【特別寄稿】古い酒を新しい器に 前編(昭和46年10月20日)

  • [公開・発行日] 1971/10/20
    [ 最終更新日 ] 2016/05/23
   

国税庁醸造試験所第四研究室長
農学博士 菅間誠之助

1971_10_20_special-contribution_put-the-old-awamori-in-a-new-vessel西洋の酒と東洋の酒の根本的な違いは、アルコールの原料である穀類のデンプンを糖にかえるための糖化作用を西洋では穀類の芽(麦芽)で行ない、東洋ではカビを生やした蒸米、すなわち麹を用いるところにある。

欧州ではパンを家庭に買い置きしておくと2日で乾燥し、歯も通らないほどの硬さになるが、東洋では暑い季節には2~3日でカビが生えてくる。この違いが酒造りの根本にもあらわれているわけである。

酒のなかでも泡盛のような蒸留酒には、醸した醪(もろみ)を蒸留するという高度な技術が必要であり、南九州に蒸溜酒である焼酎があらわれたのはキリスト教や鉄砲の伝来の後といわれる。

泡盛を蒸溜する釜も、コニャックやアルマニァックを蒸溜するアランビックという蒸溜機も構造的に全く同じで、いずれもアラビアから東と西に伝えられたという説もある。この蒸溜機から垂れてくるヘネシーブランデーもカブト釜から垂れる泡盛も新酒のうちの風味はほとんど変わりがない。

これを白ガシで長年蓄えたものがブランデーであり、カメに蓄えたものが泡盛の古酒である。その意味で泡盛は沖縄の地に培われた伝統ある蒸溜酒で、コニャックやスコッチと比肩する高級な酒である。

南九州には人吉の球磨地方に米製焼酎があり、宮崎南部から鹿児島にかけてはイモ焼酎があり、奄美の島には黒糖焼酎がある。それらは地方々々で、それぞれ特色ある風味をもち、独特な飲まれ方をしている。

人吉では25度の焼酎をチョカという徳利でカンをしてのむ。鹿児島では湯でわって16度か18度に薄めたものを徳利でさして飲む。沖縄での飲ませ方は30度ものを冷やでコップで飲むのが、これは芸術品である泡盛の取扱い方としては礼儀に失するのではあるまいか。

我々は職業上、酒の品質を鑑定する仕事を行なっているが、酒が嗜好飲料として飲まれる場合には、鑑定上の品質の良し悪し以外に、酒が飲まれるところの雰囲気が重要な因子となろう。

情報に弱い人間は「この酒が美味しいよ」と言われると美味しく感じてしまうものである。昔はカラカラで礼をつくして飲まれた泡盛であるから、本土復帰をまえにして、書生風のコップ酒を卆(卒)業し、昔にかえっていただきたいものである。

また30度ものに慣れておられる沖縄の方々に他県人としての感じを申し述べることを許していただけるならば、泡盛はやはり鹿児島流に6~8度に薄めて飲んだ方がその旨味がわかるのではあるまいか。

ブランデーの鑑定は手のひらに酒を移し、香気を見、またそのままグラスを手であたためて香をきき、口に含むが、舌がつかれるため、1度にきける酒の数はわずか数点と云われる。泡盛の30度ものを口に含むと10点もきかないうちに舌の判定能力が無くなってしまう。

職業的にこれをきく場合でもこのようなことであるから、1日の疲れを癒やし、料理の味を十分に味わうに必要な舌を疲れさせないためには、アルコール分が30度では強すぎるのではあるまいか?

私は泡盛を来島以来20日間で6升は十分飲んだと思い、沖縄の風土に溶け込めた充足感を持っているが、私には湯で割った泡盛ほど持味を十分発揮するものであり、泡盛の芳香と旨味を人に感じさせるものであると思われる。

今後は本土から自由に多くの観光客が沖縄を訪れるようになるであろう。そのような人々に特産物である泡盛を抵抗なく味わってもらうためには、湯割りのカラカラでかたちを作って飲む方法、あるいは25度、20度製品の販売も検討してみる価値があるのではなかろうか。

 

菅間誠之助 特別寄稿

古い酒を新しい器に 前編
古い酒を新しい器に 後編

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