【泡盛復帰コラム】(宮古編)復帰対策はこれでよいか両先島業界の実態をきく(昭和45年3月1日)

  • [公開・発行日] 1970/03/01
    [ 最終更新日 ] 2015/12/19
   

A工場

宮古のの泡盛業は一口に云って1番の斜陽産業と云える。8年前に業者が話し合って共同ブレンド販売をやりましたが、あの頃の消費者の風評は悪く、1970_3_1_do-it-this-a-good-to-return-measures_listen-to-the-actual-situation-in-the-island_miyakoマスコミからもさんざんたたかれ、結局世論に屈服した訳です。

2回目の試みは方法を変えて各メーカーのこれまでの実績によって窓口を一本化し、各家庭売りと部落単位卸し売りをしてみたが、これまで名の売れていなかった、いわゆる小さなメーカーの製品が余計売れなくなり、結局1万本位いのストックを抱え込む羽目に追い込まれ、とうとう此の方式もご破産になりました。

その後ラベルの統一の案もあったが、実現の段階までには到らなかった。私の考えでは一気に大型工場を作るのは無理だし、第一にやるベきことは窓口を一本化し、共同ブレンドをして貯蔵し、販売会社を設立して、しぼる工場も整理し、二軒を一軒にし、半分の業者は醸造し、あとの半分の業者は販売面に力を入れてゆき、そして軌道に乗り出したら更に三社位いずつしぼって行く方法か良いと思う。

酒価も沖縄本島とは相当の開きがあり、どうしても本島並みの線までもっていかなければいけないと考えている。約8万リットルの全宮古の月販量として、本島との差額は6,330 ドルとなり、年間差額になると莫大な開きになる。

業界がもっと認識を新たにして余り自分の“ノレン”に未練を抱かず歩み寄るべきは、さっさと歩み寄るべき時期だと思う。宮古で泡盛だけを本業としているのは二、三軒位いであり、本来儲かるべき企業が、云いかえれば儲からなければならない企業が余り自先だけ
の事だけに終始していると云えましょう。

1つの問題が起きると正しい意見ではなく、反対のための反対をするようではだめだと思う。もっと業界自体が体質改善をしなければいけないでしょう。

B工場

まぁ宮古人の欠点ですが、熱し易く冷め易いと云うのが宮古人の気質で、何を決めても三日坊主で長続きしない。施政権が本土に移ると他の酒類も安くなってくるし、若い消費者層は本土に流れていくしでは、今でさえタブついている生産量は到底さばけなくなる。

合理化については、何事でも最初から完璧と云うものはないのであり、何回でも業者間で話し合って実行してみるべきだと考える。話し合いの積み重ねによって、よい案も出て来ようし、協業等は今すぐにではなく、現在は或る程度の冷却期間を置くべき時期だと思う。

C工場

今の状態では販売量は減っていくのは明らかである。先決問題は企業の統合だと思う。それも人間関係が複雑で郡民性と云うか小さい島に育つと、それだけ気も心も小さくなるのだろう。

今後は若い人が業界をリードしていくべき時代でしょう。業界もさること乍ら当局も取り立てだけが能でもあるまいし、もっと業界をリードするような、例えば戦前は専門官かい
て、モロミをなめて見て、こう云うモロミの状態からは幾ら位いの酒がとれるとと云う様なアドバイスもしたし、現在はそう云った専門知識も持ち合わせていないし、復帰すると本土法が適用されるし、政府の人事面も変ってくるんじゃないですか。

制度面は非常に厳しくなると思うが、それまでに業者自身も厳しく律しておくべきだと考える。

D工場

なるべく早い時期に協業や統合をやるべきだと思う。もう業者自体の基本態度が示されるべき時でしょう。

業者は5ヶ所位いが理組的で、本島に4ヶ所、伊良部に1ヶ所と云うところでしょう。現在、原価割りで出している業者もおり、誰かが音頭をとって、先陣をきって協業に踏みきれば、残る業者もその気になるものと思うし、又、業者の中にも転業資金を与えれば廃業してもよいと考えているのも5ヶ所位いあることだし、時期としては非常によいと考えている。

E工場

合理化については大賛成である。きょう例えば業者間で話し合って決めた値段が明日から崩れる云った状態では、もう人間が信用できなくなると云うのが私の心境ですね。同じ原料で作ったものが、こう云った状態では経営も成り立たないと思う。早く企業の合理化を推し進めていくべきではないでしょうか。

F工場

以前の事や問題はとやかく云わず、現在は現在と割り切った考え方で合理化を推進していくべきでしょう。企業の統合の場合にしても、問題は資本の評価ですが、余り一国一城の主的考えに固執せず、私利私欲を捨てて大同団結すべきだろう。

まだまだのんびり構えているキライもあり、酒造業を副業的にやっている方もいる。私の場合は販売には自信がありますが、余り競争すると市場を混乱させる結果になりますので、自粛している状態です。

まぁ近促法がもっとスムーズにいけば転業も考えられるし、条件が叶えばメーカーを育成してもよいと考えているし、当局に問題を投げかける前に、業者自体の団結が先決であり、譲り合いの精神が大切だと思う。

警告書が来る様な後進性の強いあり方ではダメでしょう。常識はずれの商いも問題でしょう。組合費も宮古の場合、1率10弗(ドル)になっている点も腑に落ちないし、例えば1,000キロで10弗であれば、500キロとる業者は2弗50仙(セント)と云う風に。

幸い今年の9月分からは数量制になっているので、そうなればこちらとしても納入できる訳です。原料米の問題も泡盛産業から取る場合、多量消費業者と少量消費者では差額があってよいと考える。

G工場

以前から色々と問題点について話し合ってきたが、結論として1ヶ所にまとめるべきだとの案で、度重なる話合いでの結果は理想論に終わってしまった。

その案と云うのは原料係、醸造係、販売係を置き、その方式を廻転させて運営して行こうと云うことで、資金は近促法を利用し、1工場5,000弗を基本株とする、支払い方法は何年かの据え置き期間を置き支払いしていこうと云うものでしたが、配当金が貰えるかどうか疑問だと云う意見が出て、それはしばらく静観して案を練り直そうと云うことになった訳ですが、いずれにしても今年中には統一しなければ復帰後は大分苦しくなるでしょう。

私は新工場設置には非常に賛成である。又、業界視察もしておきたいと考えている。

H工場

窓口の一本化は是非必要だと思う。製造も3、4軒にまとめ、販売は1ヶ所にするのが理想でしょう。値段の統一を痛感します。設備された工場に未練があり、まぁ副業者も多いでしょう。

I工場

宮古の場合は甲乙類と云う認識よりも1仙でも安いものを買うと云う考え方の消費者が多い訳です。これは経済の底の浅い宮古では無理からぬ話ではありますが、もっと消費者も良い製品に対する選だくの目を持って貰いたいものです。これが宮古の消費者層の大体の実態です。

協業については企業者が賛成しているのですが、いざとなると個人的な感情問題等もからんで来て仲々まとまらない訳です。こう云った問題は、転業資金とか設備買上げ資金等の目処がつけば解決は出来るものと思う。

協業については私がやっても良いと考えております。とにかく今の状態では宮古の業者は全滅です。人口は大体65,000~66,000人と云われておりますが、過疎現象は著しく、特に酒を消費する若い層の出稼ぎが多く毎年人口は減っていくし、そう云った大きなハンデを抱えているものですから、税金、会費等も問題になってくる訳です。

この際、業者が自分のラベルに固執せず、認識を新たにするべき時期だと思う。合併を前提とした協業等は可能だと思うし、3社なら3社と云う様に、当局も口だけじゃなく資金政策面も考えて貰いたいと思う。

近促法資金も法自体だけに縛られず、宮古と云う地域的条件も勘案してもっと制度も緩和出来ないものでしょうか。協業は誰かが早目にやらなければならない大きな問題であり、私のような合理化した企業設備をやっている業者にとっては労務管理面も問題になってくる訳です。

例えば8時間労働でもタンクが一杯だと5時間位いで帰って了(しま)うし。製品については今後は貯蔵以外にない訳で、そのためにはやはり資本の結集が必要なんです。いずれにしでも、15軒では余りに多過ぎます。

私なら5軒位いが理想だとみている訳ですが、例えば15万ドル融資を受けるとして(此のの場合5ヶ年位いの融資で2ヶ年位いの据え置き期間を置いて)転廃業賃金を各々1万ドル宛やる。5軒だと人件費の節減、タンクの増設、貯蔵もできるし、品質の向上に結びついていく訳です。本土資本の割り込みを未然に防止するには、政府のアドバイスも必要ですが、吾々業者自体がやっていくべ問題であり、早く古い考え方から脱皮すベきでしょう。

次に私の案を説明してみましょう。私の場合、月販売数量は平均して25,000L、本数(633ml/1本)にして4万本、しかし金額(現在)にして1万400ドル、これを沖縄本島のそれとれと比べてみると、同じ本数(633ml/1本)で本島では1万2,000ドルとなり、その差は1,600ドルにもなり、更に1ヶ年では実にその差額1万9,200ドルになるのです。

それだけの赤字を毎月毎月積み重ねている訳で、儲かるべき、そして現に目に見える数字をブラブラさせ乍(ながら)らもやろうとしないのは、本当に馬鹿げたお話ですよ。

これが更に全宮古になりますと、全体では月平均販売数量が450石位いですが(本数にして12万8,000本)、金額にすると(平均値をとって)3万3,280ドルとなりますが、本島のそれは3万9,400ドルとなり、その差額6千120ドルとなる。更にに1ヶ年では7万3,440ドルと云うお金か業者にしわ寄せされている勘定になります。

それだけの出血を強いられているのですから、今こそ資金導入を図って協業に踏み切るべきです。最初にも云った通り、私がやっても良いと考えております。

※(取材者注)
J工場、K工場はI工場の考え方と全く同意見であったので、あえて取りあげなかった。以上が宮古泡盛業者の意見である。

八重山編に続く

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