泡盛のほんの一面を切り取った時、そこには和のハードリカーとして責務がある。
昨年の10月ごろ、首里のある蔵で、数名の技術者が洋酒と泡盛を飲み比べる風景に出くわした。
並んでいたのは、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラなどのホワイトリカーと琉球泡盛であった。
よくよく考えると、泡盛と他のホワイトリカーを並べて飲み比べたことなどない。じゃまを承知で、試飲させていただいた。
すると、ウォッカ、ジン、ラム、テキーラは意外にもすっと喉を通り、その際度数が強いながらもアルコールの甘みを感じる。一方泡盛は、いったん口に含んで、それから飲み込む作業を繰り返すイメージ。
それが泡盛の醍醐味でもあるのだが、他のホワイトリカーに比べ、オイリーで、かなり”重たい”のである。
ホワイトボードには「King of White」の文字が確認できたが、技術者たちの思考を汚すまいと、深くは関わらずに蔵を出た。日がどっぷりと落ち、外は真っ暗だったことを覚えている。
今年の7月、泡盛蔵の技術者が集う交流会に参加した。その時は「3回蒸留」という言葉が飛び交っていた。すでに数社が試作品を製造しており、互いの製品に対する意見を交わしていた。
先月ある蔵の技術者が、泡盛を3回蒸留することのメリットを香りのバンドの分かりやすさで説明していた。
そもそも、黒麹菌を使い、もろみの力が強い泡盛は、1回の蒸留でアルコール度数が50度以上の原酒を造ることができ、それ以上の蒸留を必要としていない。
しかしながら、”仮に”世界に流通するホワイトリカーの持つキレの良さ、すっきり感を是とするならば、複数回蒸留することで、重たい成分の一部を切り離すことがその答えの一つとなる。
そして、そのトレードオフとして得られた利点は、香味が変化し続ける蒸留液のどこを取り出しブレンドするかの選択機会が2回、3回と広がったこと、また、初回にくらべ、2回目、3回目の蒸留液の方が、時間毎の香味の変化が分かりやすいというのだ。
日本の技術者の執念とはすさまじいもので、ウイスキーという洋酒を完全に自分のものにし、ジャパニーズウイスキーという新たな分野を確立し、世界中のハードリカーファンをうならせている。
そんな世界のハードリカーファンが、それでは、、、と、日本の、和のハードリカーを求め始めた時、その全責任は我が琉球泡盛が背負わなければならないだろう。
ブラウンリカーのような”余韻”がお好きであれば、泡盛の古酒をどうぞ。ホワイトリカーのような”キレ”がお好みであれば、こちらはいかがでしょう?
令和元年10月16日(水)、県庁で行われた、新製法泡盛”尚(SHO)”の記者発表会には、12の蔵の若き技術者が集い、世界のリカーファンへの十分なおもてなしの準備が整ったことが宣言された。
「ようこそ、日本のハードリカーへ。」
尚は、10月25日(金)、奥武山公園(那覇市)で開催される”第43回沖縄の産業まつり”から、やんばる酒造、ヘリオス酒造、金武酒造、崎山酒造廠、神村酒造、瑞穂酒造、瑞泉酒造、石川酒造場、まさひろ酒造、米島酒造、請福酒造、八重泉酒造よりそれぞれ発売される。
(文・写/二代目預)