面に理由はあるはずなんですがね。

一同:ですよね。

小濱:最後の質問になりますが、自分にとって理想の泡盛とは、将来どんな泡盛を造って行きたいかという夢みたいなものを語っていただきたいと思いますが。

知花:私は今の泡盛が好きなので、とりあえず今の泡盛は絶対なくしたくないのでキープしたいんですが、それとは別路線で、多くの人が美味しいっと言ってくれる泡盛ができるなら造りたいです。

小濱:今なら島風を少しずつ変えるという感じですかね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo18知花:そうですね。常に飲み会の場にあってほしいです。

小濱:定番泡盛といえば島風のように。

知花:そうなって欲しいです。

小濱:上間さんはどうですか?

上間:私も、いろんなシーンに石川の酒があってほしいなと思います。おそらく島風系統1種類だと難しいと思いますので、甕仕込みも含めてトータルに自社のお酒でカバーできたらと思います。その中でも、やはり甕仕込みの香り、甕特有の香りというのが好きなので、それをもう少し分かりやすくといいますか、もっと研ぎ澄ましていきたいと思います。

小濱:甕香を進化させるというか、ブラッシュアップさせるということですね。

上間:そうですね。甕仕込み特有の甘いメープルのような香りを、もう少し進化させたいなと。泡盛が他の酒類に勝てるとしたら古酒香だと思いますので。それをもう少し若いお酒に持たせたりもしたいですね。

あとは、製造部できき酒をしながら、ブレンドの妙といいますか、ブレンド力をさらに磨いて、古酒香が綺麗に伝わるようにお酒を造っていきたいと思います。

甕仕込み、甕貯蔵というところが弊社の強みだと思うので、その辺をうまく他社よりもコントロールできるように努めたいです。

小濱:甕といえば石川さんだよね、と言われるような。

上間:そういう所までいければいいですね。

小濱:それでは、最後に石川さんにとって理想の泡盛とはどのようなものですか?

石川:私は今はかなり味をみている方なので、古酒、おいしい古酒を作りたいです。

今は、ブレンドした時の味の仕上がりの良さを覚えてしまったので、特にブレンド力を上げてそれを実現したいですね。ブレンドに成功した時の香りも味もすごいので、年数が高いから美味しいというのではなく、年数に負けない古酒を積極的に造っていきたい。それが理想ですね。

小濱:内容のともなった古酒ですね。

石川:そして、どうしても古酒をブレンドするには古酒の元を造っておかなければいけません。その古酒の元酒造りもなかなか難しいんですよね。良さそうなものがあるたびにちょこちょこと取っているんですが、思った通りにならないことが多い。甕の場合は特に味、香りの成長予測ができないので。

小濱:管理して、きき酒したり、ブレンドしたりして、苦労されてるからこそ価値があるんですよね。味のトータルプロデュースもされているんですね。

2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo19石川:そうですね、私がやっていきたいと思ってるので、その辺りは誰にも触らせません(笑)

一同:(笑い)

小濱:まぁそこは、ブレンダーズモデルでいいのではないでしょうか。

 

石川:話は少しそれますが、味をたくさん造っていかないといけないと示唆を与えていただいたのは、前任の倉光鑑定官でした。倉光鑑定官は2回沖縄に赴任されてますよね。私が新人の時にお世話になって、その時、造りや分析の方法などを教えていただいたんですね。泡盛はまだいろいろな事ができるということを教えていただきました。そして、2回目に赴任された時には、泡盛の味に関してかなり厳しくダメ出しをいただきまして、泡盛の味を良くしないとダメと相当怒られましてね。それ以降、さらに気を引き締めて味の研究を頑張っています。倉光鑑定官には本当に良い影響をいただきました。

小濱:まさにブレンドと貯蔵ですね。焼酎にはない。焼酎もブレンドしないわけではないですが、泡盛はそこを積極的にPRできるお酒だと思いますので、ぜひ石川ブレンドモデルを造っていただき、ラベルに石川と書いてですね。

上間:分かりにくいですね。社名と名前がかぶってるので(笑)。

小濱:ちょっと工夫が必要ですね。ブレンダー石川モデルとか、石川由美子モデルとか…。
2016_look-for-outstanding-talent_vol5_ishikawa-shuzo20
石川:いえいえ、そのようなものはいらないです。

小濱:そこは裏でこっそりやりたいと。

上間:自由にやりたい。

石川:ウフフ。

小濱:ぜひ、これからも自由で良い泡盛を造りつづけてください。今日は、お時間をいただき貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

知花、上間、石川:こちらこそ、ありがとうございます。

 

逸材探訪~鑑定官が若き匠に聞く~

Vol.0 「沖縄国税事務所鑑定官編(髙江洲朝清鑑定官)
Vol.1 「瑞泉酒造編(池原呂桜良さん・伊藝壱明さん・伊佐信二さん)
Vol.2 「久米仙酒造編(中村真紀さん、奥間英樹さん)
vol.3 「忠孝酒造編(井上創平さん・山本博子さん)
vol.4 「瑞穂酒造編(仲里彬さん・渡嘉敷建孝さん)
vol.5 「石川酒造編(石川由美子さん・上間長亮さん・知花賢吾さん)」
Vol.6 「波照間酒造所編(波照間卓也さん・波照間拡さん)」」
Vol.7 「崎山酒造廠編(平良良弥さん・比嘉寛昭さん・津波志織さん)

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