平成28年9月18日(日)沖縄県県立博物館・美術館講堂にて琉球料理と琉球泡盛をユネスコ無形文化遺産に登録することを目的としたシンポジウム「『琉球料理』及び黒麹菌による『琉球泡盛』文化圏の世界無形文化遺産登録に向けて!(主催:世界遺産登録推進委員会)」が開催された。
開催にあたり、世界遺産登録推進委員会の安田正昭委員長は「われわれの先人たちは、薬食(医食)同源の思想を食生活の中に巧みに取り入れ、栄養バランスの良好な食事を摂取してきました。この食文化は沖縄の長寿と関係が深いのではと世界的に注目されております。しかしながら、この頃では食生活の欧米化、利便性が先行した調理形態の変化にともない、琉球料理離れが進行しているのが現状であります。このままでは琉球料理が衰退するのではと関係者は危惧しております。また若者の泡盛離れも深刻であります。伝統的な食文化を守り、健康長寿県復活への取組を強化する上でも琉球料理と泡盛の次世代への継承体制と方法(保護措置)の構築が緊急かつ重要な課題となるのです」とユネスコ無形文化遺産への登録の必要性を訴えた。
ユネスコ無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)は世界遺産(World Heritage)とはその根拠条約も採択基準、手順も異なる。
世界遺産(文化遺産を含む)登録については、世界遺産条約締約国のうち、総会で選出され24か国の委員国からなる世界遺産委員会及びその諮問機関を中心に人類にとって普遍的な価値がある遺産か等々議論されるのに対し、ユネスコ無形文化遺産は、条約締結国の文化担当庁が内容を保障した上で、ユネスコに提案され、要件さえ満たせば基本的には順番に審議採択(代表一覧表記載)される。
すなわち、ユネスコ無形文化遺産に登録されるために最も重要なことは、日本政府より提案(推薦)されることであり、そのためには、文化審議会をはじめとする国内の関係機関、省庁へのアピールが必要となる。その点、今回のシンポジウムを主催した世界遺産登録推進委員会は過去に「和食;日本人の伝統的な食文化」の無形文化遺産登録に際し、農水省の検討委員であった小泉武雄東京農業大学名誉教授を副委員長に擁し万全の体制と言える。
問題は、現在ユネスコが各国の無形文化遺産登録数の平準化を図るため、登録数の多い日本に対し、2年に1件の審査という制限(正確には2年毎の審査保障及び、無登録国の優先)を行っており、現状のままであれば、登録まで早くても4年以上、他の国内の無形文化遺産候補の動向如何ではさらに数年の歳月を要すると思われることである。
ちなみに、現在、宮古島のパーントゥを含む「来訪神:仮面・仮装の神々」及び「山・鉾・屋台行事」がすでに日本政府よりユネスコに無形文化遺産候補として提案され審査待ちとなっている。
今後、琉球料理及び琉球泡盛がユネスコ無形文化遺産に登録されるためには、粘り強い活動とともに、琉球料理の定義についての迅速で細やかな整理が求められる。加えて、扇動的、商業的とあらぬ誤解を招かぬよう、現在目指しているのがユネスコ無形文化遺産(Intangible Cultural Heritage)への登録であり、世界遺産(World Heritage)への登録ではないことをまずは明確にする等、自らの足元を固める作業も必要である。