物品税に対する考え方(昭和45年1月1日)

  • [公開・発行日] 1970/01/01
    [ 最終更新日 ] 2015/11/28
   

経済、企業振興との関連を

1970_11_1_the-idea-for-the-a-commodity-tax本土復帰をあと1年半後に控えて今年もまた立法院や行政府、業界で物品税論争が再燃しそうな気配である。この論争の焦点は、既存企業保護を強調する通産局、島内企業と物品税廃止による消費者利益の向上を主張する、主税局や輸入代理店に象徴されるように「企業保護か、消費者利益優先か」が焦点となつている。

これに対し1月8日に来島した通産省派遣の中小企業調査団(団長竹谷源氏繊維雑貨第一課長)は、調査のうえ復帰後も中小企業保護策として物品税の暫定的据え置きが必要であるとの結果が出れば、復帰施策に織り込むよう意見具由する」と存続の可能性を示唆する感想を述べている。

では、既存の中小企業保護と体質強化を前面に打ち出し物品税の存続ないし段階的な解消を主張してきた通産局の「物品税に関する基本的な考え方」を紹介しよう。この案は昨年の立法院議会で物品税論争が起つた際にまとめられたもので復帰を目前に控えてさらにこの姿勢を強調するものとみられる。

物品税に対する基本的な考え方

現行の物品税は、本土における国内消費税的性格と異なり、輸入品に課する(第一条)となっており関税的性格である。本土や諸外国のように輸入品に対する規則は自国産業保護や全般的な経済政策との関連で制定されている。

その点沖縄でも物品税が関税的役割りを果しており、物品税のあり方を検討する時は、当然のことながら島内の産業育成や経済全般との有機的な関係を考慮すべきである。本土に復帰すると、本土の制度が一様に沖縄にも適用されるが、沖縄の地域経済の振興は本土と同じ方策を取らざるをえず、産業の発展段階にあり、本土と構造や体質面で著しく違う沖縄の産業はそれだけ不利になる。

したがって、現在持っている権限を最大限に活用し、本土企業と競争できるよう育成策を講じる必要がある。そこで注意しなければならない点は、物品税を課しているため、一般消費者は課税相当分だけ余計に高い品物を買わされているとの考え方である。

たしかに物品税が課税されることで物価が幾分上あがっているのは事実であるが、反面において輸入品と競争しうる企業があるため、輸出側が一方的に価格を操作できないこともあり、競争下で安い品物を供給している事実もある。

また、本土では輸出に対しては金融、税制、輸出価格制その他諸制度で優遇措置を講じて国内価格より安く輸出できることや輸出入取引法で禁止されているカルテル行為、不当景品付け販売を特別に認めている。

本土では輸入規制、関税制度などによって対外的に国内産業の保護育成が行われている。例えば製造業に対する諸臨時措置法や財政的に裏づけられ充実整備されている。この他、輸出振興のために特別の生産金融が設けられ、輸出産業用設備資金融通制度や海外市場開拓準備金、中小企業開拓準備金、輸出特別償却制度、輸出交際費の特例などの輸出税制が制定されている。

1972年復帰を前に企業に携わる産業界でも“復帰体制づくり”として復帰後、本土企業と対等に競争して行けるよう経営基盤の確立が急がれているが、琉球政府の財政の弱小性が効率的に産業育成策を執行できないのが現状。

沖縄の産業育成措置は、重要産業育成法、中小企業近代化促進法、租税特別措置法、産業開発資金融通法、糖業振興法、パイン産業振興法であるが、これらの育成策の適用を受けているのは極めて限られた業績にとどまっており、産業開発資金融通法にいたっては、新規事業で資本10万ドル以上、常用従業員100人以上の規模を基準にしているため、現行予算額500万ドルに対し申込み額はわずかに200万ドル(1969年3月現在)で、融通決済額は予算額の1割といった状態である。

一、物品税は税体系と産業政策面から検討されるべきである。

二、政府は1971年度を初年度とする長期経済計画の策定を急いでおり、その策定をとおして物品税のあり方が経済政策の一環として明確な位置づけがなされるべきである。また、現時点において小幅の手直しに止めるべきだと考える。

三、したがって物品税は、産業振興政策全体の関連で位置づけされるべきであり、今後策定される産業振興制度の制定及びその制度の効果などを考慮して検討されるべきである。

通産局では、このような方針に沿って今度は復帰に備え“体制づくり”をはかるため「工業振興臨時措置法」(仮称)を創設、金融、税制面からの企業基盤の強化を進める方針である。これまでの輸入規制または物品税に依存した産業振興策を徐々に改めて行く考えである。

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