香港で、泡盛のブランディングについて考える(文/沼田まどか)

  • [公開・発行日] 2016/08/22
    [ 最終更新日 ] 2016/08/30
   

ここ数年、香港では日本酒や日本産ウイスキーが人気だ。ウイスキーにいたっては、誰が買うのか、日本円にして100万円(1香港ドル≑13円)に手が届きそうなビンテージが仰々しく陳列されている。確かに、40年ものともなると再現性は限りなく低いから高価値になるのも分からなくはない。しかし高額すぎではないか?という疑問も残る。
2016_08-22_think-about-the-branding-of-awamori-in-hong-kong03一方、泡盛はというと、10年ものの古酒が1万円前後で手に入る。こちらも庶民感覚では決して安くはない。しかしながら、なぜ、日本産ビンテージウイスキーと泡盛古酒の間に100倍もの価格差が出るのか?何年か前に放送された日本の朝のドラマが価格高騰の原因ではないだろう。日本贔屓の香港人はたくさんいるが、日本の朝ドラをこまめにチェックしている香港人にはそう簡単にはお目にかかれないからだ。
2016_08-22_think-about-the-branding-of-awamori-in-hong-kong04そもそも、ウイスキーは世界中で流通しているアルコール飲料であるのに対し、泡盛は世界的に見れば極めて限られた地域でしか飲まれていない。香港中のたいていのバーにはウイスキーが置いてある。そこそこ良いホテルのミニバーならば、必ずウイスキーの小瓶が置かれているはずだ。

日本酒はどうか。香港ではSAKEを置いていないバーはまだまだ多い。だが、著名なレストランのワインリストにSAKEの文字が載るのは珍しくないし、日本酒の資格保持者は香港で増える一方。これは、日本酒が食中酒として定着しつつある証と言えそうだ。少なくともアジア圏においては、今後もこの傾向は変わらないだろう。現状を見るに、日本酒の未来は明るい。

えてして日本人を含む中華系アジア人はブランドに弱い。その点、日本産ウイスキーと日本酒=SAKEは、カテゴリーとしてのブランディングに成功している。リッチでお洒落な人たちにとって、社交の場でSAKEを飲み、日本産ウイスキーを傾けることはここ香港ではひとつのステイタスなのだ。
2016_08-22_think-about-the-branding-of-awamori-in-hong-kong02今後、40年ものの泡盛古酒を100万円出してでも買いたいと思わせるためには、泡盛そのもののブランディングが鍵になるだろう。ブランドとは人の憧れを掻き立てるものだ(と、以前その道のプロから教わった)。嗜好品である以上、飲んでみたいと思わせるのが勝ちなのである。

まずは、県内すべての星付きホテルに、「最寄り」の酒造所の泡盛を置くというのはどうだろう。昨年度、沖縄県を訪れた外国人は約170万人で、そのうち、アジア圏からの渡航者がほぼ9割を占めるという。旅先ではその土地のものを楽しみたいと思うものだ。地域とホテルが一体となって地元のブランドをPRするというのは、まさにWin-Winではないだろうか。
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沖縄には、“泡盛古酒という「地元に根付いた」お酒があり、すごく美味しい”という認識が世に広まれば、AwamoriもしくはKusu(音的にはCouthが近い)が世界のバーに並ぶ日が近づく気がするのだが、いかがだろう。
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記者

沼田まどか|富山県出身。利酒師。2015年春まで和酒の営業兼バイヤーとして香港に11年暮らす。2015年夏から那覇市民。血液の1/3は香港人。泡盛を世界に広める活動を開始。

香港豆知識

香港は基本的にタックスフリーである。アルコール飲料についても、ビールは水より安く買えるし、ワインや日本酒も比較的手軽に楽しめる。ただし、アルコール度数30度を超えたとたんに100%の課税となるので、甲類焼酎が極端に高かったりもする。

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