我が沖縄における酒類の変換の一端を眺めてみたい。1969年に私がデパート大越(旧沖縄三越、現HAPiNAHA、那覇市牧志)で調べた酒類の価格(小売り)帯は次のようになっている。勿論沖縄のドル時代である。
1969年、デパート大越で調べた酒類の価格(小売り)帯
酒名 | 価格 |
---|---|
ジョニーウォーカー黒 | 10ドル |
ジョニーウォーカー赤 | 5ドル |
オールドパー | 8ドル~12ドル |
ホワイトホース | 5ドル |
ナポレオン | 25ドル |
VSOブランデー | 4ドル40セント |
シーグラムVO | 4ドル90セント |
シーグラムセブン | 4ドル30セント |
サントリーオールド | 5ドル30セント |
サントリーレッド(キング) | 4ドル |
月桂冠 | 3ドル |
菊正宗 | 3ドル |
キリンビール(打) | 6ドル40セント |
キリンビール(半打) | 3ドル30セント |
サッポロビール(打) | 6ドル40セント |
サッポロビール(半打) | 3ドル30セント |
オリオンビール(打) | 4ドル25セント |
オリオンビール(半打) | 2ドル40セント |
瑞穂古酒45度 1.8リットル | 3ドル50セント |
瑞穂古酒45度 720ml | 1ドル80セント |
瑞穂古酒45度 360ml | 1ドル20セント |
瑞穂古酒35度 360ml | 1ドル |
※打:ダースのこと。12個、また12個のもの一組み。
等となっている。
今から33年も前の、いわゆる戦後沖縄におけるウイスキー全盛時代の話である。デパート大越の酒類コーナーは沖縄で売られている酒類の約70パーセントを取り扱っていた。我が泡盛はその中でたったの1銘柄だけであった。実にさみしい思いをしたのを覚えている。しかも清酒並の値段ですよ、古酒45度の1升瓶で。
更に1970年に私が宮古のバー、キャバレーの飲み代、価格を調べた時1番がっくりし傷心したのは泡盛が一切置かれてないことであった。このことは全県下でいえることではあった。
今から32年も前のことである。
ちなみにその価格帯をピックアップしてみると…。まずその年の値上げの理由として諸物価の高騰を述べている。
1970年代のバーやキャバレーなどのお酒の値段
酒名 | 価格 |
---|---|
オリオンビール(大瓶) | 1ドル20セント |
輸入ビール(中瓶) | 1ドル20セント |
ホワイトホース(1本) | 15ドル |
ホワイトホース(ハーフ) | 8ドル |
VO(1本) | 15ドル |
VO(ハーフ) | 8ドル |
VOセブン(1本) | 15ドル |
VOセブン(ハーフ) | 8ドル |
ニッカ(1本) | 6ドル |
ニッカ(ハーフ) | 4ドル |
ジョニーウォーカー黒 | 25ドル |
ジョニーウォーカー赤 | 15ドル |
トマトジュース | 1ドル |
等となっていて泡盛のアの字もメニューにはなかった。
ウイスキー1本の価格が15ドルや25ドルといえば当時の平の月給の半分かそれ以上の金額である。
それでも当時のウチナーンチューの殆どのサキヌマー達は、このウイスキーを飲みにバーやキャバレー通いをしていたのであるからエラかった、と称賛すべきなのかどうか私には未だにもってその心情が理解できない。
しかし、あの当時は泡盛メーカー自身が輸入ウイスキーを飲みながら「どうしたら泡盛が売れるのかなあ」なーんて話し合っていた時代だったから宜(うべ)なるかなではある。
そういえばあの頃よく見かけたのがタバコ。
常日頃吸っているのは島産品の「うるま」や「バイオレット」「ロン」でありながら何故か飲み屋に行く時にはフンパツして必ず洋モクを買っていた。これなどは一種の虚栄心ではなかっただろうか、と私には思えた。
ウチナーンチューは昔から遠い海の彼方から入ってくるモノは自分たちのモノよりも優れている、或いはうまいという先入観をもっているきらいがある。
人間だってそのように見る人だっているのではなかろうか。
ま、だいぶ理屈っぽい論法になりかねないのだが、そこはひとつ自分の取って置きの年代もののクースを飲んで、さわやかな気分で熟睡しましょう。
をがでのかれらぬ しゅゆりてんぎゃなし あしでのかれらぬ おちゃやおどん
茶屋節
2002年7月号掲載