“Awamori”は世界の共通語になれるか(文・沼田まどか)
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[公開・発行日] 2018/06/04
[ 最終更新日 ] 2018/06/12 - 飲む
去る3月7日(水)に、香港にあるSake Centralという商業施設で、沖縄県香港事務所主催の泡盛試飲会が開催された。イベントは地元の飲食業界関係者向け「招待制」泡盛セミナーと、一般消費者向けの泡盛試飲会という二部構成。
会場となったSake Centralは非常にユニークな施設で、日本産の酒類や小物を販売するだけではなく、工芸品を含む日本各地の特産品をPRするパビリオンや、やけにお洒落な舞台袖(そで)といった感じの酒バーも併設している。これらのスペースを顧客のニーズに合わせて活用し、定期的に日本のお酒のセミナーやディナーイベントも開催するこれまでにありそうでなかった場所だ。
この日は、Sake Centralの共同経営者であり、日本酒造青年協議会が叙任する「酒サムライ」のエリオット・フェーバー氏が講師となって、泡盛とは何ぞや?という基礎知識から、他の酒類との比較を交えた泡盛セミナーを英語で行った。その場に招待された12名の飲食系ジャーナリストや飲食店関係者の中には、初めて泡盛を口にしたという参加者も3名見られた。
他のアジア地域と比較すると、香港に輸入されている泡盛の銘柄数は圧倒的に多い。日系小売店の酒売り場には、沖縄でも馴染みのある「琉球泡盛」がずらりと並んでいる。それなのに、沖縄からの輸出量はちっとも増える気配がない。何気なく商品を手に取ってみれば、陳列されたであろう時から、着々と古酒化が進んでいるものも少なくない(意外なお宝が見つかるかもしれない)。
選ばれた飲食業界のプロでさえ泡盛を口にしたことがないのであれば、地元の一般消費者が泡盛を飲んだことがなくても不思議ではない。では、一般消費者に泡盛を知ってもらい、美味しく飲んでもらう機会を増やすにはどうすればよいだろう?
「日本の南にある沖縄という島で飲まれているアルコールが強い酒」というボンヤリとした認識を「沖縄ならではの歴史と文化を持つ特別な地酒」として、地元で通じる言葉で伝えられる人材を育てることができれば、今よりもっと多くの人に関心を持ってもらえるのではないだろうか。
「Sake」だけでなく「Nihonshu」も、グーグルで検索すればヒットする時代だ(「Awamori」もヒットはする。念のため)。その土地の言葉で泡盛の魅力を伝えられる人材が増えれば、世界中の呑兵衛が泡盛に目覚める日が近づくかもしれない。
ちなみに、セミナーの中では、残波白、残波5年古酒、沈黙(1991年)、暖流のブラインドテイスティング(すべて常温のストレートで提供)も行われた。舌の肥えたプロ達から最も多くの支持を集めたのは、沖縄でも商品価値の高い、石川酒造の「沈黙1991」だった。
(文・沼田まどか)