仕次ぎで子孫につなぐ、百年古酒(山原島酒之会・今帰仁酒造/文 沼田まどか)

  • [公開・発行日] 2017/11/06
    [ 最終更新日 ] 2017/11/21
   

沖縄に住むようになってから、ずっと憧れていることがある。それは、他でもない、昔ながらの甕を使って自宅で古酒(クース)を育てること。手塩にかけて作った古酒は、さぞかし美味しいにちがいない。

2017_11-06_stir awamori-and-store-for-100-years01平成29年10月21日(土)の午後に、「美しき古里」でお馴染みの今帰仁酒造で、山原島酒之会による「泡盛古酒を育てる講習会」が開催された。大型台風の影響で突発的な大雨が降る中、会場には外国人1名を含む約30名が集まった。今帰仁酒造の蔵人による酒造所案内で泡盛の造り方をおさらいしたあと、山原島酒之会の島袋正敏顧問から仕次古酒造りの奥義を学ぶ。

年数の古いものに新しいものを足してアルコール成分を活性化させ、熟成を促す方法は、一般的にはシェリー酒の「ソレラシステム」や、泡盛の「仕次ぎ」として知られている(一部のラムやウイスキーでもソレラシステムを導入しているものがある)。今も昔も、酒を原料から造るには相応の免許が必要だが、購入したお酒を仕次ぎすることで自分流に「育てる」というのは泡盛ならではの文化だ。百年先を見据えて子孫につなぐ、という思想を具体的に表すものが泡盛仕次古酒だとすると、家庭で育てる仕次古酒はその家の遺伝子とも言えるのではないだろうか。

2017_11-06_stir awamori-and-store-for-100-years021998年に発足した「山原島酒之会」は、「すべての家庭の床の間に古酒甕(クースガーミ)を」をテーマに、泡盛古酒の魅力を伝える活動を県内各地で地道に行っておられる文化継承団体だ。「酒を介して酔いを楽しむ」と語る講師陣のお話はすこぶる面白く、予定していた1時間は瞬く間に過ぎてしまった。

 

肝心の、良質な古酒を育てるにあたっては、いくつかのポイントがあることを教わった。まず、指ではじいた際にコーンと高く澄んだ音の出る良く引き締まった甕を選ぶこと。納得のいく甕が準備できたら、次は洗浄。土由来の匂いが泡盛に移らないように、甕に水を溜めては捨てる、という作業を何度か繰り返す。匂いが気にならなくなったら、いよいよ泡盛を甕に注ぐ。その際あたりに飛び散らないように、瓶の口を逆さにして、口を片手で固定したまま、瓶の底が勢いよく円を描くように回しながら注ぐのがコツだそうだ。最後に、清潔な布巾やキッチンペーパーで甕の口をぬぐい、口にセロファン紙をかぶせ蓋をする。蓋からはみ出したセロファン紙の周りを伸縮性のあるチューブでぐるぐる巻きにして密閉する。これで、親酒の完成。

2017_11-06_stir awamori-and-store-for-100-years03泡盛は、寝かせてから7年目で何もしなければ熟成が鈍化する傾向があるという。つまり、仕次ぎのタイミングは親酒の蒸留年から7年目が目安。ただし、親酒の用意ができたら、仕次ぎをせずとも、年に1度くらいは蓋を開けて異変がないか確認するほうがよいだろう。

特に、カビの発生とアルコールの揮発(量の急減)に要注意だ。熟成7年目以降は、毎年仕次ぎをしてもよいし、何年か間を空けてもよいそうだ。また、中身をひとつの酒質に絞るか、複数の酒質の泡盛をブレンドするかはあなた次第。つまり、レシピの数は無限大、一度の人生ではとても作りきれない。

山原島酒之会の崎浜会長がおっしゃるには、「飲む泡盛と育てる泡盛は別物」。あれこれ迷わず腹をくくり、まずはいい甕を買いに行こう。

(文/沼田まどか)

 

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