3月18日(土)と19日(日)の2日間、うるま市石川嘉手苅の神村酒造においてファン感謝企画である「第12回感謝祭」が開催された。今年も泡盛新聞のレポートのため、3月18日小雨混じりの土曜日に出かけることにした。
昨年は初めてこの感謝祭に参加したため妙に舞い上がってしまい、張り切って試飲を繰り返し、さらに振る舞い酒に興奮してやたらお代わりばかりしてしまった。体験レポートも中盤から記憶はあやふやになり、唯一、録りっぱなしにしていたボイスレコーダーから、記憶を呼び覚ましながらレポート記事をまとめ上げたのである。
そのことを踏まえて、今回は冷静にかつ大人としての行動を心掛け動くことにした。とはいえ、一応、試飲と振る舞い酒は外すことができないので、我社の有能なWEB担当プログラマーでもある、「徹夜明け王子」ことメッカル剛志氏にハンドルキーパーをお願いした。
ちなみにメッカル氏がなぜ「徹夜王子」なのかといえば、本人いわく「WEB関連には緊急の仕事が多く、早急に仕事を終わらすために一晩中作業をすることがよくあり、2日間完徹というのも当たり前なんです」という。そのため仕事を終えると爆睡し、一日中も寝ていることも多々あるために朝は苦手なのだという。なので、早朝の用事があるときは遅れないよう、徹夜で仕事をしてから眠らずに約束の時間に合わせているという。この日は他のメンバーたちと11時に現地で待ち合わせしているため、逆算して朝の9時半にボクを迎えに来てもらったのである。当然、徹夜明けである。
待ち合わせをしている他のメンバーたちとは、昨年、ハンドルキーパーを担当した、黙っていると「怒っているの?」と聞かれてしまう笑顔が意外と可愛い我社の強面主宰、元我社の広報兼渉外兼雑務兼試飲担当泡盛ファン女子大生アルバイト社員からお笑い芸人に転じ、この春に某酒造関連組合の広報活動隊になったひな嬢、県内の泡盛関連イベントにはほとんど顔を出している泡盛イベント帝王の浜ちゃんである。
徹夜明けを心配したが車は順調に9時半過ぎに神村酒造へ向かった。車内にはボク以外に広島県福山市の大学で醸造と発酵を学んでいる、この春に4年生になる息子が同乗。齢21才にして飲みやすい泡盛よりクセのある泡盛が好きという、若き泡盛ジョーグーのエリートだ。っていうか、どうしてこんな子に育ったのだろうか親の顔が見てみたい、と、女房が愚痴をこぼす愚息である。
なんだかんだといっているうちに車は11時前に神村酒造に到着。数分遅れで別働隊も到着。11時から泡盛講座が始まることから、関係者へのあいさつをそこそこにステージ横の会場へと向かう。今回の講師はピアニストで泡盛マイスターの照屋充子氏。テーマは「五感で味わうテイスティング」~泡盛の魅力とマリアージュ~。照屋先生の本業はピアニストで、その傍らで泡盛関連の仕事をしているという。
照屋先生は泡盛を美味しく飲むために、いろいろなタイプの泡盛に合う料理を研究している。講演内容は泡盛の由来や歴史の話からはじまり、古酒の飲みかたや香りの楽しみ方を教えてくれた。古酒の香りにはバニラや昆布、椎茸、はたまたヨーグルトの香りも感じられるという。また、最近の泡盛はいろいろな酵母を使うことで香りや味わいのバリエーションが増えてきて嬉しいと話していた。
また、古酒を飲む時はボトルを逆さにして上と下の層を混ぜることで旨さが変わる話や、空気に触れさせるためボトルで飲むよりカラカラに移して飲んだほうが香りが広がるという話など、酒飲み、あ、違った泡盛マイスターでなければわからない話をしてくれた。そして、料理とのマリアージュでは、泡盛を飲んだ喉の奥の余韻と香りで料理を楽しみたいという。余韻が甘いのなら甘い料理、そしてシャープな味わい、いわゆる塩味がある場合は塩味などが合い、また、香りとのマリアージュも大切だという。
例えば「守禮」はバニラの甘い香りと黒糖系の香り後に、昆布系の香りが立ち上がるのでクーブイリチーやミヌダル、ラフテーなどが合い、イチジクや干し柿といったドライフルーツとの相性もバッチリだという。意外にも黒糖羊羹もよく合うとのこと。「芳醇浪漫」は、松茸や乾燥椎茸などの豊かな香り成分のマツタケオールが通常の10.5倍、バニラ香のバニリンは2倍という謳い文句通り芳醇でエレガントな香りが感じられたため、どんな料理にも合う。おすすめは苦菜と豆腐を使い、アンチョビと生クリームまたは牛乳を加えてアレンジした「苦菜の白和えバーニヤ風」や田芋の味わいと椎茸の香りがピッタリの「ドゥルワカシー」。ポルチーニ茸を使ったパスタやリゾットもよく合い、若い人におすすめだという。
また、「暖流」は森林の爽やかな香りのあとに乳酸系の香りが立ち上がりスモーキーな印象があるため、おすすめは暖流の空き樽の廃材でスモークした県産チーズの「琥珀」。スモーキーな風味のチーズと暖流の甘い味わいがマッチしているという。他にもチョコレートや備長炭で焼いた焼き鳥の塩味などが合うという。やわらかくしたクリームチーズにくだいた黒糖かりんとうとくるみを入れたチーズボールもおすすめだという。泡盛の余韻の味わいと料理のマリアージュを聞いてかなり勉強になったので、今後は、料理との相性をしっかり考えながら飲もうと思った。
講座終了後は100年古酒を目指して「守禮原酒51度」の仕次ぎ式に参加。100年後の古酒を飲むつもりで注いだのだが、あと100年生きるのは無理なので、40年後に100歳になった時に飲めないかなぁ、同行メンバーに聞こえるように呟いたのだけれど、周りのみんなは知らんふりした。
今度は試飲をしようと古酒蔵内の販売コーナーへ向かうと、途中、ふるまい酒を見つけた息子がニコニコと嬉しそうに2人分もらってきた。それを持って販売数量限定品の試飲コーナー(販売コーナーだってば)へ行く。
まず最初は「芳醇浪漫甕貯蔵5年原酒51度」。芳醇酵母の甕貯蔵。旨味とコクがあり香りは酵母の力がまだ残っているので、甕香の良さがまだちゃんと出ていない感じ。とはいえそのままでも充分旨い。でも、もう少し寝かすと大化けしそうな期待が持てる味わい」と思った。念の為にもう2杯ほど試飲した。気がつけば振る舞い酒をチェイサーのように飲んでいる自分がいたことに驚いた。
次は「守禮古酒43度」。この古酒は25年以上前に那覇市松川時代に製造し、ビンで貯蔵した泡盛を200mlビンに詰め替えた商品。「43度とは思えないほどまろやかでコクと旨みがすっと軽やかで味に厚みがあり、ずっと甘い余韻が続いている。25年でこんなに飲みやすく、甕とは違いビン熟成のスッキリ感がある」。
続いて「守禮 仕次ぎ酒47度」。2011年より中国甕で毎年仕次ぎして育てた44度の泡盛に、51度の原酒を仕次ぎして47度になった泡盛。「神村酒造特有の泡盛の甘さと甕貯蔵ならではの甘い香りが立っていて、47度とは思えない飲みやすさがある。」。さらに「守禮10年原酒50度」は蒸留後、加水しないで原酒のまま10年間貯蔵した逸品。熟成した原酒の濃厚な味わいが楽しめるという。「これもバニラの香りが感じられて古酒ならではの甘さがある。濃厚な旨さがあるのに意外とスッキリしている。ノドから鼻に抜ける香りが感じられ、余韻として黒糖の甘さの後に苦味が感じられ、50度とわ思えないまろやかさも感じられた」。
いろいろ飲んでいるうちに感覚が冴えてきたと一瞬思ったが、酔いも自覚しているので、さっきの照屋先生の講座から影響を受けたコメントになってしまった。
さあ、どんどんいってみようと周りを見たら「肉が食いてぇ」といっていた息子が消えている。自由行動なのでかまわず「ご自由に試飲してください」的なコーナーがあったので、立て続けに試飲をする。「芳醇浪漫守禮35度」。一般酒だけど香りがあって、飲み口にややクセ(泡盛好きにはたまらない)があるが甘味が感じられる。「守禮古酒44度」は甘い香りで飲み口にも濃厚な甘さがある。「暖流古酒40度」は40度とは思えない華やかな甘い香りとまろやかな口あたりで3度ほど試飲してしまった。定番の「守禮30度」と「暖流30度」。樽とステンレス貯蔵の違いがはっきりわかるけれど、どちらも安定した美味しさがあった。
塩気のものが欲しくなり奥を見ると、南城市で県産生乳を使い、黒麹や県産ハーブでチーズを作っている「ザ・チーズガイ」のジョンさんがチーズの試食販売をしていた。数種類のチーズを試食するとこれが旨い、どれも泡盛との相性もよさそうである。チーズの試食と試飲を済ませ外に出てみると、息子が出店コーナーのBONESでチキンの丸焼きを購入してかぶりついていた。
振る舞い酒を飲みつつ懐かしいフォークソングのライブを楽しんでいると、別働隊は別件があるので一足先に帰っていった。エイサーの演舞やフラダンスなどステージを楽しみ、チキンを食べ終えた頃にはお酒もいい感じで回り、お腹もいっぱいになり感謝祭を充分堪能した。そして酒造所のスタッフにあいさつをして、車で仮眠をとっていたハンドルキーパーのメッカル氏の運転で帰途についたのであった。