工業所有権4法 特許・商標・意匠・実用新案 特別措置で混乱防止 “通常使用権”を認める(昭和47年1月30日)
泡盛業界 運用面で不安
復帰後の沖縄に工業所有権4法(特許、実用新案、商標、意匠)が即時適用される予定だが、通産省はこのほど4法案を沖縄に適用するに当っての特別措置(法集の一部改正)要綱をまとめた。
それによると、
①4法の条文を“読み替え”による一部改正や“みなす規定”を設ける。
②すでに沖縄で使用され、または準備中のものは、原則として“通常実施権”を認める。
③使用範囲を沖縄県の区域内に限定する場合もある。
としている。
このため、総体的に工業所有権は復帰時にそれほど大きな混乱はないものとみられるが、実際の運用ではかなり複雑な要素がからむので、沖縄の既存企業にとっては復帰不安が解消されたわけではない。関係業界の参考に供するため、条文改正の全文を掲載する。
条文改正の全文
特許法に関する特別措置
【第117条 第1項】
この法律の施行前にした特許出願に関わる特許権の効力は、この法律の施行の際、沖縄にある者については、その物が引き続き沖縄県の区域内にある場合に限る。
【第117条 第2項】
この法律の施行前に沖縄において特許出願に関わる発明の実施がある事業、又はその準備がなされていた場合には、特許法第79条虫に「現に日本国内に於いてその発明の実施である事業をしているもの、又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている」とあるのは「沖縄に於いてその発明の実施である事業をしていた者、又はその事業の準備をしていた者は、その実施又は準備をしていた」と読み替えて同条項の規定を適用する。
この場合において、この法律の施行の際存する特許権についての通常実施権は、この法律の施行の日に発生したものとみなす。
【第117条 第3項】
前項の規定により通常実施権を有する者以外の者であって、沖縄において昭和46年(1971年)6月16日(以下第119条及び第120条)において「基準日」という。
以前からこの法律の施行の日まで継続してこの法律の施行前にした特許出願に係る発明の実施である事業をしている物(以下この項において「発明実施者」という)は、その実施をしている発明及び事業の目的の範囲内において、かつ、沖縄県の区域内に限り、業としてその特許発明の実施する権利を有する。
ただし、当該事業の実施が沖縄の不正競争防止法(1961年立法)の施行法である場合において当該事業の開始の際、沖縄において他人が当該特許出願に係わる発明の実施である事業をしており、かつ、発明実施者がその事実を知りながら当該事業を開始したとき(発明実施者が当該特許出願に係わる発明の内容を知らないで自らその発明し、又は当該特許出願に係わる発明の内容を知らないでその発明をした者から知得した者である場合は除く)はこの限りでない。
【第117条 第4項】
前項の規定による特許発明の実施をする権利は特許法による通常実施権とみなす。
【第117条 第5項】
特許法第99条2項の規定は、前項の規定により特許法による通常実施権をする権利に準用する。
実用新案法の特例措置
【第118条】
前項の規定は、実用新案法(昭和34年<1959年>法 第123号)を沖縄に適用する場合に準用する。
意匠法の特例措置
【第119条 第1項】
この法律の施行前に沖縄において意匠登録出願に係わる意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業又はその準備がなされていた場合には、意匠法第29条中の「現に日本国内においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしているもの又はその準備をしている者は、その実施又は準備をしている」とあるのは「沖縄においてその意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしていた者、又はその事業の準備をしていた者はその実施又は準備をしていた」と読み替えて同条項の規定を適用する。
この場合において、この法律の施行の際存する意匠権についての通常実施権は、この法律の施行の日に発生したものとみなす。
【第119条 第2項】
前項の規定により通常実施権を有する者以外の者であっても、沖縄において基準日以前からこの法律の施行の日まで継続してこの法律の施行前にした意匠登録出願に係わる意匠又はこれに類する意匠の実施である事をしている者(意匠実施者)は、その実施している意匠及び事業の目的の範囲内において、かつ、沖縄県の区域内に限り、業としてその登録意匠またはこれに類似する意匠の実施をする権利を有する。
ただし、当該事業の開始が沖縄の不正競争防止法の施行法である場合において、当事業の開始の際沖縄において、他人が当該意匠登録出願に係る意匠又はこれに類似する意匠の実施である事業をしており、かつ意匠実施者がその事業を知りながら当該事業を開始したときはこの限りではない。