10月23日から3日間「あ、いいね!使ってなっとく県産品」をテーマに、奥武山公園(那覇市奥武山町)にて第39回沖縄の産業祭り(同実行委員会主催)が開催された。我が琉球泡盛からは15場が出展。
それぞれのブースの注目商品をレポートする。(泡盛以外のアルコール飲料に関するレポートはこちらより)
ヘリオス酒造
1991年以来ロングセラーを続けている「くら」が古酒新基準に合わせてラベルも容器もリニューアル。100%古酒になった「くら」は、さらに古酒独特のまろやかさが増し飲みやすい仕上がりとなっている。イベント用の限定商品としては、量り売りの無濾過5年古酒を出品。完全無濾過で白濁した泡盛は、来場者の目を引いていた。
崎山酒造廠
じっくりと時間をかけて、独特の風味豊かな泡盛を作ることで有名な崎山酒造廠。代表銘柄は「松藤」だが、今回産業祭りで注目したいのは「三日麹(黒)50度」と「三日麹(赤)50度」の2銘柄、ともに5年古酒だ。違いは酵母で、黒は101酵母、赤は黒糖酵母を使用している。50度とは思えない独特の深いコクと甘みがあり、そのままでも十分すぎるほど美味いが、このままさらに古酒として育てたらさらに濃厚になるのではないか?と思わせる力強さもある。古酒名人を目指すなら、崎山の三日麹は選択肢から外すべきではないと自信を持っておすすめしたい。
神村酒造
今年は特に樽熟成の泡盛がうまみを増している印象がある。その中でも特に神村酒造の暖流には驚かされた。樫樽の香りが強く琉球泡盛に完全に新ジャンルを構築した。それでいて泡盛の持つ力強さ、コク、うまみをすべて持ち合わせている。特に水割り、炭酸割りでの伸びの良さはダントツだ。泡盛でもハイボールのような炭酸割りがはやりつつあるが、ベースに暖流を指定する愛好家がいるのもうなずける。
神村酒造からは限定の甕貯蔵の芳醇浪漫も発売された。そもそも芳醇浪漫は独自開発の酵母を用い、一般酒なのに古酒のような香りを出すことに成功した泡盛だ。それがさらに古酒になり、香りもコクも数段増加している。少しとろみがあり、飲んでみると喉をキャラメルのような何かが通るのがわかるほどだ。
新里酒造
何かの手違いでパンフレットには社名が掲載されておらず、探すのに苦労したが、沖縄最古の蔵元新里酒造のブースは他のメーカとは少し離れた川沿いの弓道場近くにあった。今回の産業祭りでの目玉商品は、新開発の101H酵母で醸したその名も「101H(イチマルイチハイバー)」だ。従来の酵母仕込みに比べ、香が立つのが特徴である。蒸留する際に、釜の気圧を下げる「減圧蒸留」と、それをしない「常圧蒸留」の2パターンが商品化されている。
その二種類を飲んで驚いたのは、通常は減圧蒸留の泡盛の方が常圧蒸留の泡盛より口当たりが良い場合が新酒では多いが、この101Hに関しては、常圧蒸留で醸した泡盛の方が同じ度数では飲みやすかった点である。しかし、これは二者を比較した場合の話であり、ともに口当たりが良いことには変わりがない。近年泡盛の品質向上が目覚ましいが、それを象徴する商品だ。
まさひろ酒造
まさひろブースでの注目は「黄金まさひろ8年古酒」。新しい古酒表示基準に合わせ8年古酒と表示しているが、中身は8年古酒と12年古酒(樫樽貯蔵)のブレンド。2万本限定で本年6月より発売中の商品だ。樫樽独特の香りと味、そして従来のふくよかな泡盛古酒の味と香りがバランス良く混和された飲み口で、従来派も樫樽派もどちらにも受け入れられるうまみを持つ。この一升瓶は産業祭り限定販売。
瑞穂酒造
瑞穂酒造ブースでのおすすめは「瑞穂熟成5年古酒」シリーズ。アルコール度数43度の「瑞穂熟成5年古酒”ロイヤル”」と同25度の「瑞穂熟成5年古酒”マイルド”」の2種類を販売。共に5年以上の熟成古酒を同社が厳選しブレンドした。
「マイルド」は、その飲みやすさと古酒香の高さに特徴がある。キャラメルやナッツの甘い香りが口いっぱいに広がるあたり、女性や若者に人気がでそうである。
一方ロイヤルはコクがあり水で割っても味わい深いのが特徴。力強さを求める泡盛通も納得の逸品となっていた。
瑞泉酒造
黒と金のラベルが目立つ「KING」を陳列販売していたのが瑞泉酒造。10年古酒を飲んでみたが、コクも深みもありキングの名に恥じない古酒に育っていた。泡盛と同時にグラスを販売し、古酒の飲み方の提案をしていたのも瑞泉酒造らしい。古酒は小さめのグラスに注ぎ、少し空気に触れさせて香りが立つ(強くなる)のを待って飲むべしとのことだ。2003年から2015年までの醸造年違いの泡盛の量り売りも人気だ。
山川酒造
古酒にこだわりを持つ山川酒造ブースでは、1995年から2015年まで、蒸留年ごとに瓶詰めされたヴィンテージ泡盛「記念泡盛」が並ぶ。新しい古酒の表示基準が今年より運用され古酒をブレンドした場合は、たとえそれが少量であっても若い方の泡盛の貯蔵年を表示しなければならなくなった。そのような中で、20年分の古酒を年代別に並べることができる山川酒造は、さすが「“古酒の”やまかわ」を名乗るだけはある。主力商品の「珊瑚礁」シリーズを飲んでみたが、味が濃く深みがあり、熱烈なファンが多いことがうなずける。
今帰仁酒造
「美しき古里」の8年古酒をヴィンテージとして販売。甕貯蔵8年古酒とタンク貯蔵8年古酒を半分ずつブレンドしている。もともと飲みやすいと評判の「美しき古里」が、古酒になりさらに飲みやすくなっている。黒いボトルに金を基調とした高級感のあるデザインも秀逸だ。
比嘉酒造
フルーティーな香りと爽快な飲み口に熱心なファンが多い比嘉酒造の「残波」。そんな飲みやすい泡盛を醸すイメージがある比嘉酒造だが、今回産業祭りに出品された「15年古酒残波(42度)」は、その力強さと深い味わいに驚かされた。その実力、さすがとしかいいようがない。口当たりの良さ、さわやかさが女性や若者に大人気の残波25度、通称「ザンシロ」から、まろやかさを保ちつつもコクと深みを追求した「残波プレミアム」そして、通をうならせる残波古酒まで”残波に死角なし”である。
久米島の久米仙酒造(久米島町)
ブースの前がひときわ賑わっていたのが久米島の久米仙だ。それもそのはずで、自分の名字をラベルにしたオリジナルボトルをその場で作るというサービスを行っていた。ブースには引渡しを待つ、島袋、屋比久、伊藤など見なれないラベルの久米島の久米仙が並ぶ。
唯一、パウチタイプの泡盛を出品しているのも久米島の久米仙ブースの特徴である。12度という飲みやすい度数に調整されたパウチタイプの泡盛の利点は飲む時や容器を捨てる時の手軽さだけではない。割水に仕込み水と同じ久米島の天然水を使用しており、わざわざミネラルウォーターを買う手間も省けるのである。
企画の秀逸さに思わず気をとられてしまったが、久米島の久米仙の泡盛の品質ついては言わずもがな。業界トップセールがそれを証明している。
久米仙酒造(那覇市)
久米仙酒造で目を引いたのは「泡盛久米仙2001年謹製樽熟成古酒43度」。2001年製の県産泡盛(樽貯蔵酒)80%と1996年製の内モンゴル産泡盛(樽貯蔵酒)20%をブレンドした独特の商品である。飲んでみると少しとろみがあり、その分口の中に樽の香りが長く残る印象がある。同じく「久米仙秘蔵古酒7年(40度)」もおすすめである。味が濃く、泡盛好きにはたまらない仕上がりだ。
忠孝酒造
忠孝ブースで一押しは、今年7月に発売した「華忠孝(はなちゅうこう)30度」だ。マンゴー酵母を使い、香り高く仕上げている。少し苦みのあるスモーキーな感じも独特だ。忠孝酒造と言えば、酒甕を自社で作ることでも有名。この「華忠孝」40度以上の商品が出れば忠孝甕に入れて甕古酒にしてみたいと思わせる。
菊之露酒造
真っ赤な看板と真っ赤なラベルがひときわ目立っていたのが菊之露酒造。他のブースでは、新商品や限定商品を主にアピールしているが、こちらでは、定番の菊之露ブラウンが中心に山積みされており、自らのブランドに対する充ち満ちた自信が、見ているこちらも心地よい。そんな中において、あえて珍しい商品をピックアップすれば、沖縄県内限定発売の「島古酒25度」。25度とは思えないコクがあり、喉を通り過ぎてもまだうまみが口と喉に残る絶品だ。
沖縄県酒造協同組合
組合ブースでは産業祭り記念ボトルの海乃邦を販売。泡盛の女王も交代でPR活動を担う。
今回の産業祭り全般で感じたことは、泡盛の味がここ数年で加速度的に良くなっているということ。酒類全般の消費量が減っているため泡盛の将来を危惧する声もあるが、杞憂である。これだけ香りと味が楽しめる蒸留酒は世界広しといえどそうあるものではない。もし、泡盛の消費量が減っているのであれば、それはまだ泡盛が十分に知られていないだけだと確信したイベントであった。
(二代目預)