朝夕さん酒に うぶりやいうすが 幾かたみ飲だが なまぬえーだに
詠み人知らずのこの狂歌の大意を石垣長助学兄(故人)は小紙への玉稿の中で次のように解説している。
「朝から晩まで酒におぼれ、ひたっているようだが、お前はこれまでどれだけの酒を飲んだか知っているのか…と、叱っている」と。
昨晩私は家で独酌をしながら、ふとこの狂歌を思い出し自分の酒飲み人生を反省してみた。
20代から「本格的」に飲み始めているのであるからひと晩平均して3合として、1カ月間で9升、1年間で1石8升となる。ドラム缶1本分をはるかに超える。
50年間以上ではざっと54石。泡盛メーカーの工場内にある50石入りのステンレスタンク1本分以上となる計算だ。私の場合度数を12~13度位いに水で落として飲むので、30度ものだと倍以上となり100石以上となる。
しかし、この50年余の歳月にはカゼをこじらせて飲めない日々や気分の悪い時もある。それに以前から私は旧盆前と正月前の年2回それぞれ20日から30日間は禁酒している。
何よりも健康であることに日々感謝しつつ今宵もまた盃を傾けているが、愛酒家を自認している私は体の調子が少しでもおかしいなと思う晩は決して飲まない主義だ。
それが琉球泡盛、オリオンビールも1番喜んでくれているのではなかろうか。末長く付き合えるからだ。
少々クサムヌイー気味の駄文の流れになってきたが、ま、年令だけは読者諸賢よりも上だということでご寛容願いたい。
それにしても近年の泡盛がなんとうまくなってきたことよ。琉球泡盛が他の蒸留酒と決定的な違いのひとつに長期間貯蔵をして熟成させるという先人の知恵がある。
この特技は琉球人だったから出来たことで、この地方の亜熱帯特有の気候と風土が酒琉球泡盛の風味に大きく貢献している、と言っていい。
これは洗米する「水」の段階から、蒸し、黒こうじ菌の散布、もろみの熟成、蒸留までの日数の間に目に見えない沖縄だけにしか存在しない微生物たちが既に各段階に溶け込み、琉球泡盛のうま味成分を醸している、と私は考えている。その原料米も上等になってきている。
こんなすばらしい立地条件で造られている酒琉球泡盛は是非長期間貯蔵をして納得のいくクース(古酒)にして県内外の市場で善戦して欲しい。
琉球民族の魂のこもる酒琉球泡盛が世界にその名声を轟かせるにはこの戦略しかない、と私は断言したい。
赤てぃだつりてぃ 観音堂登てぃ 見りば海上ぬ 御酒上がてぃ 〔詠人知らず〕。
〔夕焼けにつられて観音堂に登って見たら、夕焼けで海面も赤々としてまるで酒をあがっているように見える。の意。〕
2002年9月号掲載