5年先のビジョンをもて 琉球政府主税局長 屋部 博(昭和47年1月30日)

  • [公開・発行日] 1972/01/30
    [ 最終更新日 ] 2016/06/01
   

1972_1_30_awamori-brewing-industry-is-able-to-have-a-five-year-destination-vision輝かしい祖国復帰の年、1972年のスタートにあたり、酒造業界の皆様のご健康とご隆昌を祈念するとともに、永かった米国支配からようやく解き放たれようとしている沖縄にとって、歴史に明記される意義深い年であり、琉球経済の順調な進展のうちに繁栄がもたらされるよう希ってやみません。

1971年はニクソン・ショック以来不況ムードが強く、日本経済の激動の年でした。特に沖縄の場合、円の変動相場制への移行、そしてドル切り下げ、円切り上げと琉球経済に及ぼした影響も大きく、通貨切り替えへの不安、消費者物価問題等、厳しい社会経済情勢の中に暮れました。

1972年は復帰実現の年であり、国の施策と県民の努力とにより、社会の安定、経済の躍進等が推進され、明るい年となりますよう希いたいものです。

しかし、日本本土に目を転じた場合、自由化の波は待ったなしに押し寄せ、沖縄の経済も封鎖経済から開放経済へと進展しようとしており、厳しい試練期に突入したといえましょう。

新しい経済情勢の下で新年を迎えた酒造業界にとっても、新しい事態にたいしてどう適応していったらよいか、この課題に如何ように対応していくかが今後の酒造業界の成長と繁栄の鍵かと思います。

従って、企業経営の方も競争力を養う意味からも思い切った企業体質の強化、改善策を断行、近代合理化をする必要がありましょうし、県内はもちろん県外への市場開発の積極的推進、また消費者生活の向上、大型化に伴い量より質を求めての消費が旺盛にあるところから、ますます価値ある商品が求められる等の点も十分に認識して対応する必要がありましょう。

特に沖縄の酒造業は中小企業で占められ、本土酒造業と比較するとその生産性は低く、今後、技術面の研鑽も当然課題となりましょうし、また企業の近代合理化も大分遅れていることも否めない事実であります。

特に泡盛製造業など伝統的な産業であるからといって、いつまでも現状に甘んじていることは許されるべきことではありません。大きく変化していく経済情勢の中で永く沖縄県民の産業として成長発展していくためには、政府の施策はもちろんのことでしょうが、第一に酒造業界の皆様のこれらの事態に対応できる体制が最も大切なことではないかと考えます。酒造組合及び酒造組合連合会を中心に皆様の協調の下で研鑽努力されることを期待します。

本年はいよいよ復帰の年です。復帰に伴う特別の措置も次々と講ぜられ、酒造業に対する直接的な措置でも、免許の永久化、原料米問題、5年間の酒税軽減措置等次々と講ぜられています。

これから酒造組合、酒造組合連合会が中心となって自主的に解決推進していくべき問題も幾多もありましょうが、暫定措置期間打ち切り後の5年先のビジョンをもたれ、今次対戦の灰燼(かいじん)の中から立ち上がった皆様の努力と根性をもってするならば、必ずや酒造業界の将来は安定し、繁栄をもたらすことを確信しております。

酒造業界の安定と繁栄及び秩序の維持は、また行政に携わる私達自身の当然の義務であるということを肝に銘じ、一層努力したいと念ずるのであります。

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