試飲試飲で何故かへべれけに…。
11月13日、嘉手納町で「かでな社交業泡盛まつり」があるというので、出かけてきた。この日は「金曜日の13日」なので、朝、女房に「今日は13日の金曜日だよ」と言ったら「それがどうしたの」と全く相手にされず、何とな
く気分が落ち込んでいた。
しかし、泡盛まつりが行われる嘉手納ロータリー広場に着くと、飲む前から気分がハイになってきた。あ、違った。今回は「飲む」のではなく、あくまでも「試飲」をするんだった。
今回、泡盛まつりに協賛している酒造所は神村酒造(うるま市)、菊之露酒造(宮古島市)、金武酒造(金武町)、久米島の久米仙(久米島町)、崎山酒造(金武町)、新里酒造(沖縄市)、玉那覇酒造(石垣市)、多良川酒造(宮古島市)、北谷長老酒造(北谷町)、今帰仁酒造(今帰仁村)、比嘉酒造(読谷村)、瑞穂酒造(那覇市)の12社。その酒造所おすすめのお酒が試飲できるのが楽しみである。
そんなわけで受付で試飲料金の500円を払い、手に泡盛まつりのリストバンドを巻いて試飲用のコップを貰い心の準備も整えた。会場に着いたのは17時15分、まつりの開始は17時30分からで少し時間があったので、各酒造所のブースにあいさつ巡りを行った。各ブースでは試飲用のお酒の準備で忙しそうだったが、手を動かしながらも「泡盛新聞」のあいさつを受けてくれた。参加者の中にはフライングで試飲をスタートしている人もいて、まつり開始同時にすでに出来上がった人もいたほどである。
酒造所の各ブースにあいさつしている間、ステージでは嘉手納社交飲食業組合の阿嘉武士組合長の開会のあいさつで幕が開け、字水釜向上会カラオケサークルによる泡盛の歌の熱唱、當山宏嘉手納町長あいさつ、沖縄県社交飲食業生活衛生同業組合玉城哲栄理事長あいさつ、嘉手納町商工会新垣剛副会長の乾杯の音頭があったようだが、ほとんど聞いていなかった。
ただ、ステージと会場の「かんぱ~い」の音頭でステージを見ると、2015年度泡盛の女王大城美憂さんが登場しているところだった。大城さんは「ハイターイ、グスーヨーチュウウガナビラ(みなさんこんばんは、ご機嫌いかがですか)。ワンや2015年度泡盛の女王、大城美憂ヤイビーン。ユタサルグトゥウニゲーサビラ(よろしくお願いします)」と、ウチナー口であいさつしたあと、「泡盛は600年以上の歴史を持つ日本最古の蒸留酒です。琉球王国時代から受け継がれた伝統あるお酒です。現在は低カロリーで糖分もなく健康に良いと注目されていますが、しかし、若い世代には泡盛離れがすすでおり、そこで私からここにお集まりのお兄さま、お姉さまがたにお願いがあります。皆様のお子様やお孫様、お友達に泡盛のことをもっとお話ください。そしてできれば一緒に飲む機会も作ってもらいたいと思います。これからも沖縄の歴史のお酒をご愛顧ください。」と語った。
ちなみに大城さんに「他の2人の泡盛の女王は今日はどこにいるの」と聞いたところ、「今日は北海道で泡盛のPR活動を行っています。今頃はカニを食べているかも」と淋しそうに笑った。ボクは「北海道でカニが食べたかったですか?」と聞くと、「私は嘉手納町出身なので地元で泡盛の活動ができるので、残念だけど地元での活動が大切なので…」と笑顔で答えた。さすが泡盛の女王。地元を大切にする気持ちが大事なんだよな、と思いながら頑張っている大城さんを、今日は応援しようと思った。
とりあえず、そんなわけで、まず最初に石垣島・玉那覇酒造所の「玉の露」を試飲。甘みがあってコクがあり飲み口は爽やかで、一般酒とは思えない美味しさだった。
続いて多良川酒造。「長期熟成古酒久遠」を「試飲なので少しだけ」といったのにも関わらず、担当者が氷を入れてコップになみなみと注いだロックを渡された。それを飲んでしまうとやばいなぁ、と思いながらも口に含むと馥郁たる香りで甘味もあり、思わず全部飲んでしまった。続いて「琉球王朝」を水割りで試飲。「久遠」とはまた違った旨い味わいが楽しめた。
それから金武酒造で「古酒ゴールド龍25度」、瑞穂酒造では「熟成3年古酒30度」を少しづつ試飲。さらに口直しに県産の山城紅茶を使った紅茶リキュール梅酒の「琉球ティーアワー」を試飲した。紅茶の香りと梅酒の味わいに泡盛の深みがマッチしていて、しばし、泡盛の試飲のブレイクタイムという感じだった。
それから久米島の久米仙の「久米線ブラック古酒30度」を試飲、新里酒造では「珈琲泡盛」と「琉球ゴールド古酒ブレンド30度」を試飲。どれも美味しく泡盛はいい酒だとつくづく実感。もちろん、一気に飲んだのではなく、1杯につき10分くらいは時間をかけてのだが、
だんだん気持ちが大きくなり、試飲の量を増やそうかなと思い神村酒造「暖流」、菊之露酒造「菊之露V.I.P」とはしご。ん!?はしご?。別に飲み屋を回っているわけではないのだけど、なんとなくいろいろ飲んでいるうちに、まるではしご酒をしている気分にになっていた。
このままでは酔いが回ってしまうと思ったので、目の前でブルーシートの上にテーブルを置いてオードブルを囲んだ集団がいたので「ブルーシートはもとから敷かれていたんですか」と声をかけると、「早めに来てシートを敷いて場所を確保したんだよ」と返答。
そしてその中の1人が「お兄さん、見たことがあるけど、沖縄そばとか書いている人だよね」という。ボクは「ハイ」と答え、「今は泡盛の新聞を書いてます」と泡盛新聞を宣伝すると、「じゃぁ、一緒に飲もう」と誘ってくれた。
ボクは根が嫌いじゃないもんだから素直に席について、みんなにいろいろ聞いてみた。「泡盛まつりはよく来るの」と質問すると、初めての人と2度目、3度目の人がいた。嘉手納の住人は一人だけで、その一人が嘉手納町南区の区長さんをしており、この集団はその区長さんの高校時代の同級生だという。
年齢は50代後半で、泡盛について聞いてみると、学生時代はウィスキーやバーボンばかりで、泡盛はオヤジの飲む酒であまり飲まなかったという。しかし、20代前半に泡盛のマイルド化が始まり、そこから泡盛を飲むようになり、今では浮気はするけど何よりも泡盛が一番だという。
しかし、「泡盛をあまり飲まない今の若い人たちというのは、50代の人たちの子ども世代なんですよね」というと、「あ、そうか。自分たちはいろいろな酒を飲んで20代で泡盛を見直して飲み始めたけど、今の若い人たちに泡盛の魅力が伝わっていないんだなぁ」と答えた。
「泡盛の女王がいったように、親の世代が娘や息子と一緒に泡盛を飲むようになると、泡盛の魅力を知るようになるんですけど」というと、「なるほど、オジさんばかり集まって飲むよりも、若い人と一緒に飲むことも大事なんだね」と答えた。
それからみんながボクと同世代なので話がやたらと弾み、試飲のコップが次から次へとはこばれてきた。このままおしゃべりしておこうかな、と思ったけれど、ボクにはレポートを続行する使命が残っており、最後に「これからは若い人たちと一緒に泡盛を飲みましょう。カンパーイ」といって席を離れた。
一体どのくらい試飲をしたんかわからなくなったので、まだ回ってない今帰仁酒造の「千年の響き」、比嘉酒造の「残波古酒」と試飲した。これ以上試飲したら取材もおぼつかないと本部席へ行き、このまつりの趣旨を嘉手納社交飲食業組合事務局町の知念ひさ子さんに聞いた。
「このまつりを始めたのは、地元客が北谷や読谷に流れて嘉手納の飲食業は元気がなくなっていたので、元気づけようと思って企画。最初は商店街の駐車場で協賛酒造所も5社からスタートしました。そして2年目、3年目と続けていくうちに地元の人も戻ってきて、地域の活性化にもつながりました。酒造所も喜んでくれるのも嬉しいです。また、町内のお店36店舗がそれぞれの酒造所メーカーのキャンペーンもやっており、まつりが終わってもお目当てのお酒が飲めるようになっています」という。
嘉手納町商工会の経営指導員の本永学さんは「嘉手納町には泡盛メーカーがないんですよね。逆にそれでこのようなイベントができるんではないかと思います。嘉手納は位置的にも中部のいいところにありますから。今年から観光客にも知ってもらえるようネットでも宣伝したんです。それで知って東京から来てくれたお客様もいました。それが広がっていけばと思います」。
まつりには地元だけではなく周辺の市町村や県外からも老若男女が集まり、心から泡盛を楽しんでいるのが感じられた。ボクは取材も終えると、最後に松藤酒造の「黒の松藤」、北谷長老酒造の「北谷長老」をコップ一杯ずつ注いでもらい、、ヘロヘロになりながらレポートを終了したのであった。
(嘉手川学)