沖縄と香港をつなぐ「泡盛サロン」始動(香港/文・沼田まどか)
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[公開・発行日] 2017/12/06
[ 最終更新日 ] 2018/01/09 - 飲む
今年の始め、香港のとあるお洒落な居酒屋で泡盛ベースのカクテルを頼んだ際に、芋焼酎の味がする飲み物が出てきた。おかしいと思いバースタッフに確認したところ、実は、泡盛を切らしていて焼酎で代用した、と白状したのだ。
香港には1,000軒を超える日本食料理店があるが、泡盛ベースのカクテルを出す店は多くない。おそらく、このお店のスタッフは泡盛とイモ焼酎の味を知らなかったのではないだろうか。明らかに風味が異なるので、一度でも飲み比べた経験があれば「代用可能ナリ」という判断にはならないと思う。彼らに焼酎や泡盛の商品知識が十分にあれば、このようなアクシデントに見舞われることはなかっただろう。
酒類に限ったことではないが、外国で商品の販路開拓をする際には教育とセットになっていることが鍵だとつくづく思う。世界各地でWSET(Wine & Spirit Education Trust)やSSI(SAKE SERVICE INSTITUTE)が大きな役割を果たしていることは、現地での日本酒人気を見れば明らかだ。泡盛業界も、売上が伸びないと嘆く前に、海外市場での教育活動にもっと力を注いだほうがよい。せっかくメニューに載っていても、出てくる中身が別のものではどうにもならない。
教育との関連性は薄いが、泡盛の輸出拡大を考える際に、沖縄から泡盛の魅力を発信するだけではなく、輸出先の人々の泡盛に対する受け止め方を沖縄にフィードバックしたいという思いから、沖縄県の協力を得て今年の10月26日に香港で「泡盛サロン」という活動を立ち上げた。
初回は、現地の飲食業界のプロたちにご協力いただいて、香港で一般的に手に入れることができる泡盛と広東料理の相性を探る、というイベントを開催。会場は、地元で人気の広東料理店「Kin’s Kitchen(湾仔)」を予約し、参加者には泡盛のテイスティングで印象をつかんでもらったうえで、相性がよいと思われる料理を合わせてもらった。
用意した泡盛は、(泡盛新聞主催の泡盛コンテストで常に上位にランクインする)比嘉酒造の「残波ブラック30度」、神村酒造の「暖流30度」、瑞泉酒造の「瑞泉 青龍3年古酒30度」、石川酒造の「玉友 甕仕込み 5年古酒 30度」。加えて、沖縄県香港事務所からの差し入れ「海乃邦 10年古酒 43度(日本国内仕様)」。当日は、現地で活躍するフードジャーナリストを始め、グルメ雑誌の編集者やワイン評論家、大手小売店の購買部代表など、舌の肥えたメンバーに、泡盛についてざっくばらんに語ってもらった。
今回は、泡盛をストレートで試飲した後に料理を合わせたためか、クセの強い魚介の内蔵を用いた料理や、濃厚なソースを使った料理がずらりと並んだ。
編集者の張氏いわく、「蒸留酒ならではのキレの良さとパンチを生かし、飲みながら味覚をリセットする感覚で料理を選んだ」とのこと。飲食店PRのジャスティーンさんは「私が勤める店でも泡盛を提供しているが、中華と合わせるのは初めてでとても新鮮」とにっこり。「料理との相性を考えると、口当たりがマイルドで米の旨味を感じる瑞泉は合わせやすい」とはフードジャーナリストのジャニスさんのコメント。お米でできたお酒はアジア人の舌にもよく馴染むようだ。
一方で、「個性的な風味を楽しむためには、料理に合わせるよりも、泡盛だけで味わう方が向いているのではないか」という提案や、「初めて泡盛を飲む人にはアルコールが強すぎるので、飲み方を教えることが先決だ」という意見もあった。今回のイベントに参加いただいた沖縄県香港事務所の税所所長は「泡盛は沖縄の伝統文化の1つで、沖縄特有のもの。まず沖縄に来る香港の方に泡盛を楽しんでもらい、そして、香港でも飲んでもらうという流れを作りたい」と語る。
次回の「泡盛サロン」は2018年1月下旬に開催予定だ。
※写真(料理)は、上から「虎掌菌五花■(月に南)」「鳳凰■(火に局)魚腸」。
(文・アジア局長 沼田まどか)