【島の酒】桑の実の泡盛リキュール誕生(文/嘉手川 学)
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[公開・発行日] 2016/08/14
[ 最終更新日 ] 2016/08/17 - 買う
公益法人浦添市シルバー人材センターは新里酒造(沖縄市、新里健二社長)の協力を得て、シマグワ(島桑)の実を使った新しいタイプのリキュール「沖縄ナンデンシー」を発売した。
浦添市は平成18年から地域特産ブランドとして養蚕事業に取り組み、その一環として桑の木畑の整備と栽培にも力を入れており、平成24年度からは地域資源として「シマグワ」の葉や実を使った特産品の開発も推進している。
ちなみに「ナンデンシー」とは沖縄の言葉で桑の実のことで、その果汁を使ったリキュールということで「沖縄ナンデンシー」のネーミングとなった。浦添市は農家が少なく農薬を使っていない地域に桑畑があるため、安全で安心できる桑の葉や実が利用できるという。
浦添市の桑畑のテクニカルアドバイザーで桑の木や実の栽培、生態に詳しい小山朗夫氏(元つくば市独立行政法人 農業生物資源研究所技術支援室長)によれば、「沖縄のシマグワは小ぶりだけど糖度が20度と高く、本土の桑の実10~15度、メロン15度やマンゴー12度を上回っている」という。特有の青臭さやえぐみはあるけど、糖度はいろいろと利用できるので貴重だともいう。さらに「本土の桑の木は冬に落葉し休眠するため1年に1度しか実をつけないのに対し、シマグワは春と秋頃の2回収穫ができるという。加えて、台風などの大風で葉を落としたあとには新芽が出て、実をつけることもあるので、その際は年に3~4回実をつけることもある。
桑の実を使ったリキュールをつくろうとしたキッカケを聞いたところ、浦添市シルバー人材センター理事長の翁長盛正氏は「新聞などで泡盛の需要が伸び悩んでいるのを知り、ウチナーンチュとしてなにか協力できることはないか考えたとき、うちの桑の実ジュースを使ったリキュールができないかと思い、酒造組合に問い合わせたところいくつかの酒造所を紹介されました。その中から新里酒造さんにお願いしました」。
当初は泡盛の果汁を混ぜるだけなので簡単に考えていたが、桑の実らしさを残しつつ味や色など決めることに苦労し、酒造所と一緒に微調整しながら商品化するまで結局2年もかかったという。
新里酒造の新里健二社長は「数ある酒造所の中から、リキュール作りに実績のあるということで当社を選んでもらい光栄だったのですが、果汁だけでは桑の実らしさがどうしても表現できなかったですね」という。色や飲み心地など泡盛と桑果汁、それ以外の材料を選んで配合することに時間がかかりましたね」と語る。
今回の「沖縄ナンデンシー」について小山氏によると「果汁の量が構想より少なめとなった。しかし、その分、料金を抑えて気軽に飲んでもらえるようにした」とのこと。今回は収穫した春の実を使い、限定1200本しか作れなかったけれど、秋の実の収穫量も春と同じくらいならばだいたい同じ本数が作れる。翁長氏は「商品としてはまだまだ現在進行形なので、今後は更に実の収穫量を増やし、さらにより良い桑の実リキュールを作っていきたい」と語る。
「沖縄の地域特産品として利用されていなかったシマグワが、泡盛と一緒になることで、これから新しい地域特産品になるといいのではないでしょうか」と小山氏。
今まで、身近にありすぎて誰も気がつかなかったナンデンシーにスポットを当て、新しい「島の酒」として生まれ変わった桑の実を使った「沖縄ナンデンシー」に注目である。
ところで、沖縄ナンデンシーだが、水や氷を加えずのそのまま少し口に含むと子どものころに食べた熟した桑の実を確かに彷彿させる懐かしい味わいがした。その風味は、鼻腔を通った煮詰めた甘い花や果物の香りが、喉の奥に甘さを感じさせるかのようだ。味は甘さの中にわずかに苦味が絶妙なバランスで感じられ、その甘さはリキュールを紹介するうえで妥当かどうかわからない表現だけど、50代には懐かしいあの「ミッキージュース」のグレープ味を思い切り上品にして、どことなくポートワインに近づけた感じがして、リキュールというよりも甘味果実酒に近い。飲み方としてはそのまま氷を入れてロックで飲むのもいいけれど、おすすめは炭酸割りだという。他にも、カクテル感覚でいろいろなものと割って楽しむこともできる。
現在、商品は完売してしまったが、秋の収穫後は浦添市シルバー人材センターの直売店で販売するという。販売が決まったら、取り上げるのでまた読んでね。
商品名 :沖縄 ナンデンシー
アルコール度数:12度
容量 :500ml
価格 :1200円(消費税込1296円)
直売店 :浦添市養蚕絹織物施設サン・シルク1階売店
(浦添市伊奈武瀬1-7-2、TEL:098-943-3469)