8月25日木曜日、ゆいレール(沖縄都市モノレール)美栄橋駅近くにある「海人居酒屋 一郎屋 美栄橋駅前店」(那覇市前島)において、久米仙酒造(那覇市、比嘉洋一社長)が開催する「久米仙会」に、泡盛造りに興味を持っている息子と一緒に参加した。
久米仙酒造としては初めての自社開催のイベントということもあり、会の進行や参加者同士の交流など最初はぎこちなかったけれど、会に参加したメンバーのほとんどがかなりの泡盛マニアで、この手のイベントへの参加者としては大ベテランばかりだということもあり、時間が経つにつれて司会担当者を盛り上げて、会の進行が滑らかになっていった。
今回のこの会を企画し、進行役を買って出たのが久米仙酒造の開発・ブレンダー担当でプロモーション推進部主任、泡盛マイスターの中村真紀さん。中村さんは県内外のいろいろな泡盛イベントに社を代表して顔を出し、泡盛に真摯に向き合う姿勢と少し天然の会話から、泡盛ファンの間にはマッキーの愛称で親しまれ愛されている。
マッキーさんは「この会を開くことで久米仙のお酒を知ってもらうことと、泡盛の楽しみ方を知ってもらえれば」と語った。
会はマッキーさん特製のライムを使ったウェルカムドリンクを参加者全員に配り、代表取締役社長の比嘉洋一氏の乾杯のあいさつから始まった。比嘉社長は、「中村(マッキー)と話をしているとき県外ではあんまり泡盛をのことを知らない人が多いので、小さなスペースでもいいからお客様と交流することができる部署があればいいねという話になり、プロモーション推進部を立ち上げ、そこへ中村を抜擢。その一環としてこの会を企画しました。何しろ今回は初めての試みで第1回目ということもあり、いろいろ足りないこともあると思いますが、皆様からご意見をいただいて今後の会に役立てればと思います。今日は中村がいろいろと趣向を凝らしていると思いますので、これからもよろしくお願いします。皆さん本日は誠にありがとうございました」と思わず言うと、参加者から「まだ、始まったばかりだよ」と一堂爆笑。
「あ、じゃなかった(笑)。えー、本日はよろしくお願いします。カンパーイ」と比嘉社長のお茶目な乾杯のあいさつに、場が一気になごみ参加者全員の笑いと笑顔の中で会は始まった。参加者のテーブルの上には「久米仙古酒ゴールド」と「久米仙くろ」が置かれており、自由に飲むことができた。
まずは「くろ」から飲みはじめる。減圧蒸留したフルーティーで軽やかな味わいが口に広がる。息子に感想を聞くと「甘くて飲みやすいね。若い人に人気が出るんじゃない」という。「古酒ゴールド」は旨みにコクと厚みがあり、香りも上品で芳醇。風味のバランスがよく、毎日飲んでもあきない味わいだと思った。息子は「旨い。本格的な泡盛の味わいがある」と答えた。まだ、21歳の大学生なのに、親元を離れてどんだけ酒を飲んできたんだ、と、心の中で思ったボクである。
飲み始めてすぐにマッキーさんが「皆さんが酔っ払う前に商品紹介をします」と、テーブルの前に陳列した主力商品を紹介。「まずは皆さんの前にもある『くろ』。減圧蒸留で当社で一番フルーティーな泡盛ですね。カナダの爽やかな草原のような香りと言った人がいましたが…(苦笑)。何だそれ、と思いましたが、爽やかさがなるほどそうなのかなとも思いました。
続いて『古酒ゴールド』。古酒100%何ですが、かつては新酒を混ぜることで味のバランスを調えていましたが、今は新酒を混ぜることができないので古酒同士のブレンドでこの味にしました。東京ではなかなか飲めないけど沖縄では一番好調の商品です。
続いてジャガイモ焼酎の『ぽてちゅう』。北大東島のジャガイモを使っています。北大東島はジャガイモが特産物なんですが、規格外がたくさん出ていたんですよね。規格外といっても食べられないわけではないのに多い時には10トンもあり、それを何とかできないかとの思いから、黒麹を使ったこれが誕生したんです。初期の頃より作り方を変えたことで、新ジャガ仕込みのフルーティーな味わいに仕上げ飲みやすくなっています。
続いて『特別限定8年熟成古酒』。この酒は沖縄で作った泡盛に、以前、うちで作っていた響天という内モンゴル産泡盛をブレンドし、8年間熟成させた限定古酒35度。ジャポニカ米を使った響天とタイ米を使った泡盛とのバランスが絶妙で、甘い味わいと香りが特徴ですね。
そして『2001年謹製樽熟成古酒』。樽貯蔵で長期熟成した2001年産泡盛80%に1996年の内モンゴル産泡盛の樽貯蔵酒20%をブレンドした泡盛です。長期貯蔵するとお酒の色がウィスキーのように濃くなってしまうけど、あまり濃い色は泡盛として認められないので他社では樽貯蔵を短くしたり、他の泡盛を加えることで色を薄くしているのです。しかし、うちでは比嘉社長が独自に開発した技術で味と香りをそのままに色だけを抜いているので、芳醇な香りを楽しむことができるのです。
最後は『沖縄エスプレッソ』。コーヒーリキュールですね。通常、泡盛コーヒーというと、泡盛をコーヒーで割ったり、豆を泡盛の漬ける方法があるのだけど、それだと豆から酸味がかった香りが強く出てしまいます。それで、コーヒーと泡盛の美味しさを引き出す方法はないかと、コーヒー専門家に相談したら、エスプレッソ方式でコーヒーを濃くすると香りが高く独特な苦味とコクのある味わいになるといわれました。とにかくコーヒー豆の量が違います。あとで、紹介したものを席に回すので試飲してください」といった。
商品説明の途中、料理が運ばれてきたが、みんな商品紹介を真面目に聞いていた。料理は刺身盛り合わせに魚のアラ煮、ゴーヤーチャンプルーに魚やイカの天ぷらで、どれも美味しくもちろん泡盛のよく合っていた。
料理を食べつつメインイベントになったが、それが軟水と硬水を当てる効き水と軟水と硬水で割った泡盛を当てる利き酒だった。料理を食べながらだと水や泡盛の味がわかりにくいことから、全員、料理を食べるのを諦め、イベントに参加した。ボクは利き水で硬水を当てることができ、しかも、メーカーまで特定できた(ちょっと自慢)。とはいうものの、その硬水というのがevianだったからである。というのも、ボクが生まれて初めて買ったミネラルウォーターがevianで、世界的に有名な水なのでどんなものかと飲んだ時、沖縄の湧水と変わらない味だったので「何だコリャァ」と思ったからである。後からわかったことだが、要するのevianは硬度の高いミネラルウォーターで、沖縄の玉城の垣花樋川や金武大川、仲村渠樋川などの湧水も石灰岩の間を通るため、かなりの硬度を持っている。なので、「Evian=硬い水=沖縄の中南部の湧水」となり、ボクはEvianの味には詳しいのである。当然、硬水で割った泡盛も当てることができ2問続けて正解した。しかし、問題は3問目にあった。
マッキーさんがオススメする2種類の古酒を当てるというもので、一つは8年古酒で、もう一つは「私が育てている秘蔵の古酒です」という。この2種類の古酒を飲み比べてどっちが秘蔵の古酒か当ててくださいという。全員に試飲カップを配り終えAとBのどちらかと思いますか?を聞かれたとき、参加者の意見が真っ二つに分かれたのである。「Aが絶対だ」という人もいれば、「いや、Bの方が香りが高くマイルドだ」という人も。
結果は実はAとBどちらも同じ酒だったのである。マッキーさんが言うには人の味覚はあやふやで騙されやすく、先入観から味を決めてしまう傾向にあるというのだ。だから、テイスティングの時に自分の意見をあーだこーだいう人がいるけど、それによって味覚がぶれてしまうのである。「だから、テイスティングするときには、全員が終わるまでは感想を言わないことも大切なんです」といった。
今回の実験で、マッキーさんがテイスティング前にいろいろ言ったことで、みんなのその気になり、味が変わったのである。いやぁ、思い込みってホント大変なんですね。「でも、意見が、AやBに偏るのではなくちゃんと半分半分に別れたというところが、このメンバーのすごいところですね」と褒めてくれたので、あとは美味しく泡盛を飲むことができたのである。
それにしても、料理も美味しく、商品紹介した泡盛も試飲しつつ、準備された泡盛を気持ちよく飲んでいたら、予定していた時間がアッという間に過ぎてしまった。最後は参加したメンバー全員で記念撮影。息子は「泡盛について語り合いながら飲めるって、大人の飲み会というか、沖縄の飲み会は楽しいね」といった。
今後の日程は未定だが、比嘉社長は「これからもこのような会を儲けたいと思っていますのでよろしくお願いします」とあいさつ。マッキーさんも「第1回目の会は知り合いばかりで、心強かってけれど少しやりにくかったです(笑)。でも、とても楽しかったです。次回、また指向を変えてやりたいと思いますのでよろしくお願いします」といい、第1回久米仙会は終了したのであった。
ちなみに、後日、マッキーさんのSNSを見たら、「久米仙酒造でこんなイベントしてほしいということがあれば大募集しています。それから、久米仙会ってネーミングがイマイチなので、ネーミングも大募集したいです」と書かれていた。