古酒瑞穂をたたえる 高良 一(昭和47年1月30日)

  • [公開・発行日] 1972/01/30
    [ 最終更新日 ] 2016/05/30
   

1972_1_30_honoring-mizuho-syuzou-of-making-kosyu_takara-hajime僕は若い頃から泡盛をこよなく愛し飲んでいる。第一、米の油だから栄養価も高く、私のところに来る東京のお客さんも非常に好んで泡盛を飲んでいる。中でも泡盛のクース(古酒)は世界一よい酒だと思う。古酒は瑞穂だけだから飲めば僕にはわかる。ナポレオンよりも瑞穂の古酒はよいと思う。

ただ沖縄の人は古酒の飲み方を知らない。水で割って弱めるのはよいが、ガブ飲みしては翌日に残る。カラカラに入れてチビリチビリ飲む、ジンみたいに。

本土から来る社長クラスでも年配の人ほどその味がわかり、これを飲むと1日中体が温まると云っている。ちょっと風邪気味の時でもこの古酒を飲むと治るし、クスイグワァー(くすり)ですよ。惜しい方でしたが、故人の当間重剛さんも全く私と同意見でしたね。

料亭やバーあたりも古酒を置いてあるが、私はマダムにカラカラに入れて1ドルずつで売りなさいと云っているが、古酒の特徴は少量でいい気持ちになり、又、相手次第ではいくらでも飲む性質なんだ僕は。世界一いい酒だと云うことはみんな認めているけれども、ただ不思議なことに沖縄人自体が宣伝しないと云うことだ。

どこの国に行ってもまず自国の酒を1盃飲まして歓待するもので、早い話が隣の鹿児島県なんかでも、必ず最初は焼酎を出す、いつどこでもだ。沖縄にはこう云うような風習が培われていないと云うことは不思議でならない。歴史をみてもわかるように、歴代琉球王は遠来の客には古酒で歓待している。

泡盛業界に云いたいことは、早くシマーグワァー感覚を捨てさせること、まぁ琉球泡盛産業株式会社と云う団体もあることだし宣伝にもっと力を入れるべきですよ。

販売競争だけに明け暮れるなと云いたい。本土に帰るとそうはいかない。ウイスキーや他酒は盛大なパーティなどもやっているのに、なにもやらんでは、業界自体が卑屈感を抱いているのではないか、まぁ、そうは考えていないと思うが。

泡盛業者はよく飲み屋で見かけることがあるが、泡盛を飲む人は少ない。むしろ僕等が宣伝している。酒が良いから云えることだが、泡盛業者団体として2~3万ドル位い投げて、もっと積極的に宣伝すべきだろう。

オリオンビールが当初、不味いと云われていたが、具志堅宗精さんの日夜の努力で今日のようなシェアまで伸びてきている。全く具志堅さんには頭が下る。泡盛業者も大いに見習うべきだと思う。

容器にしても観光団がサッと手軽に持っていけるようなカッコいい容器も考えるべきで、大体、人のつくった容器に入れる自体おかしいと思う。

今後は業界各位も努力され、相手が世界だと云う観点から進んで欲しい。瑞穂さんが20年前から古酒づくりの考えを打ち出していたが、今考えてみると非常によい着想だったと思う。

ここまできた玉那覇有義社長の苦心は並大抵のことではなかったと思う。苦労した人は必ず成功しているし、今後共、玉那覇さんがよりよい古酒づくりに邁進し、僕達に提供してくれることだろう。

古酒でつくった梅酒もいい。それにハブ酒の効用は大きいが、戦前医者に見放された或る結核患者がこれですっかり治った。あとでその患者がハブ酒ときいてびっくりしていたが。又、水虫にも覿面(てきめん)に効く。本土の財界の大モノが水虫に悩まされていたが、ハブ酒ですっかり治った例もある。

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