逸材探訪 ~鑑定官が若き匠に聞く(瑞穂酒造編)~

   

先の大戦で壊滅的な打撃を受け、一度は灰じんに帰したかと思われた琉球泡盛。その後、筆舌に尽くしがたい蔵人たちの不断の努力で現在の奇跡の復興を遂げました。

今回はその奇跡の復興の一翼を担い、現在も首里最古の蔵元として業界をリードする瑞穂酒造の若き匠、仲里彬(なかざとあきら)さんと渡嘉敷建孝(とかしきたつのり)さんにお話伺いました。

聞き手は、琉球泡盛奇跡の復興のもう一翼、そして現在も酒類業界を技術的、行政的側面より支援する沖縄国税事務所の小濱主任鑑定官にお願いしました。

逸材探訪~鑑定官が若き匠に聞く(瑞穂酒造編)
聞き手:沖縄国税事務所 小濱主任鑑定官

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右から、仲里彬さん、渡嘉敷建孝さん。

小濱:主任鑑定官の小濱です。本日はよろしくお願いします。早速ですが、渡嘉敷さんの経歴と瑞穂酒造に入社した経緯などをお聞かせください。

渡嘉敷:はい。私は家業が泡盛製造に欠かせない黒麹菌を沖縄県内で唯一生産している石川種麹店ということもあり、菌操作の勉強がしたくて、中部農林高校に進学しました。そこでまずちょとした間違いがありまして。

小濱:
いきなり間違いですか?

渡嘉敷:普通はそういう場合、食品化学科のような学科に行くべきなんですが、熱帯資源科に受験の申込みをしてしまいまして。その間違いに気が付いたのが、受験日の一週間前でした。

小濱:もう間に合わない。

渡嘉敷:でも、いろいろ学べていいかなと思って通っていたんですが、やっぱりお酒や菌関係の勉強をきちんとしたいと思って、東京農業大学の短期大学部の醸造学科に進学しました。そこでは、泡盛の香気成分の改善についてや、泡盛の種麹に使う黒麹菌を土壌から分離して有用性を確認する勉強をしました。

小濱:それは将来石川種麹店に戻るときに役に立つだろうということで、その研究をしたということですか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou02渡嘉敷:はい。まずは2年間短大で勉強させていただいて、その後さらに2年間研究生として酒類学研究室でこちらのあきら先輩(仲里氏)と一緒に研究させていただきました。その後、大学を卒業して沖縄に戻り、バイオやIT関連の研究開発などを行っていたトロピカルテクノセンターという第三セクターに就職し、有用植物の調査や、菌類の管理などを行いました。

小濱:卒業後も引き続き微生物関連の仕事をされたということですね。そこから瑞穂酒造に入社するのはどのようなご縁があったのですか?

渡嘉敷:3年間ほどトロピカルテクノセンターでお世話になった後、実家の種麹店の手伝いを始めたのですが、やはり、さらに違う経験を積むべきではないかと思っていた時、たまたま黒麹菌の配達で訪れていた瑞穂酒造で社長にお声をかけていただきまして。

小濱:「良かったらうちで働いてみないか?」という感じで?

渡嘉敷:はい。たまたま求人があったらしく、私もちょうどこれは良い機会だと思いまして。

小濱:タイミングよくスカウトされたという感じですね。

渡嘉敷:それで瑞穂酒造に入社させていただきました。

小濱:仲里さんとは、入社時期は何年違いますか?

渡嘉敷:あきら先輩が私より一年早く入社しています。

小濱:なるほど。それでは、次は、仲里さんの経歴や入社の経緯など教えてください。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou03仲里:私は沖縄県の南城市出身で、先ほど渡嘉敷の話にもありましたが、彼と同じ東京農業大学で醸造学を学びました。醸造学科の学生は、渡嘉敷もそうですが、酒造関連業者の子供が多いのですが、私は両親公務員で少し異色だったかもしれません。

小濱:それでも醸造学を学ぼうと思ったのは何かきっかけがあったのですか?

仲里:いろいろありますが、その一つは作家の村上春樹さんの本で、「もし僕らの言葉がウイスキーであったなら」というスコットランドの紀行を読む機会があって、その中でアイラ島という沖縄より小さな島で造られているウイスキーが世界に羽ばたいている話がでてきて、「なんじゃそりゃ?」という衝撃をうけたことですね。

あとは父親がお酒マニアで、公務員なのに酒類関連の資格を持っていたり、実家には泡盛、日本酒、ウイスキーなどいろいろなお酒が並んでいるんですよ。そういう意味で、環境的にもお酒に親しみがあったということがあると思います。

小濱:なるほど。

仲里:大学では、彼も含めて業界関係者が周りにたくさんいたんですが、すごく楽しかったですね。昼は研究室でお酒の勉強をして、夜はバーでアルバイトをして、休みの日は飲みに出る。学生時代も一日中お酒にふれあう生活を送っていました。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou04小濱:お酒が身近にある環境で育って、アイラモルトにインスパイアされて、醸造学を勉強したあと、自分も酒を造りたくなったという感じですね。

仲里:そうですね。在学中は、1年ごとに今年は焼酎、今年は日本酒とテーマを決めて集中して勉強して、利き酒の資格などもいくつか取りました。当時は東京にいたこともあり、泡盛以外のお酒中心でしたが、地元に帰ってきた時は泡盛を集中して勉強したり。いつかは、彼(渡嘉敷さん)と一緒に共同研究などできたらいいな、などと考えていましたが、こういう形で一緒に働くとは思っていませんでした。今、すごく助かっています。

小濱:渡嘉敷さんは瑞穂酒造で何年かお勤めになったら、将来は石川種麹店に戻って事業を継がれるのですか?以前、私は石川種麹店を訪問させていただく機会がありまして、お父さんは「夜も心配だから菌を見に来るんだ」などとおっしゃりながら熱心に種麹を造られていました。将来は、同じように夜も寝ずに種麹を造るんですよね。

渡嘉敷:私は… … ところどころ休みながら…(笑)。でも、菌が相手ですので夜通しというのもありますね。

小濱:お父さんは渡嘉敷さんが帰ってくるのを楽しみにしていらっしゃる感じでしたよ。「もう少ししたら息子が帰ってくるんだ」とおっしゃってました。

渡嘉敷:そうですか?自分には「まだ帰ってくるな」と言っていますが?

小濱:直接は言いにくいんでしょう。だから「帰ってくるな」となるのでは?

仲里:ただ、寝ずにやるくらいの姿勢で頑張ってもらわなければ、今、種麹業界も競争が激しいですからね。

小濱:本土にも種麹の業者さんはいらっしゃいますからね。

渡嘉敷:実はある本土の種麹屋さんの講演会が沖縄でありまして。私はメーカーの人間として参加したのですが、そこで、石川種麹さんではなく自分たちの種麹を使ってはどうか?と名指しで提案された時には、少し心に火が付きましたね。

小濱:負けるか!みたいな感じで。

仲里:うちの製造スタッフからは、彼がミスを犯すと「種麹変えようかな?」と軽くプレッシャーをかけられていますね。

小濱:いじられキャラなんですかね?

仲里:今年のエイプリルフールには、上司と口裏を合わせて、試験的に種麹を変えるという話をしたり。

渡嘉敷:何人かにそれを言われて「はぁ… … …」みたいな。まさかそんな嘘がくるとは…。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou05_1一同:(笑い)

仲里:でもそれくらい業界の競争が厳しい一面はありますね。

小濱:石川種麹店のいいところをPRしてみんなに使ってもらわなければなりませんね。まあ、戻った後の話ですけど。現在、渡嘉敷さんはどのようなお仕事をされているんですか?

渡嘉敷:今は製造にいまして、蒸米や製麹(せいきく)を主に担当しています。

小濱:原料であるお米の処理から麹を造るところがご担当ですね。やはり家業をついだ時のことを考えての配置ですかね。

渡嘉敷:時々、蒸留や品管(品質管理)まで、見させていただくこともあります。

小濱:一通り経験した方が、将来の糧になるだろうということでしょうね。温かい育て方をされている訳ですね。

渡嘉敷:瑞穂の職員みなさんは本当にやさしくて。でもたまにダマされるんですけど…。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou06-1一同:(笑い)

小濱:会社のマスコット的な存在ですね。

仲里:ムードメーカーでもありますね。彼のそういう面は昔からで、大学時代など生協のスタッフから食堂のおばさんまでみんなに名前を覚えられて声をかけられていましたからね。

小濱:熟女にモテる?

渡嘉敷:熟女キラー的な!

仲里:美佐子社長に聞いてみようね。だから入社できたんですか?って。

一同:(笑い)

渡嘉敷:一度びっくりしたのが、大学の先生から弁当を買ってくるように頼まれて食堂に行って注文したんですが、「なんで今日は大盛りじゃないの!?」ってみんなに驚かれて。いや、これ先生のです、みたいな。

小濱:渡嘉敷さんイコール大盛りだとみんな覚えているわけですね。愛されキャラですねいわゆる。それでは、次に、仲里さんはどのようなお仕事をされているんですか?

仲里:品質管理が主ですね。一般分析も行いますし、そこから得られたデータを解析したり、加えて小ロットで製麹から蒸留までの条件を見直していくラボスケールの試験を行っています。その他ですと、酵母に関して自然からの分離も行いますし、酵母を変える試験も行いますし、今は特に種麹に関する試験にも力を入れています。

小濱:ちょうど彼(渡嘉敷さん)もいるということで。

仲里:彼の技術にもなることもあり、種麹を変えながら、それが最終的にお酒の味わいにどう影響するのか?それと酵母のバランスがどうなのか?基礎研究から企画、商品開発までたずさわらせていただいています。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou07小濱:酵母を変えるというのは、この辺りの商品のことですね。

仲里:この辺りは今の製造部長が担当された商品で、ただ、酵母は我々が学生時代研究室で扱っていた酵母でして、当時それが瑞穂酒造で製品になると聞いたときにはすごく感動しました。

小濱:それで瑞穂酒造に就職しようと?

仲里:それも理由の一つではありますが、一番の決め手は、瑞穂酒造が製造技術のパターンをすごく多く持っている会社だというところです。

原料もタイ米ばかりではなく、台湾産のジャポニカ、沖縄県産米と様々なバリエーションで製造していますし、酵母に関しては代表的な101酵母だけではなく、吟香酵母、黒糖酵母、デイゴ酵母など様々な酵母を使っています。蒸留器に関しましても、貯蔵に関してもほんとに様々な選択肢があって、泡盛メーカーに就職するなら絶対に瑞穂だと初めから決めていました。

小濱:台湾工場もありますしね。

仲里:そうですね。台湾工場はビール以外なんでも製造できる免許があるので、美味しい泡盛作りが当然メインではありますが、将来性が非常に高い、夢のある工場です。

小濱:なるほど。話は変わりますが、渡嘉敷さんは瑞穂に入社して、ここはうまくいったとか、逆にここはもっと頑張らないといけないなと思うような経験はありますか。

渡嘉敷:自分が蒸米して製麹して、酸度やアルコール収得量が目標通りでしたらやはり嬉しいですし、最近はほとんどありませんが、気候の変動やヒューマンエラーも含めてブレがでた時はとても悔しいですね。

小濱:責任重大ですよね。麹の出来が悪かったら、もやし(種麹)が悪いんじゃないかと言われますからね。

渡嘉敷:いや!それはちがうと思います!!!

小濱:将来事業を次いだら電話がかかってくるでしょうね。石川種麹は大丈夫か?って。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou08-1渡嘉敷:瑞穂酒造からは絶対に来ると思います……。

仲里:当然、電話しますね。

小濱:せっかく瑞穂で製麹をご担当されているんで、将来はその経験を生かして、業界全体に対してどのように使えば麹がうまくできるか技術指導もしていただければと思います。

渡嘉敷:種麹の業界も大変競争が激しいので、自分も営業力といいますか、そういった指導までできる技術者になりたいと思います。

仲里:ただ、実はこの数ヶ月、彼も含めてなんですが、いくつかの種麹に関して試験を行っていますが、製麹段階では石川さんの種麹は優秀ですよ。あとは、最終的な酒質について、ブラインドで評価するのが楽しみですね。

小濱:そこで負けたら悔しいですね。

渡嘉敷:自分で他社さんの種麹を選んだらショックですね…。

一同:(笑い)

小濱:その時は、彼(渡嘉敷さん)のやる気のためにも結果は伏せといた方がいいかもしれませんね。

仲里:いや、それはダメです。それでは彼が伸びませんよ!

一同:(笑い)

小濱:仲里さんは、瑞穂に入社して、こういうところは上手くいったとか、逆に上手くいかなかったというエビソードなどはありますか?

仲里:そうですね。弊社の場合、私が入社する前からもろみの分析などデータもきちんと取ってて、最終的な酒質やアルコール収得に関する管理法もある程度確立されているところがあって、製造に関しては安定している方だとは思うんです。でも、その安定した中でも、季節による温度差などで、非常に細かいところに微妙なブレはあります。酒質では差が出ない範囲なので通常は無視するものですが、私はそういうところまでもっと細かく管理できないかと試行錯誤しているところです。

小濱:一般的には、夏は成績が悪くなる傾向がありますね。そのあたりの変動はありますか?

仲里:アルコールの収得量では問題ないかと思います。あとは、酒質に関してですが、泡盛の場合どこで良し悪しを判断すべきなのかは今でも悩みますね。製造後、1年目なのか、3年後なのか、10年後なのか。

小濱:多くの皆さんが普段飲む一般酒ですと、そう長く貯蔵されるわけではないので、製造された時点で一番美味しいところに持っていかなければならないでしょうね。一方古酒は3年経ったらどうだ、5年経ったらどうだということを考えなければなりませんよね。その辺り、過去の資料、文献などはあたっていますか?

仲里:はい、様々な先生方にお会いしたり、文献を探したり、そこに様々なヒントがあるので小スケールを活かして試験しています。その点、弊社の部長などは「すぐやってみよう!」と後押ししてくれる方なので助かっています。

小濱:お仕事関連のお話はまた後でお伺いするとして、少しパーソナルといいますか、休日どのように過ごされているか、また、趣味のお話などお聞かせいただけませんでしょうか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou09-1渡嘉敷:そうですね、車とかアウトドアなど趣味はいろいろあるんですが、あえて変わったものでいえば工具集めやその手入れですね。切れ味が悪い刃物など見ると、ピカピカにしてティッシュも切れるくらいになるまで磨きたくなるんですよ。気がつけば1時間ぐらい磨いてたりして。もう、汗だくで。

小濱:そういう工具とか刃物が好きなんですね。工具自体を揃えて楽しむ方もいらっしゃるみたいですからね。すぐに使う予定がないのに。

渡嘉敷:その気持ちすごく分かります。

小濱:ツール自体に興味があって興奮してしまうみたいな。

渡嘉敷:父親の影響ですかね、電気工事士をやっていた時期もありましたから。そういうのを見て育った影響かもしれません。刃物を研ぐのはおばあちゃんの影響かもしれませんね。小学生のころだったと思うんですが、おばあちゃんが包丁などを研いでて、それを手伝ってすごく楽しかった記憶があります。

仲里:彼と設備点検などで工場をまわっていると、ポケットから不思議な道具がでてきたりします。

小濱:仕事にも役にたっているということですね。

渡嘉敷:ただ楽しくてやっているだけなんですが、集中する練習にはなっているかもしれません。

小濱:仲里さんはお休みの日はどのようにお過ごしですか?

仲里:私はある意味ありきたりかもしれませんが、本当にお酒が趣味で、休みの日は泡盛に限るというわけではないのですが、バーを巡ったりイベントに参加したり、また読むのも好きなんで、お酒関連の本や文献や資料を読んだりしています。起きている時間の8割くらいはお酒に関連する何かに触れているかもしれません。そういう意味で、今の仕事は天職かなと。ただ、蔵にいる時間は、趣味というより少し仕事モードになっていますが。

渡嘉敷:あきらは、いや、あきら先輩は、本当に酒についてはすごく良く知っているんですよ。自分も泡盛以外のお酒を買うときは、あきら先輩にまず相談します。

仲里:お酒っておもしろくて、例えばウイスキーなど昔3千円前後で手に入ったものが、数年後に数倍の値段で取引されていたり。そういうのを予想したりするのはおもしろいですね。知り合いのバーテンダーさんに、これは絶対に買った方がいいですよとアドバイスした酒が、数年後やはり数倍の値段で取引されていたりすると嬉しいですね。

小濱:ボトラーズウイスキーのようなものですね。

仲里:ボトラーズのウイスキー好きですね。オフィシャルは高くてなかなか手がでませんが。彼からもコレは買っていいか?みたいな相談を時々受けますよ。あ、この話大丈夫ですかね。ウイスキーを買う…。

渡嘉敷:友達の話ということで。

小濱:自分ではないということで。

渡嘉敷:でも、お酒と言えば自分の中ではあきらですね。あっ、あきら先輩ですね。お酒に関しては絶対に妥協しない人です。本当に尊敬しています。

小濱:先ほどから、“あきら”になったり“あきら先輩”になったり、少し関係性が微妙になってますが。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou10仲里:瑞穂酒造に入社したのは私が一年早いのですが、彼とは年齢も同じで、大学も同期なんですよ。こうして一緒にインタビューを受けてるのが、今正直すごく不思議な感じで。東京農大は世田谷にあるんですが、近くに酒類が豊富な酒屋さんがあって、学生時代は彼ともう一人、新潟の酒蔵の跡取り息子と三人でそこに行っては日本酒や焼酎や泡盛を1種類ずつ飲みながら、ああだ、こうだ言いながらテイスティングしていました。「いつか三人で仕事したいな!」って話をしながら。そんな彼と今一緒に仕事をして、なんか不思議な縁ですね。

渡嘉敷:自分はすごく安心です。偶然と言えば偶然ですが、こうして大学の同期といっしょに仕事ができるのは。すごくありがたい機会をいただいていると思います。

小濱:それでは、渡嘉敷さんにとって、自然なのは“あきら”?“あきら先輩”?

渡嘉敷:本当に大学時代からお世話になってて、卒業できたのもあきら先輩のおかげで、特に化学系の勉強は本当にいろいろと手伝ってもらって、今でもお世話になってて、気持ちの上ではあきら先輩なんですが、やっぱり“あきら”でお願いします。

一同:(笑い)

小濱:次は少し話しにくいテーマかもしれませんが、泡盛業界に望むところ、ここが問題ではないか、こうなって欲しい、といったことはありますか?

仲里:おそらく1社ではできないことを業界にお願いすることになるかと思うんですが、例えば私たちは今20代ですが、この世代はなかなかお酒で泡盛を選択しない人が多いと思うんですね。例えばプレゼントに泡盛は選ばれませんし、デートではシャンパンやワインだったら喜ばれるとか、これは何が問題かといえば、泡盛のイメージやブランド力だと思うんですよ。こういった全体のイメージ、ブランド力をつけるのは、なかなか1社ではできない。

特に若い同世代だと、泡盛と言えば酔うために飲むというイメージが強い感じがします。泡盛には若い人たちが知らないバラエティがあるので、その辺りの若者向けのブランド造りなどは業界全体で取り組んでもらいたいです。

小濱:たしかにブランディングは大切ですよね。

仲里:あとは、業界全体というより、個々のメーカーに関することかもしれませんが、メーカーごとの酒質の違いをハッキリさせて、お客様が水割りで飲んだ時に、個々の泡盛の違いが分かる、酒ごとのアイデンティティの確立みたいなものが今ひとつできてないような気がします。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou11例えば、時々私は観光客のふりをして居酒屋さんなどで「どの泡盛が美味しいんですか?」といった質問を店員さんにするんですが、そうすると、ほとんどのお店で「まー、だいたい一緒ですよ」と言われるんですよ。お土産品店でも同じです。

この点については、製造側の責任として、個々の泡盛の違いを一般の消費者の方が明確に分かるレベルで造りきれていない可能性と、営業側の責任として、個々の泡盛の違いをきちんと伝え切れていないということがあると思います。パンフレットやメニュー作成、ラベルデザインも含めて。

そういう努力がこの業界は少したりないのかもしれません。

小濱:例えば瑞穂さんなら、他の泡盛とどういうところが違いますか?

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou15仲里:例えばここにある泡盛は酵母が全部違うので、酒質はかなり違うんですけど、消費者の皆様にその違いを十分伝え切れていないかもしれません。造り手からすれば、かなり違うと思っていても、それを消費者の皆様に伝えるのはすごく難しいです。造り手もよりわかりやすい味の違いにするべきですし、営業もそれをきちんと伝えなければなりませんね。その辺が足りないと思います。

小濱:例えば仲里さんはかなりの酒マニアでもありますから、酒マニアの気持ちが分かりますよね。ですからそういう人向けには仲里さんが営業にもでていただいて、マニアに伝わるフレーズで瑞穂の酒についてお話いただき、それが伝わることが分かれば、営業の方も、伝え方のバリエーションがふえるのではないでしょうか。ぜひ、泡盛界の伝道師、貴公子としてもっと表に出て行っていただければありがたいと思います。業界へ頼むことも必要ですが、どの業界も重鎮はおよそ高齢で柔軟なアイデアが出にくいところもありますから。その点で、どんどん若い皆さんが前に出て行っていただきたい。

仲里:実は、とてもタイムリーな話なんですが、昨夜大学の恩師から電話があって、話の流れで「酒の業界は青年部といっても50代以上ばかりでダメなんだよ。泡盛もそうじゃないか?」みたいなお話をされていました。

匿名希望:もっとです。みたいな…。

一同:(笑い)

小濱:いろいろと企画はするんでしょうが全体的なスピードみたいなものはやはり若い人には勝てないですよね。若い人のイベントは若い人がやったほうがいい面があると思います。そもそも上から押しつけられるのは若い人は嫌いでしょうし。

仲里:その点、清酒業界さんは泡盛業界よりイベントが面白いと思います。雲泥の差だと思います。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou12-1小濱:確かに色々ありますね。都心で若者のための日本酒のイベントがあるというので顔を出してみたら、本当に若い人しかいなくて、これは居場所がない…、と30分で帰ったこともありますね。

仲里:すごく活気がありますよね。

小濱:カレーライスが出ているのを見たこともありますよ。日本酒にカレー??ってびっくりしましたね。

仲里:でもそれが、その目線なのかもしれませんよね。

小濱:渡嘉敷さんは、非常に立場上お話しにくいとは思うんですけど、何か泡盛の業界がこうしたらもっと良くなるのではないか?というご意見はありますか?

渡嘉敷:全体的にこの業界は若手が育ちにくいようなイメージがあります。

小濱:離職率が高いということですね。

渡嘉敷:自分の仕事に誇りがもちにくいのですかね?

小濱:他の酒類製造業者さんも同じだと思うですが、入社してすぐに光輝くという訳にはなかなかいきませんからね。やがて自分で造った酒が鑑評会で金賞を取ったり、良い酒だと世間に評価されると、あそこには名杜氏がいるという名声が得られて、飲み屋に行ったら「これはオレが造った酒だぞ、どうだうまいだろう!」と言えるようになる、みたいな話を先輩が積極的に若い人技術者に伝えるべきだと私は思います。

渡嘉敷:あとはメイドイン沖縄にこだわってほしいですね … … … 特に種麹とか(笑)。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou13-1小濱:実家の応援になるし。

一同:(笑い)

仲里:観点は全く違うんですが、以前、沖縄の泡盛も含む黒麹菌関連の食文化を世界無形文化遺産に登録しようという運動が立ち上がったときに、その大元の黒麹菌が本土産ばかりで大丈夫か?という疑問の声は聞いたことがあります。

渡嘉敷:そうです!できれは種麹は沖縄産で(笑)。

小濱:まあ、沖縄のものでというのもいいとは思うんですが、まずは品質が良いからこれを使おうというのが基本なので、そこでやはり石川種麹店がいいですねと選ばれつづけるよう、ぜひ頑張ってください(笑)。

最後に、自分にとって理想の泡盛とはどんな泡盛か?これからどんな泡盛を造っていきたいか?という話をお聞かせください。

仲里:そうですね。例えば普段何気なく晩酌する時、特別な日、和食を食べるとき、中華を食べるとき、洋食を食べるとき、またパーティのウェルカムドリンクなど、様々な場面場面に合う泡盛を造るのが理想ですね。そういうトータルな、総合的な酒類メーカーを目指していければと思います。

小濱:シチュエーションごとに商品を提供できるということですね。

仲里:弊社は、製造技術を豊富にもっていますので、それが可能かと思います。台湾工場もありますし。

小濱:泡盛の総合酒類メーカーになりたいと。

仲里:会社としてではなく、あくまでも私の個人的な意見としての理想ですが。全てシチュエーションで飲める泡盛があれば、もっと色々な機会で泡盛を飲んでいただけると思いますし。それが泡盛を造っている我々の使命かと。

小濱:なるほど。次に渡嘉敷さんは、今後は実家で種麹を造られるかもしれませんが、現時点で、または、将来自分が実家に戻った時に、業界の人たちがこんな泡盛を造ってくれていたら嬉しいという泡盛はありますか?

渡嘉敷:あきら先輩、いや、あきらの理想を聞いてハードルが上がりました(笑)。石川の種麹を使って下さいと言いにくい空気に。

一同:(笑い)

小濱:いっぱい(種麹を)振って下さいと(笑)。

渡嘉敷:それはさておき、先ほど、あきらせん・・・、あきらも言っていた通り、居酒屋の店員さんや、お土産品店の店員さんに「泡盛は全部おなじだよね」と言われないような、しっかりと差別化できる泡盛を造ったり、将来はそれに見合う理想の種麹を造りたいと思います。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou14-1仲里:身分を明かさずに居酒屋さんに行くと、本当にすごくつらい思いをします。「泡盛はどれがおすすめですか?」とお店の人に聞いても「どれも同じです」とか「分からない」という返事ばかりですからね。「泡盛はよく分からないから、これはどうでしょう!」と焼酎をすすめられた時には「おっ、おっ…!」って腰が抜けそうになりました。

渡嘉敷:店長クラスに聞いても、同じだという方が多いですからね。

仲里:ただ、何となく現状としては理解できるところもあって、少し失礼な言い方かもしれませんが、沖縄の居酒屋さんを含む料理店さんは、お酒に関しては味の前に、とにかく売れスジを置いておく傾向があると思うんですね。

その点、本土の料理店さんは、この料理と合わせるから、この酒を仕入れているというこだわりが強いように感じます。本土といっても私が長く過ごしたことがあるのは東京ですが。沖縄が観光地だから特殊なのかもしれません。でも、もっと料理と酒の相性にこだわりをもっていただければ。

小濱:うちの料理には、瑞穂のこれが合うから、これを仕入れているんだと言われると嬉しいですよね。

仲里:それが弊社の泡盛でなくてもいいんです。そういうこだわっていただいている飲食店さんがあれば、逆に、そちらの料理には弊社のこの泡盛はいかがですか?と営業にも行けると思いますし。

小濱:料理についてはいろいろとすすめられますが、それに合わせての泡盛をすすめられることは確かにあまりありませんね。それ以前にドリンクメニューの“オススメ”マークをあまり見かけません、沖縄の飲食店さんの場合。

本土だと★マークがついていたり、味の特徴が書かれていたりしますよね。沖縄の飲食店さんの場合、泡盛の銘柄がメニューにずらっと並んでいるだけの場合が多いので、あれではお客さんも選びにくいですよね。

仲里:時々“オススメ”がついていることもありますが、それはキャンペーン中など、“お得”という意味のオススメの場合がほとんどだと思います。

小濱:確かにその手のキャンペーンはよく見ますね。ぜひ、今後お二人で居酒屋さんや消費者の皆様に、どうしても瑞穂じゃないとダメだという泡盛を造っていただきたいと思います。渡嘉敷さんも、今は瑞穂酒造とタッグチームとして、そして将来は業界全体とのタッグチームとして頑張ってください。

2016_look-for-outstanding-talent_vol4_mizuho-syuzou14渡嘉敷:はい。あきらと一緒に頑張ります。

小濱:本日はお忙しい中、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

仲里・渡嘉敷:こちらこそありがとうございました。

 

 

逸材探訪~鑑定官が若き匠に聞く~

Vol.0 「沖縄国税事務所鑑定官編(髙江洲朝清鑑定官)
Vol.1 「瑞泉酒造編(池原呂桜良さん・伊藝壱明さん・伊佐信二さん)
Vol.2 「久米仙酒造編(中村真紀さん、奥間英樹さん)
vol.3 「忠孝酒造編(井上創平さん・山本博子さん)
vol.4 「瑞穂酒造編(仲里彬さん・渡嘉敷建孝さん)
vol.5 「石川酒造編(石川由美子さん・上間長亮さん・知花賢吾さん)
Vol.6 「波照間酒造所編(波照間卓也さん・波照間拡さん)」」
Vol.7 「崎山酒造廠編(平良良弥さん・比嘉寛昭さん・津波志織さん)

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