イベント「CRAFT GIN Early Majority Meeting」から見えた、沖縄生まれの3クラフトジンの可能性(文・写/久高葵)
令和元年11月16日(土)、那覇バスターミナル1階のカフェバー「OKINAWA PORTAL」(那覇市旭町)にて、沖縄県内でクラフトジンを製造する3つの酒造所が一堂に会するイベント「CRAFT GIN Early Majority Meeting」が開催された。
同イベントは、令和元年6月21日(金)に「OKINAWAN CRAFT GIN Early Adopters Meeting」との名称で、石川酒造場(大城俊男社長)と瑞穂酒造(玉那覇美佐子社長)の2酒造所を迎えて開催されたイベントの続編となる。
イベントには、「まさひろ OKINAWA GIN」のまさひろ酒造(仲嶺豊社長)から製造部主任・安里昌利氏と営業部・嘉手苅晃氏、「ORI-GiN1848」の瑞穂酒造から製造部・仲里彬氏と営業部・比嘉政義氏、「ネイビーストレングス クラフトジン」の石川酒造場から製造部・平良寛進氏と知花賢吾氏が参加。3つのジンの飲み比べを通して、自社のクラフトジンの良さを最大限に引き出す飲み方を提案した。
2017年頃から、バー界隈で、ウイスキーやクラフトビールの次に流行るお酒として注目されていた「クラフトジン」。ジンは、ジュニパーベリーを使用すればベースとなるお酒や他のボタニカル(ハーブや果皮、スパイス)をどう選ぶかは問わないという、自由度の高いお酒である。そのため、少量生産のクラフトジンは各酒造所の個性が出しやすい。沖縄県内では、2017年10月に先陣を切って「まさひろ OKINAWA GIN」を発表したまさひろ酒造をはじめ、計3つの酒造所からそれぞれ個性的なクラフトジンが発表されている。
どんなに素晴らしい商品が出来上がっても、それらを多くの人たちに伝え、届けなければ広まっていかない。そこで、「ネイビーストレングス クラフトジン」を生み出した石川酒造場の平良氏が学生時代の仲間たちと計画し、他の2社にも声をかけ実現したのが今回のイベントだ。
第1回目のイベント名「アーリーアダブター」とは、マーケティング用語で「流行に敏感で、自ら情報収集を行い判断する層」のことを指す。第2回の「アーリーマジョリティ」は「慎重ではあるものの、新しい商品やサービスなどに対しての関心が高い層」のこと。イベント名にも、「沖縄県内で作られるクラフトジンの良さを、より多くの人たちに届けたい」という思いが込められている。
ここで改めて、3つのクラフトジンの特徴と、この日勧められた飲み方を紹介したい。
まさひろ酒造の「まさひろ OKINAWA GIN」は、泡盛をベースに、ジンの代表的な香りであるジェニパーベリーに合うよう、シークヮーサー、ゴーヤー、グァバの葉、ローゼル、ピパーズという沖縄らしい5つのボタニカルを使用している。2種類の単式蒸留器を使いこなし、ボタニカルそれぞれの香りや味わいの向こう側から、泡盛の余韻も感じられる、まさに「オキナワジン」の名にふさわしい1本だ。
この日のオススメは、ライムを絞ったジントニック。シークヮーサー由来の風味とトニックウォーターの甘さが程よくすっきりした飲み口を作り出しており、何杯も飲みたくなる味わいが魅力的だった。
2018年10月発売の瑞穂酒造「ORI-GiN1848」は、”トロピカル&リッチ”をコンセプトに、高級パインとして名高い西表島のピーチパイン(別名ミルクパイン)、シークワーサーの葉、月桃の葉、ヒハツモドキなど沖縄由来のボタニカルに加え、レモングラス、コリアンダーシード、イエルバブエナ(別名モヒートミント)など深い味わいを出すハーブがふんだんに使われている。また、ベースとなる泡盛も、さくら酵母仕込みの原酒を使用。沖縄県内だけでなく、全国的……いや世界的に高い評価を受けているジンだ。
この日のオススメは、瑞穂酒造製ビターズ(カクテルに苦味や色をつける、薬草・香草・樹皮・香辛料・精油などを漬け込んだ苦味の強いアルコール飲料のこと)を効かせつつ、ピーチパインを添えたジントニック。ジンだけでなく、カクテルの為のスパイス・ビターズまで自家製という、完璧に仕上がった1杯を楽しむことができた。
石川酒造場の「ネイビーストレングス クラフトジン」は、ジェニパーベリーのほか、カーブチーの皮、タンカンの皮、カラキ(沖縄在来のシナモン)、ピパーチなどの沖縄ボタニカルに、コリアンダーシード、フェンネルシード、ジンジャー、山椒など香りづけハーブを加えた合計9つから成っている。こちらのジンの特徴は、何と言っても、そのスパイシーな印象ではないだろうか。さらに驚くのがその度数。他の2本より頭ひとつ抜け出し50度あるので、カクテルを作る際にも少し注意したい。
この日のオススメは、ミントを浮かべたジントニック。トニックウォーターを加えると、白い濁りが出るのも特徴の一つだろう。
もうひとつ面白かったのが、会場である「OKINAWA PORTAL」のオリジナルカクテル「アイランドルビー」だ。
タピオカ入りジンカクテルなのだが、ベースのジンを自分で選ぶことができる。どのジンを選ぶかによって味わいが変わるうえ、ジントニックでいただいた時と印象が変わる銘柄もあり、非常に興味深かった。
3銘柄の中には「ジントニックにした時に一番美味しくなるように作った」と公言しているものもあるので、まさにそれを体現する形になったのではないだろうか。イベント後の現在も「OKINAWA PORTAL」で注文することができるので、ぜひ一度飲み比べてみてほしい。
2019年も残すところ1ヶ月。ここ最近の泡盛業界を振り返ってみると、クラフトジンだけでなく、琉球スピリッツ「IMUGE.(イムゲー)」、泡盛カクテル「愛さ」、3回蒸留泡盛「尚」など、新商品の開発が続いている。
手頃な値段で美味しいお酒を飲みたいという要望が多い令和の時代において、泡盛の持つポテンシャルを最大限に生かしつつ、世界の名だたるお酒とも対等に張り合えるようにと考えられた商品が生まれているように感じている。
2019年12月8日(日)には、沖縄で初めて「オキナワ ウイスキー&スピリッツフェスティバル2019」というイベントが開催される。国内外の銘酒が出展する中、沖縄県産のクラフトジン3つも名を連ねる。世界的に高い評価を得ているウイスキーやスピリッツにも負けない3クラフトジンの素晴らしさを、ぜひ会場で堪能してみてほしい。
(文・写/久高 葵)