逸材探訪 ~鑑定官が若き匠に聞く~(崎山酒造廠編)
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[公開・発行日] 2017/06/19
[ 最終更新日 ] 2018/06/06 - 飲む
津波:工夫というわけではありませんが、櫂入れ棒などの道具を自分専用に作ったりしています。
平良:ちっちゃいのがあります。
小濱:分析なども皆さんでやるのですか?
津波:分析も全員できます。工程全部に携われるので、学校で習ったことなども現場ですぐにより深く理解できました。様ざまなデータを何のためにとっているのか、ここがこうなれば最終的にここに影響が出るみたいなことを、実感できました。
小濱:意味を理解しながら作業することはとても大切なことですよね。
比嘉:特にうちの場合、先代や社長の教えでもあるんですけど、器具での測定だけではなく、実際目で見て、送風の音を聞いて、匂いを嗅いで、手で触って、肌で感じて、味見して、全てを判断材料にしてみんなで話し合うことを大切にしているんですよ。
扱いにしても、特に麹は生き物なので、”我が子のように思えよ”と教えられます。まわりが暑かったらどうする?熱を出したらどうする?自分の子供に置き換えて考えなさいと。
そうやって、心構えから技術の細かなところまで全部先輩方が教えてくれるんです。
小濱:すばらしいですね、情報、技術の伝達が従業員間でなされることはとても大切なことです。特定の人がいなくなったら造りがおかしくなってしまうようではいけませんからね。
比嘉:その点崎山酒造は、常に先輩方も、社長もみんなで考えてやっている感じです。
小濱:なるほどチーム力が高いというわけですね。
比嘉:飲ミニケーションを含め社長とか先輩方にも気兼ねなく話せる状況です。
小濱:社長さんを含めみんなで飲みにいったりするんですね。
比嘉:はい。そういう時に、お酒の話になって、“こうしたほうがいいんじゃないか”、“ああした方がいいんじゃないか”ってできるのが、好きだなーというのがありますね。みんなで挑戦することをやめないといいますか。より美味しい泡盛をつくるために、いいアイデアがあったらどんどんやってみよう!という雰囲気があります。いいと思ったことを止められたことがないですね。
平良:まずやってみて結果を見よう!という雰囲気はありますよね。
比嘉:だから自分たちの中に、失敗という言葉はあまりないように思います。どんな結果であっても、それを次に活かすことができればそれは失敗じゃないといいますか、そういうのが自分の考えというよりも先輩方からの教えとしてありますね。
平良:崎山酒造の面白いところだと思います。私も飲みに行ったとき、“こうやったほうがなんかいいんじゃないか?”“こうもできるんじゃないか?”という意見を言ったとき、社長も専務も工場長も絶対ダメとは言わないんですよ。まずは小ロットでやってごらんと。
うちは三角棚も4つあって、これが全部動くし、ドラムも二つ両サイドにあって、一度蒸し、二度蒸し、二日麹、三日麹などこれまでもいろいろと細かなアイデアまで実践できてきて、ほんとうに面白いなと思うんです。
好きな言葉というわけではありませんが、メンバーの合言葉があるんです。「やるのか?やらんのか?」「行動に移すか?移さないのか?」「できないんじゃなくて、やるんだよ」みたいな。
一同:笑い
小濱:意味合いが変わってきますからね。
平良:“できないんじゃない、やろう”という意味の合言葉ですね。
比嘉:どうしても弱気になったりする時があるじゃないですか?そんな時は聞こえてくるんですよ。
平良:「どうするの?」
比嘉:「やる?やらん?やるよな」みたいな。
一同:笑い
津波:そういう感じなんです。
平良:メンバーでみんなでやっている時の合い言葉になっていて。合言葉でも楽しいなーと思いますね。自由というわけではないですけど、やりたいことをやらせてもらえる感じ、うちの特徴かもしれません。
小濱:メーカーによっては、規模的な問題もあり作業がルーチン化していたり、役職をまたいで社長に直訴なんてできない関係性のところもありますからね。“こうやってみよう”と工場長や経営者に言って“それいいね”という話になるならすごくうらやましい関係ですね。
比嘉:聞いた話では、なかなかそうできないところもあるみたいですがそうなんですかね?
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