那覇市で琉球泡盛文化の継承及び発展に関する条例が成立(11月1日「泡盛の日」施行)

  • [公開・発行日] 2026/10/12
   

令和8年10月6日(火)、那覇市議会は9月定例会の最終本会議で「那覇市琉球泡盛文化の継承及び発展に関する条例」を全会一致で可決した。施行は11月1日(日)の「泡盛の日」。

条例は、琉球泡盛発祥の地である那覇市で泡盛文化の継承と発展に向けた施策を進め、文化の振興、伝統産業の発展、地域経済の活性化に寄与することを目的に掲げる。

市、酒造事業者、関連事業者、市民の4者に、それぞれ役割を定めた。

「市」は施策を総合的かつ計画的に策定し、実施する。
「酒造事業者」は品質の向上、伝統的な製造技術の継承、後継者の育成に努める。
「関連事業者」には販路拡大や製造設備の更新などの取り組みを求め、市がこれを支援できると明記した。
「市民」には、琉球泡盛文化への理解を深めるよう努めることを求めている。

首里城公園首里杜館イベント「首里で楽しむ、首里の酒『酔い、宵い』R8.10.11

首里城公園首里杜館イベント「首里で楽しむ、首里の酒『酔い、宵い』R8.10.11

この条例は、泡盛での乾杯を推進する「乾杯条例」ではない。
8月に公表された素案では、琉球泡盛文化を、製造・保存・流通・飲食に関連して育まれた歴史、伝統、芸能、工芸、食文化などの総体と定義した。そのうえで、個人の嗜好や意思、健康状態を尊重し、飲酒を強制したり推奨したりしないよう配慮することを定めていた。

9月4日の「古酒の日」と11月1日の「泡盛の日」には、普及啓発の取り組みを重点的に行うとしている。

県内では令和元年7月9日、与那原町議会が「与那原町琉球泡盛で乾杯を推進する条例」を可決している。泡盛の乾杯条例としては全国で初めてだった。

那覇市議会でも令和7年3月18日に「琉球泡盛で乾杯を推進する条例」の制定を求める陳情が採択されていたが、今回成立した条例は乾杯を推進する形をとらなかった。

条例づくりは市議会が進めてきた。市議会は令和7年3月18日、「泡盛文化の継承発展及び普及促進に関する決議」を可決。令和8年3月に条例制定のための特別委員会(委員14人)を設け、4月6日の初会合で上里直司市議を委員長に選んだ。

5月11日には、弊紙編集長も特別委員会に参考人として招致され、泡盛の歴史や文化的な価値について意見陳述を行った。弊紙編集長は、戦前、泡盛が日本蒸留酒の頂点に君臨していたこと、沖縄戦で蔵ごと貴重な古酒が失われたこと、アメリカ統治時代に泡盛の製造に様々な不利な制約をもうけられたこと、そして本土復帰後に日本最高峰の蒸留酒「泡盛」の復興に心血を注いだ先人たちが数多く存在したことなどを語ったという。

バナー条例

那覇市議会においては、以前より一部の議員より、泡盛乾杯条例の制定を求める声が上がっていたが「飲酒運転や未成年飲酒を助長しかねない」「一部の業界を応援するのはいかがなものか?」などの批判的な意見もあり、条例の制定には至らなかった。

それらを踏まえ、弊紙編集長は「泡盛に関する条例制定に関して、様々なご意見があるとは思いますが、賛成するにしても反対するにしても、那覇市が”泡盛の発祥の地”、すなわち、那覇市が”日本蒸留酒の発祥の地”であることをお含みおきいただいた上でご判断ください」と陳述を締めたという。

条例制定の背景には泡盛の需要の落ち込みも影響しているという。泡盛の出荷量は平成16年をピークに、令和4年を除いて毎年減り続けている。令和4年はコロナ禍の制限緩和や日本復帰50年が重なって18年ぶりに増えたが、翌年から再び減り、令和7年は前年比5.7%減で、昭和58年以降で最も少なかった。復帰特別措置法に基づく泡盛の酒税の軽減措置も、令和14年に完全に廃止される。

(文/岡山進矢東京支部長)

以下、条例全文

那覇市琉球泡盛文化の継承及び発展に関する条例

(目的)
第1条 この条例は、泡盛の発祥の地である本市における琉球泡盛文化の継承及び発展に関し、基本理念を定め、市、酒造事業者、関連事業者及び市民等の役割を明らかにするとともに、必要な施策を総合的かつ計画的に推進することにより、文化の振興、産業の発展及び経済の活性化に寄与することを目的とする。
 
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 琉球泡盛 酒類の地理的表示に関する表示基準を定める件(平成27年10月30日国税庁告示第19号)に規定する、名称を琉球、産地の範囲を沖縄県、酒類区分を蒸留酒として、地理的表示の指定を受けたものをいう。

(2) 琉球泡盛文化 琉球泡盛の製造、保存、流通、飲用その他これらに関連して育まれてきた歴史、伝統工芸、伝統芸能、琉球料理その他の文化的価値の総体をいう。

(3) 酒造事業者 市内で琉球泡盛の製造又は長期貯蔵・熟成を行う者をいう。

(4) 関連事業者 市内で飲食業、宿泊業、観光業、伝統工芸品の製造若しくは販売又はイベント事業その他の琉球泡盛文化に関連する事業を行う者をいう。

(5) 市民等 前2号に掲げる者を除くほか、市内に在住し、在勤し、又は在学する者をいう。

(基本理念)
第3条 琉球泡盛文化の継承及び発展は、次に掲げる事項を基本理念として取り組むものとする。
(1) 琉球泡盛が育んできた歴史、文化及び伝統を尊重し、次世代へ継承すること。

(2) 琉球泡盛と伝統工芸、伝統芸能、琉球料理その他の地域資源との連携を図ること。

(3) 新たな価値の創造及び市内外への発信により、産業の持続的な発展を図ること。

(4) 個人の意思及び健康への配慮を図ること。

(市の役割)
第4条 市は、前条に定める基本理念にのっとり、琉球泡盛文化の継承及び発展に関する施策(以下「市が実施する施策」という。)を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

(酒造事業者の役割)
第5条 酒造事業者は、琉球泡盛の品質向上、伝統的な製造技術の継承及び後継者の育成に努めるとともに、市が実施する施策に協力することができる。

(関連事業者の役割)
第6条 関連事業者は、その事業活動に応じて琉球泡盛文化の魅力の発信及び普及に努めるとともに、市が実施する施策に協力することができる。

(市民等の役割)
第7条 市民等は、琉球泡盛文化への理解を深めるよう努めるものとする。

(技術の継承及び後継者の育成)
第8条 市は、酒造事業者その他関係団体と連携し、琉球泡盛の製造技術及び関連する伝統技術の継承並びに後継者の育成に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。

(学習及び普及等)
第9条 市は、市民等が琉球泡盛文化について理解を深めることができるよう、学習の機会の充実に努めるものとする。

2 前項の学習の機会は、飲酒を強制し、又は推奨するものではなく、文化的価値の理解を目的として実施するものとする。

3 市、酒造事業者及び関連事業者は、泡盛に関する啓発の日等において、琉球泡盛文化の普及及び啓発の取組に関し、相互に協力することができる。

(情報発信及び文化交流)
第10条 市は、琉球泡盛文化を市内外へ発信し、及び文化交流を促進するため、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(酒造事業者及び関連事業者に対する支援)
第11条 市は、酒造事業者による琉球泡盛の品質向上、技術革新、販路拡大、ブランド力向上及び製造設備の更新並びに関連事業者による琉球泡盛文化に関連する取組に対し、必要な支援を講ずることができる。

(伝統工芸等との連携)
第12条 市は、琉球泡盛と伝統工芸、伝統芸能、琉球料理その他の地域資源との連携を促進し、琉球泡盛文化の魅力の向上に努めるものとする。

(観光振興)
第13条 市は、琉球泡盛や関連事業等を活用した観光振興に努めるものとする。

(個人の意思の尊重等)
第14条 市、酒造事業者、関連事業者及び市民等は、この条例に規定する取組を推進するに当たり、個人の信条、意思、嗜好及び健康状態を尊重し、飲酒を強制し、又は推奨することがないよう最大限配慮しなければならない。

(財政上の措置)
第15条 市は、この条例の目的を達成するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施策の検証)
第16条 市は、この条例に規定する施策の実施状況を定期的に検証し、その結果を今後の施策に反映するよう努めるものとする。

付 則
この条例は、令和8年11月1日から施行する。

[PR]

関連記事

アーカイブ

更新情報

更新情報



プレスリリース

登録されているプレスリリースはございません。

ページ上部へ戻る