泡盛を海外へ売り込め!琉球泡盛輸出セミナー開催(ジェトロ沖縄事務局他)
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[公開・発行日] 2018/07/03
[ 最終更新日 ] 2018/08/09 - 飲む
ジェトロ沖縄事務局、沖縄県酒造組合は6月27日水曜日午前10時より、那覇市おもろまちの内閣府沖縄総合事務局2階会議室にて「琉球泡盛輸出セミナー」を主催。講師に株式会社コーポ・サチ代表取締役社長・平出淑恵氏とティル・ウェーバー琉大教授の二人を招き、酒造関係者や観光産業関係者、琉球泡盛輸出促進プロジェクト関係者など多くの人が参加した。
講演に先立ち開会のあいさつでジェトロ沖縄の西澤祐介所長は「輸出というと船で商品を運ぶというイメージがありますが、現在では電子メールでの取引やネット通販などを始め、外国人観光客が日本の文化に興味を示して、日本の商品を買ってもらうこともカウントされています。沖縄にはおよそ年間210万人もの外国人観光客が訪れており、沖縄ならではの商品を買ってもらうチャンスが増え、泡盛も世界の人に買ってもらえるよう、講演を通してそのヒントとなればと思っています」と述べた。
平出氏の演題は「SAKEから観光立国~日本酒の国際化は地方のブランドへ~」。日本酒が国際市場に求められるために、どのような活動を行ったか、その経緯が今後の泡盛の海外進出へのヒントになるとの視点で講演した。平出氏は元日本航空国際線客室乗務員というキャリアを持つ。その在職中にワインの魅力にはまり、ソムリエの資格を取得し、月20日の国際線乗務の傍ら海外のワイナリー巡りや世界のワイン専門家との交流を持ち「空飛ぶソムリエ」して活躍。ワイン専門家の視点を持って世界のワインの産地と特徴、ブドウの品種だけでなく、産地の特産品や農業、観光など産業全体を通して社会貢献に寄与することを学んだ。
そしてワインを学んで気がついたことが、「日本酒の価値と可能性」であった。「長い歴史を持つ日本酒は日本そのもので、利き猪口の中には日本がつまっている」という。ワインと同じ醸造酒として1,000年以上の歴史を持ち、糖化と発酵を同時に行う「高度な醸造技術」、神様への飲み物、献上品として、花見酒や月日酒などの「伝統と習慣」、そして今尚「100年以上の蔵元が現存」するなど、全て世界に通用するブランド力を持っているのである。
平出氏は「ワインのわかる人には日本酒の価値もわかる」と思いに至り、ワインの世界が実現していることは日本酒でも可能だとの思いで行動する。一杯のワインで得られる共感の輪を、世界に向けて日本酒でも実現出来ると思ったのである。また、ワインの産地は観光地としても広がりを見せており、たとえ新興のワイン産地でも、ワインが高い評価を得ればそこは世界的な地名となり、世界のワイン産地をめぐるワインツーリズムの目的地となる広がりを見せる。
日本酒の海外輸出は全生産量の4%。輸出額は187億円。それに対しフランスワインの輸出額は約9,900億円。生産量の半分近くを海外に輸出している。日本酒をワインのように世界酒にして、ワインビジネスの同様のインフラに乗せることができれば、地方の蔵元にも多くの人が集まり世界へ紹介できる日が来るというのである。
ワインの海外啓蒙に必須といわれているのが三つ活動。
その一つがEducation(教育)。そしてその教育にも三つの要素があり、「世界に通じる体系的教育のプログラム作成」続いて「その価値を消費者に伝えるプロの育成」そして「教育活動への多方面から支援」である。二つ目の活動がCompetition(コンクール)。プロにより、品質を評価された銘柄の発信。そして三つ目がPromotion(宣伝活動)。業界向けと消費者向けに絶え間なく続けることが大切なのである。
そのため、平出氏は日本酒を世界の酒にするための“Step1:Education(教育)”として「世界に通じる教育プログラムの作成」「日本酒の価値を消費者に伝えるプロの育成」「日本酒教育活動の多方面方の支援を行ない、ロンドンにある最大規模のワイン教育機関WEST本校でのSAKEコース開設する」など働きかけた。
“Step2:Competition(コンクール)”としてはワイン教育の本拠地、ロンドンで日本酒の紹介や世界的マスターオブワインに品質の良い日本酒を紹介する活動を行った。それらの地道な活動が実り、1984年から毎年ロンドンで開催される世界最大規模のワインコンクールIWC(インターナショナルワインチャレンジ)で、2007年から「SAKE部門」が創設され、品質を評価された日本酒が、蔵元のある福島県と同時に世界発信された。
“Step3:Promotion(宣伝活動)”としては、日本酒を世界の酒にすべく国内外の業界や消費者に絶え間なく宣伝活を続けているという。日本の外務省はIWCの上位入賞の日本酒を、審査に公平性があると認め毎年在外公館で使用する酒として採用している。
日本酒は平出氏をはじめ国内蔵元の有志、蔵元のある地方自治体、多くの支援企業の協力など地道な活動によって徐々に世界的広がりを見せているという。「泡盛も世界的な酒になるために、この講演が一助になれば幸いです」と語り、最後に「キーワードは誇り」と結んだ。
続いて琉大教授のティル・ウェーバー氏が「泡盛の魅力をどのようにして外国人に伝えるか」と銘打ち、外国人の視点から泡盛の魅力や国外の泡盛ファンをどのように増やすべきかを講演。
欧米ではは食前食中のお酒の他、食後にゆっくり飲む酒があり、特にブランデーなどのいいお酒は夕食後はゆっくり時間をかけて飲むことが多い。また、ブドウやブドウの搾り滓、プルーン、ジャガイモなどを使った焼酎も多く、特にグラッパなどは多種多様で値段もいろいろあって人気がある。
ただ、ヨーロッパではハードドリンカーも多く、安くて強い酒もたくさんあるので、泡盛はそれらハードドリンカーにどう対応するかの検討が必要。また、泡盛は美味しいけれど寒い国や雪の日に飲むと合わないと思う。そのため、美味しく泡盛を飲むためのシチュエーションが必要。それには料理だけではダメで、ドイツの沖縄県人会の方と一緒に沖縄料理の講習会と泡盛を紹介したが、沖縄らしい雰囲気がなかったのであまり盛り上がらなかったという。もっと南の島のお酒をイメージした装飾と沖縄音楽があったらもう少し盛り上がったかもと語った。
ウェーバー氏はドイツ出身で20年ほど前に来沖。泡盛が好きで県内で泡盛外国人同好会を主宰している。蔵巡りを企画し泡盛造りを見せたり、蔵ごとの違う銘柄のテイスティングを楽しんで泡盛を紹介している。20年前に初めて泡盛を飲んだ時、美味しくて飲みすぎてしまい、意識はあるのに体が動かなかったという。その後、先輩たちからいい泡盛、多分古酒といい飲み方を教えてもらった。泡盛は美味しいからオーバーハングしてしまうという。
沖縄は日本とは違う歴史や文化、本土と違う気候風土がある世界でもユニークな地域。泡盛は600年の歴史を持ち、熟成させた古酒もあるため、ただ安く飲めるお酒ではなく沖縄らしい雰囲気と文化を感じさせる飲み方ができればと思う。それにはフレーバーホイールを活用したほうがいい。英語版のフレーバーホイールを手に香りを確かめながら飲むのも盛り上がるのではないかといい、大切なのは言葉の壁とファースト・インプレッション、沖縄の歴史と文化、泡盛を楽しむことだと講演を結んだ。
講演後の質疑応答で会場から「泡盛は世界的にはまだ無名の酒なので、空手と泡盛を結びつけたらどうですか」という意見が出た。沖縄が世界の空手マンたちの憧れの聖地になっており、カリスマ的な指導者もいる。ウェーバー氏は「世界的に空手をやる人たちは泡盛を飲むのがクールとなってくれたらいいですね」と述べた。
最後に閉会のあいさつで沖縄県酒造組合佐久本学会長は「日本酒、焼酎、泡盛が國酒として国を挙げて世界展開へ向かって動いています。泡盛もメーカーだけではなく多くの企業や人々の協力を得て世界へ広げたいと思っています。今日のセミナーが今後の展開に役立てればと思っています。本日はどうもありがとうございました」と語った。