地酒の旅part4 漢那酒造<現、請福酒造>(昭和47年7月10日)

  • [公開・発行日] 1972/07/10
    [ 最終更新日 ] 2016/07/10
   

1972_7_10_the-journey-of-awamori_part4_kanna-syuzou_seifuku-syuzou漢那酒造有限会社の漢那憲副氏は、手八丁口八丁の男である。行動力が抜群で常に動いているこの人に、世評はいろいろあるが、全然気にしないところが漢那憲副氏のよい面であろう。

対談して人を惹きつける話術は絶妙である。口も悪いが、そのずばり云ってのけるところが氏の持味であり、その点、宮古の砂川武雄氏と似かよっているところもある。

酒宴でたまに話に熱がこもり過ぎて、相手に誤解を招き、翌日頭を押さえる時もしばしばあるようだ。今後は絶対こう云うことはしないよう気をつけ、ロをつぐんでおこうと決意をするようだか、いつの間にか、ぞろ地肌が出でしまって後悔するそうだが、そこがまた漢那憲副氏の憎めない人柄であり、云うなれば天真爛漫な人である。

奥歯にモノのはさまった云い方をする人物の多い業界にあって、氏の存在は貴重とも云えよう。

ところで、漢那酒造有限会社は八重山石垣市字新川148番地、石垣市内から徒歩でも行ける所にあるが、工場敷地坪数に於いて、又各施設面に於いても八重山一の規模である。

創業は1949年だが、当時は八重山だけでも48軒の酒造所があり、22軒に減り、8軒と激減、又1軒減って、現在は7業者。そんな紆余曲折の戦国時代を生き抜いてきた“さむらい”の1人だけに、その処世の術が信念となり、やがては今日ある“自信”に結びついてきたとみるのが妥当であろう。

「八重山の場合、まだまだ親戚縁者を辿って売り込みもしている段階で、良心的に品質を判断して買う時代にならなければ、本来の姿ではない。まだ嗜好が私の思うような域に達してないのでやたら宣伝もしていない。」

と自分の製品の向上や販売面での勝負はこれからが本番と自信と豊富を語っている。又、今度の減税問題については、へたをすれば皮も骨も残らず、相手も自分も傷つき、どっちも一から始め直す、つまり、又戦後が始まるとみている。

「連合会はもっと陣容を整え、活動的な人を起用し、県外開発にも先頭に立ってやるべきだ。企業の協業化はよいことだけれども、問題はそれ以前に人間関係が優先する、さし当たり本島の方が手本を示して貰いたい。

宮古業界が現在推進しているようだが、その結果をみて八重山も考えたい。銘柄は沢山あって消費者が自由に選択することも良いことだ。又、今後は消費者が買って価値のある製品にする必要がある。」と語る。

現在、漢那酒造有限会社の生産能力は約200石、月販売高が130石と地方では最大だが、前にも説明したように、施設面では蒸米機、製麹機とすべて機械化されているので、製造場2人、洗瓶、瓶詰め場で2人と、合計たったの4人の従業員数で間に合っているから、いかに合理的に酒を造っているかが伺える。

自社製品の“良さ”については、全麹であり、新しい機械の導入によって向上していると確信すると語っている。

漢那憲副氏

漢那憲副氏

今春、東京農大を卒業する長男の憲仁君が卒業後も本土にとどまる話があった時、氏は涙ながらに哀願して酒づくりの跡継ぎを決心させたと云うエピソードもある。ただし2ヶ年間は本人の希望も入れて、経済学を専攻させたいと語っている。

市場は市内から全離島にまたがっているが、工場敷地にまだ余裕のある同工場は、近く横の方に50坪の増築を計画、近く着工されるであろう。そして自動ラベルーや新しい瓶詰機も近く入れる手筈を整えつつある。

心配された復帰直後の商標権問題でも、本紙をみていち早く弁理士を通じ調査依頼した結果、清酒で“征服”と云うのが大正9年(1920年)に出願され、同年登録されているが、すでに創業を停止し、権利を放棄していると云うから問題ない。

以前から島の長老達に自然食の要求される時代だから“にんにく酒”を造ってはどうかと云われ、雑酒免許を受け、近くそれも発売する予定だと云う。

48歳のこの荒武者はその言動で時に敵もつくるが、あとがないからあっさりした人間である。与那国の入波平信三氏グループに簡便製麹機を譲り、その指導に熱を入れたのも漢那憲副氏である。協業も考えられないし、減税分の問題も解決できぬ現段階では、乱売もじさず、コストで勝負すると鼻息は荒い。

味に微妙な変化のみられる昨今、復帰後の八重山業界の天気図は必ずしも“晴”ばかりではないであろう。復帰後の漢那酒造は上昇株のひとつと云えよう。銘柄“請福”。

地酒の旅シリーズ

地酒の旅part1 今帰仁酒造
地酒の旅part2 恩納酒造場
地酒の旅part3 高嶺酒造場
地酒の旅part4 漢那酒造(現、請福酒造)
地酒の旅part5 本部の石川酒造(現在はありません)

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