技術指導で菅間博士が来島~古米で試験蒸溜~(昭和46年10月20日)
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[公開・発行日] 1971/10/20
[ 最終更新日 ] 2016/05/09 - 読む
復帰対策庁は、現在沖縄の泡盛業者が使用している輸入砕米を本土古々米利用でも可能かどうか国税庁に依頼、同庁と主税局がタイアップして今度3トンの古々米を輸入して試験蒸留をした。
その技術指導をするため、国税庁醸造試験所第四研究室長の菅間誠之助農学博士が去る9月27日に来島、本島を始め、宮古、八重山まで渡り、延べ20日間の日程を2日間延長しての強行軍の技術指導を行ない、10月18日、12時55分発の日航機で帰京した。
3トンの古米は数ヵ所の工場に分割され、洗米から蒸留までの各段階についていろいろと専門的立場からアドバイスをしていたが、離島が故に本土業界のように度々と云う機会の少ない沖縄の業界にとっては大きな意義があった。
若くして気さくな人柄だけに、どこの工場へ行っても真剣なメーカーの質問にもいちいち丁寧なアドバイスに、業界はあげて満足気だったようだ。
離沖を明日に控えた日曜日、菅間博士は本紙記者に対して要旨を次のように語った。
「今度の来島の目的は、昔から泡盛の場合は外砕米を使用されてきているので、古米を使用したら製品の上でどう云う変化があるか心配されているので、お琴羽の業界が試験してみたいと云うことで、その立会や技術指導が目的です。
本土では外砕米は認められていないので、復帰後ビルマ(現ミャンマー)、タイ砕米が使用できなくなると、復帰の時点で価格は維持していこうと、つまり輸入砕米と同値で復帰後は使用できるようになる訳です。本土から離れている関係上、我々の技術指導があまりできなくて、1935年に野白先生の来島以来です。
試験蒸溜の結果はクースになる段階は時を経なければわからないが、今の味についてもこれからデータを持ち帰って結論を出したい。南九州あたりでは去年、立会指導をしたが古米を使用している。
沖縄の場合、業者の希望によって古米か砕米にしようと云うことであり、皆さんの希望にそいたいと考えている。」と語った。
更に今後の泡盛のあり方に言及、
「今後の泡盛の味をどうするべきかが問題だとして、手造りのクラシックなつくり方もよいと指摘、もっと泡盛の特徴が欲しい、例えば焼酎にはイモの香りがあり、泡盛には米の匂いがあると。清酒は北海道から九州までそれほど味は違わない。
泡盛は米製焼酎であり、オール麹でつくっているのを活かすべきで、あまりテクニックを加えては、かえって味に変化が生ずる。砂糖をかけると奄美の焼酎と同じになり、よそと違った本来の泡盛をつくるべきだと思います。
復帰時のショックを少なくするのが来品の目的のひとつです。」と以上のように語った。
尚、菅間博士は醸造学の権威者で広くその名が知られている斯界の第一人者である。