税審「酒類消費税改正」の答申内容(昭和45年3月1日)

  • [公開・発行日] 1970/03/01
    [ 最終更新日 ] 2015/12/10
   

消費者保護を全面に税率引き下げ36万ドルの減収

税制審議会(平良恵三会長)は、在8月から約半年聞にわたり諮問事項「本土復帰に備えての税制改正について」を審議、1970_3_1_report-content-of-liquor-consumption-tax-revisionさる2月2日に答申書をまとめ、屋良主席あて答申した。

この答申を受けた行政府では、今度の改正案を採用するに当って政府財源との関連もあるところから、予算調整を終えた5月の末ごろに立法勧告される見通しであり、立法院議会会期末にまた“物品税論争”が再燃しそう。

特にビールの税率引き下げと輸入洋酒税の引き上げによって、約36万ドルの税収減になるところから、消費者保護と企業育成の論争点に加えて、政府財源も絡み、問題はかなり複雑化の様相をみせている。次は税制審が答申した「酒類消費税」についての内容である。

ウイスキー類

現行税率185%を250%へ65%引き上げする。250%というのは、負担率が本土の40%であるので60%程度に引き上げるため、調整した数値である。ウイスキー類は嗜好品であり、しかも廉価な県産品があるから、前記の引き上げ率はなんら一般庶民の生活に影響を与えるものでないと考える。

ショッピング観光およびサ一ビス業との関連では問題であるが、ウイスキーについては免税売店もあり、税率引き上げによって観光政策に大きな影響を与えるとは考えられない。観光客は外国製洋酒が安いからといって、それを買い求めるために来訪するのではない。

また、250%に引き上げられてもなお、本土の負担率の60%という低率であり、本土との較差は依然大きいことに注意をうながしたい。

次にサービス業への影響であるが、我が沖縄経済は第三次産業の肥大化にみられるような不健全なな消費経済であり、基地経済からの脱皮をはかるには、政府の誘導政策によってサービス業を中心とする第三次産業の膨張をおさえ、第二次産業への拡大転換を図ることが緊要である。我々の決定もこの路線に沿ったものであるとを強調したい。

ビール

ビールに課せられている現行酒類消費税100リットル当り47ドルを39ドル(8ドル引き下げ)に改める。

1957年8月11日付立法第155号によって、輸入ビールに対する従来の従価税率165%が200%に引ぎ上げられて以来、地元産ビールに対しては、手厚い税制上の保護が与えられてきた。1966年8月付立法第72号は、これまでの従価税を従量税へ改め「100リットルにつき7ドル」と定めたが、負担の度合は200%の従価税の場合と実質的に変わるところがないとい
ってよい。

これらの保護期間を通算すると10年余のながきに及ぶ。その間消費者が犠牲を強いられたことは言うまでもない。本土価格1本36.11セントものが、沖縄では55セントの高値を余儀なくされ、他方では地元産品の40セントも本土価格に及ばない状態にある。

我々は、県内企業の保護育成の緊要なることは十分承知している。だからといって、消費者の一方的犠牲が無分別に容易れてまいということにはならない。企業の育成とともに、消費者保護についても十分なる拝領がなされるべきであると考える。

このような観点から、輸入ビールに対する現行税率はせめて100リットル当たり39ドル程度には改めるべきであるとの結論に達した。これは輸入ビールの小売価格の5セント引き下げを目処に超世したものである。

最後に

ところでこの程度の改定では大衆消費者の保護には繋がらないとの異論もあろうが、1972年復帰を控えて、県内企業の保護についても慎重な配慮が必要であるところから、前記程度の引き下げにとどめた次第である。

当審議会は企業の保護とともに消費者の保護についても十分なる配慮が払われなければならないと考える。同時に単に廉価をもってこと足れりとする安易な“消費者保護”に陥ること無く、また企業の育成のためには消費者の無原則で一方的な犠牲もやむを得ないとする暴論を退け、あくまでも全県民的立場から前記の結論を得たことをあえて強調したい。

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