泡盛製造業振興策提言書を検討委員会が提出

  • [公開・発行日] 2016/03/25
    [ 最終更新日 ] 2016/03/26
   

2016_3-15_awamori-manufacturing-industry-promotion-measures-proposal-book_submitted-to-the-okinawa-prefecture-chamber-of-Labor-director_zentai沖縄県が設置した泡盛製造業等振興策検討委員会(下地芳郎委員長)は、3月15日県庁商工労働部部長室に下地明和商工労働部長を尋ね、泡盛振興に向けた提言書(泡盛製造業振興策提言書)を手渡した。

27ページからなる提言書には、低迷する泡盛消費を打開するために必要と思われる施策が列挙された。泡盛製造業振興のために「○○が必要である」と締めくくられた提言だけでもその数300以上。

中には「古酒のブランド化を必要」としながらも「リキュールを柱に据える必要性」が説かれたり、「業界、県民一丸となった取組が必要」としならがらも検討会に参加した「特定の団体との積極的な協力が必要」などその効果が相反しかねない提言も散見される。

具体策も少なく、総花的な内容となった今回の提言は、泡盛製造業振興の難しさの裏返しでもある。

提言書は5回の検討委員会、3回のワークショップ、消費者アンケート調査、泡盛メーカー・流通業者等へのヒアリング調査等を経て検討委員会により制作、提出された。
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以下、主な提言(泡盛製造業振興策提言書より抜粋)

1.泡盛業界の振興に向けた「泡盛振興協議会(仮称)」の設置

泡盛業界を取り巻く経営環境は、消費者嗜好の多様化や若者のアルコール離れ(泡盛離れ)、他酒類の台頭などにより、出荷数量が10年連続で減少し、大変厳しい状況にある。

泡盛業界としては、これまで行政の支援等を受けながら、県外でのプロモーションや商談会等に積極的に取り組んできたところであるが、その効果は思うように数値に現れていないのが現状である。泡盛業界の置かれた状況は、業界のみの取組では改善が困難なほど極めて深刻な状況にあると言える。

このような厳しい状況にある泡盛業界の振興を図っていくためには、業界一丸となった取組はもとより、関係機関等と連携した取組を推進し、県民の理解と支持を得ながら、振興策を継続的に実施していくことが必要である。

そのため4製造、流通、小売などの関係機関や、消費者、行政等からなる推進体制を構築し、振興策の実効性と評価・検証の確保、サポート体制の確立等を図っていくことが必要である。

(1)「泡盛振興協議会(仮称)」の設置

・幅広い関係機関等で構成する「泡盛振興協議会(仮称)」を設置し、振興策の実行性やサポート体制の確立等を図っていくことが必要である。
※構成員:製造、流通、小売、観光、農業、大学、消費者、行政等
役割:具体的な施策の検討,実施、振興策の進捗確認。評価、助言等のサポート、その他振興策の実行性。効果を高める取組等

(2)異業種等との連携の推進

・各泡盛メーカーの取組の強化や業界一丸となった取組はもとより、流通、小売、観光、農業など、異業種と連携した取組の推進が必要である。

(3)県民の意識啓発等の推進

・沖縄県の重要な産業・文化である泡盛を県民が愛用し、県民全体で振興していく機運づくりが必要である。
・泡盛推奨月間の設定や大型イベントの開催、泡盛の日・古酒の日の取組など、一年を通した振興策に取り組むことが必要である。
・国、県、市町村(特に泡盛製造所在)の各種酒宴を伴うイベントにおいて、「泡盛でカンパイ! 」を普及することが必要である。

(4)「泡盛体験館(仮称)」の設置検討

・泡盛の歴史。文化。製造等の紹介、泡盛の全銘柄の展示、試飲体験等を目的とした「泡盛体験館(仮称)」の検討が必要である。

2.泡盛業界の「経営及び取組の透明化」の推進

泡盛業界は、出荷拡大等に向けた成長戦略を策定し、新商品開発や販路拡大、PR活動の強化などに取り組んでいるが、その取組や効果等の実態は、外部から分かりにくいのが現状である。

今後、泡盛業界の振興に向けて、業界一丸となった取組を推進するとともに、関係機関等で組織する「推進体制」のもとで振興策の実効性を高めていくためには、業界の経営及び取組の透明化が求められる。

また、復帰特別措置として酒税の軽減措置を受ける泡盛業界においては、自立化に向けた施策に積極的に取り組むことが必要であり、消費者や県民の理解を得ながら、郷土の誇りとして、多くの県民から愛される存在であり続けることが期待されている。

今後、泡盛業界の振興を沖縄の産業・文化の発展の観点から県民全体で考え支えていくためにも、業界の経営及び取組の透明化の推進が必要である。

(1)泡盛業界の経営及び取組の透明化

・泡盛業界の振興に当たっては、業界の現状把握や具体的な対策を検討するための環境整備が必要である。
・「泡盛振興協議会(仮称)」を設置し4振興策の検証・評価等を行っていくためには、各泡盛メーカーの取組状況等の把握が必要である。
・酒税軽減が措置される中で業界の自立化に向けた取組の強化が求められていることを認識し、関係機関等との連携・協力に取り組むことが必要である。
・県民の理解や支持を得ながら振興策を実施していくことが重要であり、泡盛業界の経営及び取組の透明化に業界全体で取り組むことが必要である。

(2)経営改善に向けた取組

・専門家による経営診断やマーケティングの強化等による経営効率化に取り組むことが必要である。
.過剰な廉売による企業体力の消耗が懸念されるため、製造業者、卸売酒販業者及び小売酒販業者において、適正価格による取引を行うことにより、企業体力の向上及び収益率向上に取り組む必要がある。
・コモディティ化による価格競争を避け利益率を上げていくためには、ブランド戦略を明確にすることが必要である。
・沖縄公庫の融資制度等の効果的な活用や金融支援の充実を図っていくことが必要である。
・泡盛の銘柄が多く、消費者に商品の特性を伝えきれていないため、絞り込みを行うなど、効率化が必要である。
・輸送コストの改善、容器。包装資材の共同購入など、適正な利益の確保に向けた取組が必要である。
・零細な事業者が多く設備更新が十分に行えないことから、設備更新への助成制度等が必要である。
・労働環境の整備・改善、営業担当の育成強化など、専門人材の確保策に取り組むことが必要である。

3.泡盛製造事業者の「企業特性」に応じた取組の推進

泡盛業界は、47酒造所のうち、19酒造所(約4割)が離島地域(伊平屋島、伊是名島、久米島、宮古島、,石垣島、波照間島、与那国島)に所在するなど、県内の各地域に散在し、それぞれ異なった経営環境・条件の中で事業展開を行っている。

また、各酒造所の出荷数量の規模も50KL未満の酒造所から1000KL以上の酒造所まで大きく異なり、その経営展開方針も、域内中心の酒造所から県外・海外展開に力を入れる酒造所まで様々である。

そのため篭泡盛業界をより効果的に振興していくためには、それぞれの企業特性に応じた振興策を展開していくことが必要である。特に、離島地域の小規模メーカーは、経営環境が厳しいため、地元自治体との連携等により、地域の実情に合った対策が必要である。

県が実施する泡盛関係補助事業においても、各酒造所の企業特性を把握し、それに応じた支援策を実施していくことが必要である。

(1)企業特性に応じた取組

・地元自治体においては、離島から本島への共同輸送コストへの補助など、地元酒造所の振興に向けた支援策に積極的に取り組むことが必要である。
・「古酒の郷」事業を推進し、原酒買取の増加を図るなど、小規模メーカーの出荷拡大に繋げていく必要がある。
・設備更新が十分に行えず生産性にも影響していることから、設備更新への助成制度等が必要である。
・技術強化や経営基盤強化を図るため、技術講習や経営コンサルタントの派遣等が必要である。
・県外での展示会・商談会参加に対する助成制度等が必要である。
・通信販売の促進等のため、流通拠点となる共同倉庫の整備等が必要である。
・離島の泡盛メーカーに対し、輸送コストへの助成制度、県内外でのイベント開催に係る輸送費助成制度等が必要である。
・業界全体を牽引するリーディング企業を育成し、泡盛業界全体の底上げを図ることが必要である。
・マーケティングの強化を図叺県外消費者のニーズを踏まえた県外出荷拡大の取組を強化していくことが必要である。
・沖縄県酒造協同組合の「紺碧」や「海乃邦」など、泡盛全体を牽引するリーディング商品(銘柄)を開発し、業界一丸となって取り組むことが必要である。
・企業特性に応じた市場開拓の方針を明確にし、新たな市場として海外市場にも取り組んでいくことが必要である。

(2)具体的な取組の検討

・企業の特性に応じた取組については、「泡盛振興協議会(仮称)」等において、その具体的な内容を検討していくことが必要である。

4.「消費者嗜好の多様化」に対する適切かつ迅速な対応

泡盛の出荷数量が減少している要因の一つとして、「消費者嗜好の多様化」が指摘されている。量販店や業務店においては、ビールや清酒、焼酎のほか、発泡酒、第三のビール、ワイン、酎ハイ、カクテル、低アルコール酒、機能性酒類など、多くの酒類が並んでいる。

このような状況の中で、今後、泡盛の出荷拡大を図っていくためには、当該「消費者嗜好の多様化」に適切に対応し、消費者のニーズを踏まえた商品開発、販売促進、情報発信等に取り組むことが必要である。

そのため、県内外の消費者ニーズの違いや、他酒類との差別化等を考慮しつつ、以下の取組を推進する必要がある。

(1)商品開発

・県内。県外高海外の消費者ニーズを的確に把握し、それぞれのニーズに対応した商品開発(古酒、一般酒、リキュール、低度数、高度数など)が必要である。
・県産果樹等を使った泡盛リキュールの開発など、若者や女性のニーズを踏まえた商品開発が必要である(6次産業化の促進にも繋がる)。
・「低アルコール」で「飲みやすい」泡盛の開発強化が必要である。
・女性の酒類消費量は減っていないことから、女性向けの商品開発や女子会等でもお酒落に飲めるボトル・ラベルの開発が必要である。
・伝統的な手法を守るだけでなく、酵母の開発等を進め、「新しい味わいの泡盛」を開発していくことが必要である。
・泡盛に対する「つよい」、「においがきつい」というイメージを払拭するような親しみやすい商品の開発が必要である。
・若者向けの商品開発だけでなく、根強い泡盛ファン向けの商品開発(古酒など)も必要である。
・OEM、ODM生産や卸。小売とのPB商品開発などの促進も必要である。
・県工業技術センターや琉球大学等の研究機関、沖縄国税事務所等との連携を強化し、消費者ニーズを捉えた新商品開発等を推進していくことが必要である。
・もろみ酢の機能性表示食品としてのエビデンスを集積することにより、泡盛との相乗効果を図ることが必要である。

(2)販売促進

・県内・県外・海外の消費者ニーズ、若者・女性のニーズなどを的確に把握し、それぞれのニーズに対応した販売戦略に取り組むことが必要である。
・一般酒は、県内、若者、女性、家庭、業務店を中心とした販売戦略、古酒は、県外、観光客を中心とした販売戦略など、市場ニーズを踏まえた販売戦略が必要である。
・観光客向け土産品や県外市場向けには、度数の低い「飲みやすい」商品の販促が必要である。
・結婚披露宴等の乾杯に使われるスパークリングワインを「泡盛スパークリング」に変えていくなど、新たな市場をつくり出していくことが必要である。
・売上向上のためにIま、中心となる一般酒と古酒の販売を拡大し、将来的には、消費者を一般酒から古酒に繋げていくことが重要である。
・「家飲み」の増加を図るためには、主婦層をターゲットとした販売促進にも取り組むことが必要である。
・ワンカップの泡盛については、女性が「お酒落に」「かっこよく飲める」イメージをつくり上げ、販売促進に繋げていくことが必要である。
・若者だけでなく、中高年等のお酒が好きな層への取組も強化していくことが必要である。
・県外において継続的に販促活動ができるようアンテナショップの設置が必要である。
・県外出荷拡大を図るため、共同物流センターの取組を推進するなど、業界全体で物流コストの低減に取り組むことが必要である。

(3)情報発信

・県内外〈若者、女性等の消費者ニーズに対応した取組を強化していくことが必要である。
・若者や女性等の消費者のインサイトを調査し、情報発信の確度を高めていくことが必要である。
・「つよい」、「においがきつい」などのイメージが先行していることから、試飲会等の体験度を高める取組を強化し、泡盛の魅力や飲み方等を伝えていくことが必要である。
・バニラ臭のよい香りや低度数から高度数まで幅広い商品が開発されていることを浸透させるキャンペーンなどの取組が必要である。
・結婚披露宴等において、「泡盛でカンパイ! 」などの普及啓発を図っていくことが必要である。
・テレビCMの活用や沖縄の文化と絡めた大型イベントの開催、世界的な空手のラベル活用など、効果的な手法を実施していくことが必要である。、
.大々的に継続して行うことが重要であり、イベント等は1年で終わるのではなく、継続的に実施していくことが必要である。
・女性の需要拡大を図るため、女性向けのストーリーや話題性を絡めた情報発信の強化が必要である。
・イベント等の終了後に注文が入るなど売上に繋がる取組となるよう改善・強化していくことが必要である。
・YouTubeを活用したPR活動を行うなど、効果的な情報発信を行っていくことが必要である。
・多様な食に応じた泡盛の提供など、魅力発信の工夫が必要である。

5.「若者のアルコール離れ(泡盛離れ)」に対する適切かつ迅速な対応

泡盛の出荷数量が減少しているもう一つの要因として、「若者のアルコール離れ(泡盛離れ)が指摘されている。全国的に若者の飲酒習慣者の割合は減少傾向にあるが、その中で、沖縄県の20代の飲酒習慣者の割合は、他県に比べて低い状況にある。

また、泡盛は年配の人が飲む酒というイメージが若年層において定着してきており、最初に飲む酒が酎ハイ、焼酎、ワインという若者が増え、泡盛に接する機会が少なくなってきている。お酒自体が若者の会食の場においてサブ的な存在となっているのが現状である。

泡盛の出荷拡大を図っていくためには、「消費者嗜好の多様化」と同じく、当該、「若者のアルコール離れ(泡盛離れ)」に適切かつ迅速に対応し、若者のニーズに対応した商品開発、販売促進、情報発信等の取組を強化していくことが必要である。

そのため、若者の嗜好や価値観泡盛のファンや歴史・文化の重要性、他酒類との差別化等を考慮しつつも以下の取組を推進する必要がある。

(1)商品開発

・若者のニーズを的確に把握し、そのニーズに対応した商品開発が必要である。
・泡盛業界の戦略として、古酒、一般酒に加え、リキュールを第三の柱にすることも検討が必要である。
・県産果樹等を使った泡盛リキュールの開発など、若者のニーズを踏まえた商品開発が必要である(6次産業化の促進にも繋がる)。
・「飲みやすい」泡盛を若者向けに開発するなど、泡盛を最初に飲んでもらえるような取組が必要である。
・若者向けの容器のデザイン開発が必要である。
・容器やラベルのデザイン等を研究する場所の検討も必要である。

(2)販売促進

・若者のアルコール離れ(泡盛離れ)に対する危機意識を業界全体で共有し、若者のニーズに対応した販売戦略を展開していくことが必要である。
・若者のライフスタイルや価値観を踏まえた販促活動が必要である。
・業務店では、グラスでの提供など、若者のニーズに合った販売方法が必要である。
・業務店と連携を強化し、若者の価値観を踏まえた取組を推進していくことが必要である。

(3)情報発信

・若者のアルコール離れ(泡盛離れ)の現状を明確に認識し、若者向けの情報発信を強化していくことが必要である。
・泡盛にネガティブなイメージを持っている若者に対し、認知度や体験度を高める取組の強化が必要である。
・若者向けの大型イベントを若者の企画・参加型で開催するなど、効果的な取組を行っていくことが必要である。
・泡盛メーカーにおける学生インターンシップの受け入れや、大学への泡盛学科や泡盛ファンクラブの設置など、学生に対する啓蒙活動の強化が必要である。
・若者は、「かわいい」、「お酒落」、「健康にいい」などに関心があることから、若者の価値観に合った情報発信を強化していくことが必要である。
・泡盛の紹介ビデオ等も画一的で固いものではなく、楽しく親しみやすい内容にするなど、若者の感性に合ったものに変えていくことが必要である。
・CM等で若者から支持される県出身歌手による泡盛ソングの作曲を行うなど、県出身芸能人等を活用した効果的なPRが必要である。
・泡盛カクテル等による飲み方の提案や若者向けイベントの開催など、若者の興味を惹きつけるような取組が必要である。
・泡盛カクテル等による飲み方提案や若者向けイベントにおいては、泡盛マイスター協会の積極的な活用が必要である。
・若者を泡盛に振り向かせるためには、「楽しく」「お酒落に」飲んでもらうことをキーワードに取り組むことが重要である。
・古酒により「味わう」という市場は取り込めるが、若者の「飲む」という市場を取り込めていないため、若者向けに泡盛のイメージをつくり、若者の泡盛に対する入り口を広げていくことが必要である。、
・若者向けには、造り手側の「こだわり」を押しつけるのではなく、若者の価値観や生活スタイル等を踏まえた取組を行っていくことが必要である。
・若者向けにお酒のマナー講座や泡盛の美味しい飲み方・選び方、歴史等について楽しく学べる「泡盛大楽」などの事業を継続的に実施していくことが必要である。
・若者向けにSNSを活用したPR活動も必要である。

6.「増加する観光客の取り込み」に向けた取組の推進

沖縄県の平成27年の入域観光客数は776万人で、対前年比70万人(10.0%)の増と、過去最高を記録し、今後も増加傾向で推移することが見込まれている。特に、外国人観光客の増加が顕著となっており、平成27年は150万人で、対前年比60万人(68.0%)の増となっている。

これは、台湾、韓国、中国、香港の路線の新規就航及び既存路線の増便等により空路客が増加したこと、クルーズ船の例年より長い運航期間と寄港回数増により海路客が大幅に増加したことが要因と分析されている。観光客の増加は、土産品等を含む県内産業にとって、需要拡大に繋がる大きなチャンスと考えられる。

しかしながら、泡盛業界は、このような増加傾向にある観光客の需要を取り込むことができず、県内の出荷数量は減少傾向を辿っている。

泡盛の県内外における出荷拡大を図っていくためには、「増加する観光客の取
り込み」に向けた戦略的な取組を観光関連産業と連携しながら継続的に推進していくことが必要である。

そのため、県内外の消費者ニーズの違いや、泡盛の歴史・文化の重要性、他酒類との差別化等を考慮しつつ、以下の取組を推進する必要がある。

(1)商品開発

・梅酒、マンゴー酒、健康を切り口にした商品など、外国人観光客向けの商品開発を強化していくことが必要である。
・外国人観光客向けに、容器・ラベル・パッケージの個性化や、色、デザイン等の工夫が必要である。
・外国人観光客に好まれる容器・ラベル・パッケージのデザイン開発については外国人デザイナー等を活用することも必要である。
・観光客向けに容器の小型化。軽量化を図ることが必要である。
・海外の富裕層向けに、高品質で高級感・プレミアム感のある泡盛(古酒)の開発にも取り組んでいくことが必要である。
・外国人観光客向けに、ラベルについては、英語、中国語及び韓国語表記も含めて、各泡盛メーカーの特徴が分かるよう工夫することが必要である。
・外国人観光客を取り込むため、観光小売店等に、英語、中国語及び韓国語による古酒年数、アルコール度数、飲み方等を説明したPOPを掲示することが必要である。
・観光小売店等と連携し、観光土産用の泡盛の共同開発を推進していくことが必要である。
・観光土産用の商品としては、高度数の泡盛は選択しにくいため、低度数の商品開発や炭酸割りのための泡盛を開発することが必要である。

(2)販売促進

・国内観光客は、土産用に一般酒よりも古酒を購入することが多いことから、古酒のブランド化を図り、さらに付加価値を高めていくことが必要である。
・外国人観光客は泡盛に興味を示していないことから、販促活動を強化し、泡盛の認知度と体験度を高めていくことが必要である。
・観光協会やホテル業界、土産品店、旅行会社など観光関連産業と連携した取組を強化していくことが必要である。
・観光土産店、観光客向け飲食店などでの販促活動の強化が必要である。
・観光客向けに、酒造所見学や酒造所での試飲会・販売を強化することにより、県外のリピーター増加に繋げていくことが必要である。
・中国、台湾、韓国、欧米など、外国人観光客も多様化し、それぞれ食習慣も異なることから、販促活動においては、多様化する外国人観光客に対応できるよう調査・分析を行うことが必要である。

(3)情報発信

・PR不足等もあり外国人観光客は泡盛に興味を示していないことから、外国人観光客向けの情報発信を強化していくことが必要である。
・クルーズ船で訪れる外国人観光客については、クルーズ船の船内で試飲させるなど、沖縄を訪問するまでに泡盛の魅力を伝えることが必要である。
・観光関連産業と連携した情報発信の取組を強化していくことが必要である。
・観光客は、県民の取組(イベント等)、食べ物、飲み物に関心が高まることから、県内の若者向けの取組(イベント等)を活性化することにより、観光客の関心を惹きつけることが必要である。
・酒造所見学や蔵巡りツアー、泡盛の女王のガイドによるバスツアーなど、観光と絡めた取組を強化していくことが必要である。
・「泡盛通り」や「泡盛村」など、観光客と地元消費者が泡盛をもとに交流ができる場をつくり、泡盛の魅力を発信していくことが必要である。
・沖縄県の補助事業は県外イベントを中心に行ってきたが、県内でのイベント開催等も推進していくことが必要である。
・ホテル、レストラン等における観光客向けのPR活動を強化し、県外のリピーター増加に繋げていくことが必要である。
・ホテル等において外国人観光客を泡盛のウェルカムドリンクでもてなすなど泡盛の認知度を高めていくことが必要である。
・観光客の酒類(泡盛等)や土産品に対する考え・嗜好。ニーズなどを把握するため、観光客を対象にアンケート調査等を実施することが必要である。

7. 「古酒のブランド化」の取組の推進

泡盛は、他焼酎や清酒と違い、長期熟成することで芳醇な味わいとなる「古酒」の文化を持っていることが強みである。他焼酎との差別化が図られる古酒は、出荷拡大を図る上で重要な戦略製品として位置づけされている。

泡盛業界においては、古酒の持つ価値を活かして泡盛の出荷拡大を図っていくため、「古酒の郷」を整備するとともに、古酒のブランド化に取り組むこととしたところである。

しかしながら、泡盛業界においては、古酒のブランド化が進まず、古酒の価値を伝えることができていないため、県内外で古酒に対する割高感が生じるなど、出荷拡大に繋がっていないのが現状である。

他酒類との差別化を図り、県内外での出荷拡大を図っていくためには、戦略製品として位置づけされる「古酒」のブランド化が必要である。そのため、県内外の消費者ニーズの違いや、泡盛の歴史。文化の重要性、他酒 類との差別化等を考慮しつつ、以下の取組を推進する必要がある。

(1)商品開発

・古酒は、他焼酎との差別化商品として優れた商品であり、その出荷拡大は業界の発展にとって大変重要であることから、さらに高品質の古酒開発に取り組むことが必要である。
・付加価値の高い古酒の生産を拡大し、県外への安定供給を図っていくためには、「古酒の郷」事業を軌道に乗せることが重要である。
・県外の消費者向けには高度数の古酒は飲まれにくいため、付加価値を高めつつ、低度数の古酒の開発も必要である。
.根強い泡盛ファンの維持。拡大のため、希少性の高い古酒の開発を推進することが必要である。
・高級感やプレミアム感のあるボトルやラベルを開発するなど、古酒のブランド化を推進することが必要である。

(2)販売促進

・泡盛に精通している人は古酒を購入することから、古酒のブランド化を図り、その価値を伝えていくことが必要である。
・古酒のブランド化を図るためには、各泡盛メーカーが足並みをそろえ、酒質の向上や過度な安売りなどに対応し、古酒の価値の向上に取り組んでいくことが必要である。
・国内の観光客は、土産用に一般酒よりも古酒を購入することが多いことから、古酒のブランド化を図り、販売促進に繋げていくことが必要である。
 

(3)情報発信

・古酒の価値を消費者に伝えきれていないため割高感が生じていることから、ブランド化の取組を推進し、その解消を図っていくことが必要である。
・古酒の価値を消費者に丁寧に伝え、他酒類との差別化をPRしていくことが必要である。
・県内市場向けにも古酒の魅力を訴求していくことが必要であり、古酒の価値を高めていくためのブランド戦略が必要である。
・「週末は古酒を飲もう」など、古酒の美味しさ、プレミアム感を打ち出すPRの工夫も必要である。

8.『他酒類の台頭」に対する適切かつ迅速な対応

近年、県内の量販店や業務店では、九州の大手焼酎メーカーの商品が増加する傾向にあり、県内の泡盛のシェアを脅かしつつある。また、和食ブームにより、清酒のニーズも増える傾向にあり、沖縄本島だけでなく、宮古島や石垣島等の離島地域においても、他酒類の台頭が顕著となっている。

さらに、県内の20代や30代の若年層においては、最初に飲む酒類が泡盛ではなく、酎ハイ、焼酎、ワインが増えていると言われており、それが若者の泡盛離れに拍車をかけていると思われる。

今後、人口減少に伴い飲酒人口の減少が見込まれる中、ますます酒類間の競争が激化することが予想され、当該「他酒類の台頭」に対する適切かつ迅速な対応は、泡盛業界にとって大変重要な課題の一つとなっている。

そのため、県内外の消費者ニーズの違いや、泡盛の歴史。文化の重要性、他酒類との差別化等を考盧しつつ、以下の取組を推進する必要がある。.

(1)商品開発

・酒類間の競争が激しくなっていることから、これまで以上に、商品の差別化を図り、競争力の高い泡盛(古酒、一般酒、リキュール等)を開発することが必要である。
.「飲みやすい」泡盛を若者向けに開発するなど、泡盛を最初に飲んでもらえるような取組が必要である。
・各泡盛メーカーが、消費者嗜好の多様化や若者のアルコール離れ(泡盛離れ)等の課題を的確に認識し、消費者のニーズに対応した商品開発に取り組んでいくことが必要である。
・他酒類との差別化商品として付加価値の高い古酒の開発を図り、古酒のプランド化を推進していくことが必要である。
・県産果樹等を使った泡盛リキュールの開発など、若者や女性のニーズに対応した商品開発の強化が必要である。
・地元の自然や文化等の特性を活かし、ストーリー性のある特徴的な商品の開発を図るなど、他酒類との差別化の取組を推進していくことが必要である。
・県産インディカ米を活用した泡盛など、ブランドカの高い商品や差別化商品を造っていくことが必要である。
・黒麹菌については、商品の独自性を高め他焼酎との差別化を図っていくためにも、酒質の向上に考盧しつつ、県産黒麹菌の活用を推進していくことが必要である。

(2)販売促進

・他酒類との差別化や古酒の価値を訴求する販促活動等の強化が必要である。
・20代、30代の若者が最初に泡盛を飲むように若者向けの取組を強化していくことが必要である。
・最近の業務店においては、他酒類のみで泡盛を置いていない店もあることから、業務店向けの対策を強化する必要がある。
・他酒類との競争激化を踏まえ、県内の業務店(居酒屋等)の新規開拓を強化していくことが必要である。
・営業担当の専任配置や人材育成の強化を推進していくことが必要である。
・卸‘小売と連携した販促活動の取組を強化していくことが必要である。

(3)情報発信

・県内の若者や女性の需要を取り込むことが重要であり、若者や女性向けの情報発信を強化していくことが必要である。
・泡盛振興を県民全体で考え、泡盛の歴史・文化、古酒の価値、美味しい飲み方等の情報発信を強化していくことが必要である。
・県民に対し乾杯条例などで意識の醸成を図るなど、泡盛を県民の酒としてPRしていくことが必要である。
・県のイベントセレモニー等においても泡盛での乾杯を推奨していくことが必要である。
・沖縄県の補助事業は県外イベントを中心に行ってきたが、県内でのイベント開催等も推進していくことが必要である。
・蔵まつりの開催、地元イベントへの参加など、地元との交流促進を図り、地元ファンの拡大に取り組むことが必要である。
・泡盛メーカーや泡盛が飲める飲食店の情報を発信する専用アプリケーションの開発も必要である。
・ユネスコ無形文化遺産登録に向けた活動を行う中で、泡盛のPRや広がりを推進し、泡盛の認知度向上に繋げていくことが必要である。

検討委員

下地芳郎:琉球大学観光産業科学部教授学長補佐(委員長)
名嘉座元一:沖縄国際大学経済学部教授
又吉良秀:沖縄県酒造組合専務理事
高良典正:沖縄県酒類製造業連絡協議会専務理事(オリオンビール(株)副社長)
桑江修:沖縄県工業連合会専務理事
出口尚:南島酒販株式会社代表取締役社長
宮城尚志:株式会社沖縄県物産公社代表取締役専務
渡嘉敷光憲:イオン琉球株式会社商品本部食品商品部長
富永麻子:泡盛ルポライター
沖縄県:商工労働部ものづくり振興課長

オブザーバー

内閣府沖縄総合事務局、沖縄国税事務所、沖縄県工業技術センター、泡盛マイスター協会、泡盛メーカー代表者等

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