盛り泡ろう!音楽PV撮影秘話(文・浜田隆幸)
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[公開・発行日] 2017/12/13
[ 最終更新日 ] 2018/02/22 - 飲む
2017年9月4日(月)古酒の日、きいやま商店(有限会社フライング・ハイ)作詞・作曲の泡盛応援ソング「盛り泡ろう!」のプロモーションビデオ(PV)がリリースされた。
この音楽PVで踊っているのは一般公募で集まった人たちで、そのほとんどが泡盛またはきいやま商店が大好きな人たち。沖縄県内だけでなく、遠く大阪や東京からも駆け付けた。
撮影は沖縄県の梅雨が明けた暑さの厳しい7月8、9、10日と12日の計4日間、沖縄本島の観光スポットを移動しながら行われた。出演者は各々の都合により、1日のみの参加から4日間フル参戦のツワモノまでいた。
撮影前の話。応募はしたものの主催者からなんの音沙汰もなく、出演できるのかどうかヤキモキしていたところ、撮影予定日の9日前になってようやく出演依頼がきた。そこには4日間の撮影エリアと時間が記載されており「予備日も含めた出演日の可否を返信せよ」とのメッセージが書かれていた。
【名護エリア】7/8(土) 4:30~15:00
【南部エリア】7/9(日) 8:30~17:30
【那覇エリア】7/10(月) 10:00~19:00
【那覇&北谷】7/12(水) 8:30~16:30
(15分前に沖縄テレビ本社に集合)
那覇在住の私としては、さすがに名護は遠いし、ましてや4時15分集合なんて早すぎる…と、初日を除く3日間を出演可として返信した。しかし、その2日後に送られてきた詳細なスケジュールには「7/8(土)6:00~8:00 美ら海」との文字が!美ら海水族館の開館は確か朝8時、これはもしや開館前の巨大水槽の前で撮影!?それならば参加せねば!と他のメンバーとも相談して、初日の撮影にも参加可能と変更を申し出たのであった。
撮影初日
〇美ら海水族館→備瀬フクギ並木→古宇利大橋
7月の沖縄とはいえ、早朝4時は日の出前。夜のとばりの中、予定より少し早く集合場所である沖縄テレビ本社前に到着した。集合場所にはすでに出演者と思われる男性2名はいたが、本当にここが集合場所かと不安になるほどの静けさだった。それでも少しずつ人が集まりだし、やがて一緒に申し込んだ他のメンバーも到着、ある女性を除いては。その女性に電話をすると寝坊したのでマイカーで直接現地へ向かうという。ここだけの話だが「たぶん彼女は遅刻するだろうなぁ」との私の読みが現実になった瞬間でもあった。
我々の乗った車は定刻通り美ら海水族館に到着。まだ朝6時だというのにうだるような暑さだ!早く空調設備がある水族館に入りたい!と期待していると、エスカレーターに乗るも水族館入口はスルーしてウミガメ館やマナティー館の近くの広場まで連れていかれた。そこは影のない炎天下、いやな予感がする。実際に撮影が始まると、あまりの暑さにTシャツの汗じみが目立ち過ぎていたり、踊りがうまく出来なかったりと、何度もメンバー交代が繰り返されての撮影となった。
撮影2日目
〇美々ビーチ→沖縄空手会館→奥武島
100名規模で、PVの最後の場面となるカチャーシーを撮ると事前に聞いていた2日目。美々ビーチに到着すると、すぐに酒造メーカーの職員と思われる数十名の複数の団体が合流した。
そしてビーチ方面では、先入りしてすでに踊っているグループを発見。近づいてみると、素人とは明らかに違うキレッキレのダンスだ。加えて大きな声でリズムをとったり指示を出したりするリーダー的な女性もいる。よく見ると今回のPVの振り付けを担当した“振付稼業air:man”の菊口真由美さんであった。聞くところによると、踊っていたのはダンススクールの生徒たち。強力なライバル登場だが、主役の座を明け渡すわけにはいかないので、我々もウォーミングアップを開始する。若い芽は早めに摘むのがこの業界で長く生きるコツだ。
総勢約100名の撮影は砂浜で行われた。中には現役そして前年の泡盛の女王の姿も見られる。残念なことは、全員が撮影に駆り出されたので、そのシーンの写真が手元はないこと。
大勢での撮影でテンションが上がっているせいか、移動中もみな賑やかだった。ただ、常軌を逸したテンションの某泡盛メーカー営業のH氏に関しては、長時間相手をできる人がいないため「移動ごとに別の車両に乗せる」との不文律が発生した。
そして、現場ではとてつもなく大きな声で指示を出していた“振付稼業air:man”の菊口さんは、普通に会話をすると、聞き取るのも難しいほどのか細い声だった事も良き思い出である。
初日のハードさに比べると、二日目は比べ物にならないくらい楽な撮影であった。「今日だけの出演者は楽でいいよね」と初日の参加者から愚痴が聞こえてきたが、先輩としての優越感がたぶんに含まれているようにも思えた。
撮影3日目
〇壺屋東又窯(琉球料理ぬちがふう)→大シーサー→金城町石畳道→守礼門
3日目ともなると、スタッフも出演者も慣れてきたのか撮影はいたって順調。予定よりも時間が余ったので、東屋でお弁当を食べた後に寝転がる余裕も。
難所といえば、金城町石畳道での撮影時の足場の悪さ。それでもみんな笑顔で乗り切っていた。
撮影4日目
〇牧志公設市場本通り→市場内→北谷大観覧車前→北谷デポアイランド
公設市場付近での撮影では、スタッフより踊るメンバー以外は車の中での待機との指示があったが、我々初日から参加したベテランはスタッフの指示を軽く無視して撮影現場である市場本通りへと向かった。
この辺りは外国人を含む観光客が多く、通りすがりに写真を撮ったり「いったい何をしているのだろう?」という表情で見物する客も多かった。
市場本通りでの撮影が終わり、次は市場内での撮影。ここでも実際に踊る4名のみ市場へ入場するようにスタッフに指示される。中には一般客のフリをして見学に行くエキストラダンサーもいたが、我々プロは現場の空気を読みここは車中に戻るべきだと判断した。後日談ではあるが、市場関係者から騒がせすぎとやはり軽いクレームが入っていたらしい。我々プロと素人の差はこういうところにもでるものだ。
撮影が終わると、まずはスタッフで一番若いと思われる“お天気部長”から終了の合図があった。今回の撮影で知ったが、カメラマンは太陽(強い光)を見てはいけないらしく、他のスタッフに雲の動きなど空の様子(光の動向)を見させ状況を報告させるそうだ。その担当が“お天気部長”。新人スタッフであるとのことだが、皆に「部長!」と呼ばれかなりイジラレていた。
締めは、終始冗談などを言い、出演者をリラックスされてくれた(スタッフには呆れられていた?)チーフカメラマンからの挨拶。
4日間、とても楽しい撮影だったが、撮影終了の挨拶を聞く参加者は、なんだか寂し気でもあった。
「盛り泡ロス…」
解散後、それぞれが泡盛を求めて夜の街に消えていったのは言うまでもない。
(文・浜田隆幸)