沖縄産業まつりで3日続けての試飲巡り ”中編” (文/嘉手川学)

   

沖縄産業まつりで3日間続けての試飲巡り”前編”、初日その1はこちらより

いやぁ、それにしてもいい気分だ。何しろ試飲なので無料でいくつもの泡盛の味が確かめられるのである。レポートするのは各酒造所のおすすめや新発売する商品だけなんだが、それだけでは申し訳ないので、スタッフがすすめる商品とボクが気になる商品も試飲し続けている。なので、試飲は少量ずつだけど気がついたらコップ一杯分くらい、泡盛を生のまま飲んでいるのではなかろうか。というわけで前回の続きです。

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瑞穂酒造のスタッフにすすめられ(というよりもさりげなく試飲を要求したんだけど)数種類の泡盛の試飲を重ねてから、向かいにある菊乃露酒造(宮古島市)のブースにお邪魔した。ここは瑞穂酒造のすぐ真向かいにあり、シャキっと気を張って歩いたので、千鳥足になりつつあるボクの歩きは誰にもばれずにたどり着くことができた。

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菊乃露さんの今回の目玉は産業まつりで先行発売となった「菊乃露古酒7年38度720ml」と「菊乃露古酒5年41度720ml」の2種類。7年古酒が38度で5年古酒が41度と、年数によって度数が違う理由を聞いたところ、造り手のこだわりでその古酒の持つ味わいによってこの度数に決めたという。試飲をしてみると5年古酒はコクがあるのにまろやかで41度という度数を感じさせない甘みが感じられ、ストレートでもグイグイいけそうな味わいだ。一方7年ものは深い香りがあって意外とキレがありスッキリとした古酒にしてはライトな感じの不思議な味わい。同じ銘柄の酒でも年数と度数が違うだけで、それぞれに個性的な味わい深さがあった。さすが安定した旨さが評判の菊乃露ならではの味わいであった。

菊之露の7年と5年古酒。ダークレッドとダークグリーンのイメージカラーがカッコいい。

菊之露の7年と5年古酒。ダークレッドとダークグリーンのイメージカラーがカッコいい。

いよいよというか、だんだんと酔いが全身に駆け回ってきているのがわかる。早めにできるところまで試飲を続けようと思い、斜め向かいの瑞泉酒造(那覇市)に向かった。瑞泉酒造の目玉はなんといっても「瑞泉 海水仕込み30度720ml」である。通常泡盛は蒸した米に米麹と酵母と水を加えてアルコール発酵させ、そのもろみを蒸留させて泡盛を作るのだけど、この「海水仕込み」は水の一部にミネラルが豊富な海洋深層を混ぜることで、酵母による発酵を促進させる技術を開発して醸されている。この技術開発のきっかけとなったのが大正時代に書かれた「琉球泡盛について」という泡盛の調査研究の文書であった。その文献には「浸米に使用する水は井水、あるいは井水に少量の海水を加えて用いる」とあり、さらに「元来、沖縄県かに井水に乏しきを以て、井水の代わるに、往往海水を以て為すことがある。天水を使用せず」とある。つまり、泡盛造りには海水も使うことがあったとの記述があるのである。

瑞泉酒造の海水仕込み。ABCと3つのタイプのラベルがあり、買った人はどのラベルがいいか人気投票していた。

瑞泉酒造の海水仕込み。ABCと3つのタイプのラベルがあり、買った人はどのラベルがいいか人気投票していた。

近年では、清酒や焼酎、ビールなどで海洋深層水の利用が研究され、海洋深層水は海水より微生物の数が少なく、それが醸造に良い影響を及ぼす場合があるのは分かっているという。文書では海水を使用したことが当たり前のように書かれていることから、今は忘れてしまっただけで、当時は泡盛造りに海水が普通に使われていたのだと思われる。瑞泉酒造ではこの文献をヒントに2010年から商品開発を行い、6年の歳月をかけて商品化にこぎつけたのである。

さて、酔っ払いと年寄りは話が長くなるもので、前置きはいいとしてさっそく試飲をしてみた。口に含んだ瞬間にフルーティーな香りが際立っていて、味わいもまろやでか甘みが感じられた。これに氷を入れることで華やかな香りと米由来の甘さが余韻として長く続いているのであった。瑞泉酒造ではこの商品のターゲットを泡盛を飲みなれた人よりも飲んだことのない人や苦手な人などのライトユーザーに絞っている。瑞泉の他の一般酒と飲み比べてみたら香りや味の余韻が全く違い、軽やかで華やかで豊かな味わいに驚いてしまったのである。

瑞泉酒造でしばらく他の酒も試飲。ロレツもかなり怪しくなったので急いで泡盛残波の比嘉酒造(読谷村)へと向かった。ここにも何人か顔見知りになった人がいたので笑顔であいさつしたあと、さっそく試飲。紹介するのは「限定古酒 残波 2002年 43度 720ml」と「限定古酒 残波 1999年 42度 720ml」。一般的な残波とは飲みごたえが違い、両方とも通常販売はしていないという。欲しいときは産業まつりや地元読谷の祭りなどで入手するしかない。

残波古酒1999年と2002年。1999年は平成24年度に国税事務所長、2002年は平成27年度の県知事賞を受賞。

残波古酒1999年と2002年。1999年は平成24年度に国税事務所長、2002年は平成27年度の県知事賞を受賞。

まずは「2002年」から。口に入れると華やかで古酒らしい香りがして口当たりも甘くまろやか。スっとノドを落ちていくけど、度数が43度あるだけにじわじわと胃の中で温かさが広がり、そこから古酒ならではの甘い香りが立っていく。もう少し寝かすともっとまろやかになりそうな味だ。続いて「1999年」。これはさらにスゴイ。独特な香りがあってコクと旨みが2002年古酒と3年しか違わないのに、厚みがあるのだ。ボクはこっちのほうが好みだった。これもあと数年寝かすとさらに熟成した味わいになるのではないかと予感できた。

ところで、なぜ、「2002年」と「1991年」の泡盛を古酒にしたか聞いたところ、毎年タンクに仕込んだ時にいい仕上がりになったものをしばらく育てて、香りや味わいが優れているものや、やがて香りの華が開きそうなものをさらに古酒にしているという。お米の出来やその年の気温などの状況で同じ作り方をしても微妙に味わいが変わるところに泡盛の面白さがあり、それを古酒にするとさらに個性的な古酒になるのである。

この2つの古酒もその違いは明確で、2002年の古酒をあと3年寝かせたからといって1999年古酒と同じ味にはならないのだという。それにしても、この2種類の古酒の味わいに、残波酒造の古酒への思い伝わったのであった。

いやあ、もう、かなりヘロヘロなのである。しかしまだ、正確な味の判断はできているようなので、比嘉酒造でさらに遠慮なくお代わりをして、隣の沖縄県酒造協同組合(那覇市)のブースへ。

ここでのおすすめはいろいろな海乃邦のレアな古酒が入った、お得なお楽しみ袋だという。とはいえ、いくつかの銘柄が試飲できるというので「海乃邦10年古酒 43度 720ml」と「海乃邦15年貯蔵古酒 43度 720ml」を試飲。先に15年古酒が渡される。ひと言でいえば「旨い!!」である。芳醇な香りでクチに入れた瞬間からまろやかな味わいが転がりながら舌の上からノドの奥、さらに食道や胃袋まで転がっていった。

海乃邦が人気でいろんなタイプの海乃邦がある。真ん中のは金粉入りだが、残念ながら試飲できなかった。

海乃邦が人気でいろんなタイプの海乃邦がある。真ん中のは金粉入りだが、残念ながら試飲できなかった。

続いて10年古酒を試飲。ボクは順序を逆に飲んだほうがいいのではないかと聞くと、それはそうだけど、15年古酒を先に飲んだほうが味の違いがはっきりわかるのだという。渡された10年古酒はかなり旨いのだけれど、先ほどの15年古酒に比べてみると口に含んだ瞬間にまろやかな味と華やかな香りはあるのだけれど、小さな引っ掛かりがあるように感じられた。

それから、しばし担当者と、今から37~8年ほど前、東京でコップ酒の「紺碧」を試飲したことがあり、その時の「紺碧」の美味しさ、泡盛の美味しさが今の泡盛好きになっているという話をした。今度は逆に10年古酒から先に試飲した。すると今度は厚みのある海乃邦の10年古酒の旨さに15年古酒の旨さが上乗せされた味わいがした。

ここへ来ていよいよヤバくなってきた。少し、目の焦点もぼやけてきた。次は久米島の久米仙酒造(久米島町)。今回の目玉というよりも、パッケージをリニューアルした「久米島の久米仙 5年古酒 40度 720ml 」を試飲。担当者にリニューアルの理由を伺うと、この銘柄の今後のことを考え、従来の味わいのまま心機一転して商品を盛り上げようと思って変えたという。というわけで、さっそく試飲。マイルドな味わいとオーソドックスな古酒らしい香りと味は、古酒の中の古酒というか、全ての人に愛される味わいだと思った。日本中にファンがいるのがうなずける。

ラベルがリニューアルした久米島の久米仙5年古酒。右が従来のラベル。

ラベルがリニューアルした久米島の久米仙5年古酒。右が従来のラベル。

続いて「KUMEJIMA’S KUMESENN40 40度720ml」。ジンやウォッカといった、洋酒のスピリッツを彷彿させるパッケージが印象的な一般酒。泡盛がカクテルのベースになることを意識して度数を世界基準の40度にしたという。ただ、泡盛の豊かな香りと味わいはあえて残しているという。香りに華があり味わいも甘くすっきりしていて、確かにカクテルの合いそうな味だと思う。ただ、泡盛としての美味しさを出すためにしばらく寝かして出荷しているので、カクテルベースにせずに、そのまま一般酒として飲んでも美味しい泡盛だと思った。

スピリッツを彷彿させるボトル。泡盛の美味しさを残しながらカクテルに合いそうなあじだった。

スピリッツを彷彿させるボトル。泡盛の美味しさを残しながらカクテルに合いそうなあじだった。

いかんいかん、完全に酔っ払ってきた。昔からの知人とすれ違ったら目が座っている、といわれた。やっぱり飲みすぎなのか、担当者との会話も聞き取りにくくなってきた。そんなことを思いながらヘリオス酒造酒造へ(名護市)。ここでは「蔵 100%3年古酒 720ml」を試飲。さらに有料で「くら 原酒8年」と「くら 原酒12年」のワンショット試飲もあった。どれにしようか迷っていたら、知らない隣のアンちゃんが「おごりますのでワンショットで原酒のくらを飲みましょう」といわれ、遠慮無く飲んだのだが…。ここで酔いがピークに達し、味の評価ができなくなった。おごってくれたオニーさんにお礼をいいつつ、担当者に「すみません、今日はもうお酒の評価ができないので試飲はやめます」といって、残りのワンショットを飲み干してヘリオス酒造を後にしたのだった。

空を見上げるとまだ青空が広がっており、お昼抜きで試飲していたことに気づき、三倉食品のブースで、沖縄低糖質麺を食べる。沖縄そばのようで日本そばのような不思議な食感と麺、かつお風味で醤油味ベースのダシで、沖縄そばとしては物足りなかったけれど、締めの麺としてはなかなか健康的で美味かった。

ヘロヘロになったお腹を救った三倉食品の低糖質麺のそば。軟骨ソーキとかまぼこは沖縄そば。味は日本そばと沖縄そばの中間の味だった。

ヘロヘロになったお腹を救った三倉食品の低糖質麺のそば。軟骨ソーキとかまぼこは沖縄そば。味は日本そばと沖縄そばの中間の味だった。

そばを食べたことですこし酔いもさめ、そろそろ帰ろうと思い、その前に夕食のおかずになるものでも買って帰ろうと、川沿いの食品コーナーを歩き出した。するとオキハムのブースの中からボクを呼ぶ声がしたので中を見たら、広報担当の大城さんから店の裏のスペースへどうぞとお誘いが。残念ながら泡盛なかったけど、オキハムの出店で売られていたウィンナーの盛り合わせとシューマイを食べながら、沖縄の食の今後のことについていろいろ話しをしたのであった。お茶を飲みながらいろいろユンタクし、気がつけばいつの間にか夕やみが迫っていた。ボクは夕食を作らなければならないので、と、大城さんと別れを惜しみつつ帰途についたのであった。

オキハム前を歩いていたら突然呼び止められた。詳しい事は次に話すね。

オキハム前を歩いていたら突然呼び止められた。詳しい事は次に話すね。

第2部終了、次回へと続く

2016年度産業まつり潜入レポート

沖縄産業まつり3日続けての試飲巡り“前編”はこちらより
沖縄産業まつり3日続けての試飲巡り“中編”はこちらより
沖縄産業まつり3日続けての試飲巡り“後編”はこちらより

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