島の人情名水「堂井」の如し~久米島フェリーは自然按摩~  

   

「…いま私が知り得たことは、小さい島の歴史でも、汲めども、汲めども尽きぬ深さをたたえているということである。見方を変えるなら、awamori_yomoyama_37_kumejima_kumi島の自然と人情に育まれた文化、土着の思想の美しさということになろうか。

それらのことは、語れば語るほどに、聞けば聞くほどに美しく、悲しく、また勇ましく、面白く、あたかも織りなす『久米島紬』のように鮮やかさを増してゆく。

まさに『古きよき時代』の象徴であり、また沖縄の人たちの心情、いや原日本人の心のふるさとなのである。

島の風物、歴史、文化に多く接しつつ歩いていると、私たちの先祖が何を考え、何を求めて生きてきたかが、だんだんわかってくるような気もした。

一見、粗野でおっとりした久米島の人たちの気質の中に、これほどまでの情感が脈打っていること自体が、不思議なくらいであった…」

これは元沖縄タイムス記者宮城鷹夫さんの著書・久米島『琉歌・そぞろ歩き』~前書きにかえて~の文章からの抜粋である。

私はこういう柔らかくて力強い表現力が大好きだ。著書には至る所に久米島の琉歌をちりばめながらこの島固有の歴史や文化をくまなく紹介している。宮城さんがこよなくこの島を愛しているように私もまた久米島が大好きである。

その理由のひとつに、私が生まれ育ったやんばる本部町の言葉のイントネーションが非常に似ていて、親近感を抱くからである。今ひとつは「水と泡盛がうまい」という理由に加えて、人情深い島ということだ。

久米島には現在2つの泡盛製造工場があるが、この号では久米島の久米仙について少し書いてみたい。

私は久米島へ飛行機が就航した後もよくフェリーを利用している。その1大理由は運賃の安さもあるが、それ以上に私の一身上の健康の問題がある。

要するに告白すると「二日酔いを覚ます」ためである。

僅かな時間ではあるがフェリーに乗船したらすぐに仰向けに寝るのである。心地よいエンジンの微振動が何ともいえない自然の按摩となって熟睡する。兼城港に着く頃には完全に二日酔いから脱し、気分すこぶる爽快と相成るのだ。

さてさて、久米島の水といえば「堂井(どうがー)」である。ひと頃、久米島の久米仙の工場へ取材に行くと、帰り際に島袋周仁社長からおみやげに酒か水かを尋ねられると、私は即座に「水」と答えたものである。

酒は那覇でも買えるが「堂井」の名水は那覇にはない。

しかし今では同社の浦添営業本部に行けばいつでも腹いっぱい飲むことができるようになった。この名水、私の味覚では決して軟水ではない。かといって硬水でもまたない。しいていえばその中間にある水質といえようか。

興味深い実話がある。

この水でお茶を沸かすと長時間湯飲み茶碗に注いで置いても褐色になりにくい、というのである。この「堂井の名水」で醸されるのが久米島の久米仙なのである。

同社のベストセラーボトルが去る11月1日より中身をより濃い旨みを添えてニューブラウンとして生まれ変わった。

同時に甕貯蔵18年古酒『球美(くみ)』を新発売した。この球美は同社が下方から現在の宇江城城跡のふもとの高台に新築移転して18年になるのを記念して発売された逸品である。

私はこの味と香りを高く称讃したい。

古き貧しき時代の、あの昔日の琉球泡盛の奥深い香りと味がこの古酒「球美」に再現されたことは1消費者の私にとって喜びに堪えない。

720ml・43度の18年古酒で6500円という価格は、メーカー側の我々愛飲者に対する良心的還元だと考えると、この価格も納得できる。

うち招く扇にお名残りやふくでおかれよしお願そろてしゃべら
(久米島『琉歌そぞろ歩き』)より。

2002年1月号掲載

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