【イベント報告】オニノウデ嘉例吉ヌ酒アシビ(OPENBOOK破@新宿)(文・写/岡山進矢東京支部長)

  • [公開・発行日] 2023/09/29
    [ 最終更新日 ] 2023/11/10
   

令和5年9月26日(火)と27日(水)の二日間、計四部構成で沖縄料理と器、泡盛と酒器を楽しむ会「嘉例吉ヌ酒アシビ」が開催された。

主催は、料理や酒の本を手掛けるフリー編集者・神吉佳奈子さんと、「OPENBOOK」のオーナー田中開さん。

会場は東京都新宿区にある「OPENBOOK破」。昨今のレモンサワーブームの火付け役と言われる新宿ゴールデン街「OPENBOOK」が、この9月にグランドオープンさせたばかりの新店舗だ。

筆者が取材したのは初日の第二部。
席数はテーブルとカウンターを合わせた12席で、神吉さんのイベントのファンや、飲食、出版関係者などで埋まった。50席が告知をする前に口コミで売り切れてしまったという人気ぶりだ。

オープンしたてだが程よくエイジングの効いた落ち着きある店内には蝋燭が焚かれ、光溜まりと陰溜まりが緩く揺れる。
そんな雰囲気の中、厨房で手際よく料理を仕立てテーブルに運ぶのは、那覇で「琉球ノ酒器ト泡盛ト料理 オニノウデ」を営む佐久川長将さんだ。

左がオニノウデの佐久川さん、右が主催の神吉さん

左がオニノウデの佐久川さん、右が主催の神吉さん

神吉さんと佐久川さんの出会いは、「読本 本格焼酎」の取材で、神吉さんが新泡盛「尚」の造り手たちを訪ねた2019年。
対談の会場だったオニノウデの佇まいに衝撃を受け、取材終了後に改めて店に行くため沖縄に延泊した。
その後も「オニノウデに行きたくて沖縄でワーケーションをした」というほど通い詰め、交流を深めた。
親交のあった田中さんもオニノウデを訪ねて感激したと聞き、「店をまるごと東京に呼ばない?」と話を持ちかけたのが今回のきっかけだ。

この「嘉例吉ヌ酒アシビ」の主役は佐久川さんが作る料理と、抱えて飛行機で運んだ南蛮甕の古酒を始めとする泡盛たち。そしてそれらを彩る器の数々だ。佐久川さんの料理を盛りつけた器はすべて、やんばるに窯場をもつ陶芸家・紺野乃芙子さんによるもの。

那覇の古酒楽や泡盛倉庫などで活躍されていた泡盛王子こと仙波晃さんも泡盛の案内役として参加した。料理は佐久川さん、器は紺野さん、泡盛は仙波さんが語り尽くすという、豪華布陣でスタートした。

料理を仕上げる佐久川さんと、見守る紺野さん

料理を仕上げる佐久川さんと、見守る紺野さん

濃い目に作った「暖ボール(暖流ハイボール)」はマンガン成分の効いた器の中でかき混ぜ、アルコールの角を取りながら炭酸の刺激を程よく飛ばす。
伊是名産米が原料の「尚円の里」は伊是名酒造所から譲ってもらった仕込み水で水割りにし、同じ伊是名産米でソースを作った塩ラフテーと合わせる。
25度の古い「五頭馬」を注いだ無骨なちぶぐゎーに、40度の「尚ZUISEN」を数滴垂らしエネルギーを注入する。

料理、酒、器の三位一体で沖縄の魅力を表現するのがオニノウデ、そして佐久川さんの真骨頂。そのこだわりは主催の神吉さんや案内役の仙波さんの口から、誇らしそうに客席に伝えられる。

+写真03_オニノウデ

「古酒や料理と合わせた水割りをいただき、この美味しさがもっと広まればいいなと感じた。個人的には泡盛の歴史に興味がわきました」と話してくれたのは、第一部に参加されていたオカズデザインのお二人。
NHKの朝ドラ「ちむどんどん」の料理監修者として知られる、沖縄の食に造詣の深いユニットだ。
「ドラマの取材中、神吉さんから参考にと、佐久川さん作のチーイリチャーをお裾分けいただいたのがオニノウデとの出会い。沖縄料理は手を入れすぎず素材をシンプルに活かすもの。でも実はそれが一番難しいんです」と、佐久川さんの仕事を称えた。

東京の虎ノ門蒸留所でジンを製造している一場鉄平さんは、「オニノウデを初めて訪ねたとき、同じ蒸留酒でも酒器によって味わいが変わる泡盛の世界に驚きました。今回は仙波さんが語る、泡盛の背景にある文化や歴史の説明が印象に残りました」と話してくれた。

「伝統を踏まえつつ新しい領域のお料理だったので、合わせた泡盛からもこれまでと違う印象を受けました」と語ってくれたのは、数年前に沖縄料理本の制作でコンビを組んでいたというライターと編集者のペア。「泡盛のペアリングに新しい可能性を感じた」と驚いた様子だった。

+写真04_オニノウデ

主催の神吉さん、佐久川さんの挨拶で会が締まると、これまでのゆったりした時間のたがが外れたように参加者が饒舌になり、東京の街と同じ速度で空気が動き始めた。

神吉さんは語る。「沖縄に行くと、タクシーに乗る度に運転手さんに普段どこの泡盛を飲んでるのかと聞き取りしてるんですが、ほぼ9割の人が泡盛なんか飲まないと答える。こんなに美味しいのになんともったいない。私はこれからも東京の感度の高い人たちを那覇のオニノウデに送り込みたいし、佐久川さんに教わった泡盛の美しい文化を伝えていきたいです」
(文・写/岡山進矢東京支部長)

+写真05_オニノウデ +写真06_オニノウデ +写真07_オニノウデ +写真08_オニノウデ

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