税審・輸入ウヰスキーで税審が答申した「酒類消費税」の中で輸入ウヰスキーの税率を本土税率に近づけるため現行の185%から65%引き上げて250%にするよう答申しているが、通算局商工部や輸入業者は「税率引き上げ反対」の立場を表明している。
この答申を作成した税審でも、業界代表委員が強く引き上げに反対したが、多数決で採用されたもので主席に答申書が送付された現在でもまだ問題含みの点がある。
審議会でも「単に税率だけ本土に近づけるのは問題である。税率を引き上げる前に本土の経済企業基盤も本土並みでなければならない。」と沖縄の現状を考慮に入れるべきだとする意見もあった。
ところで主税局側では「こんどの答申は諮問事項である“本土並み税負担目標三ヶ年計画”に沿ったものであり、特に高級ゼイタク品である輸入ウヰスキーの税率引き上げは当然だ、との態度をとりつづけている。
いっぽう、通産局は本土並みはもっともな意見であるが「その前に企業基盤。沖縄経済に占める観光収入の今後も考慮すべきであり、65%の大幅引き上げは観光政策面からも納得できない」と反対の立場である。
輸入業界でも当然税率引き上げに大反対と立法院、行政府に反対陳情を展開している。税制審議会(宮里 勝会長)は、去る3月1日、屋良主席に対し「本土並み負担を目標とした税制三ヶ年計画及び1969年度において実施すべき税制改正について」答申した。
今度の税制改正案は、現年度を初年次として1971年までの三ヶ年で本土の租税制度に近づけるため、国税、県税市町村税と税体系を明確に区分し、税源の適正な配分を図るのが狙いとなっている。
もうひとつの重要な点は、本土復帰に備え、各種税率の本土との格差是正を行おうというものである。このような税制、税率改正は、沖縄県民の厳粛な願いである「日本復帰」の初期までには当然改正しておかなければならないものである。
しかし、今日の答申で特に業界が問題としているのは「酒類消費税」のうちの輸入ウイスキー類の現行税率185%から250%へと一気に65%も引き上げるべきだと答申していることである。
この問題について、政府内部でも徴税の主管である主税局と観光、商工を主管とする通産局との間で微妙な食い違いを見せており、行政主席もこの答申案をそのまま採用するか、通産局や業界の意見を容れて税率を調整するかについては、検討中といったところである。
通産局、輸入業界が反対~主税局、ぜいたく品は当然~
輸入ウヰスキー類の税率引き上げの答案について、酒税通産両局の意見と業界の意見をみると、主税局では
(1)しやし的な物品に対する税率の引き上げは税法の建前からも当然のことである
(2)その前提となっているのはあくまでも「本土並負担を目標」としたものであり常識的ではあるというものである。
これに対し通産局では、65%の引き上げに反対の立場から
(1)観光政策に逆行するものであり、沖縄の魅力であるシヨツピングの魅力を削減するものである
(2)企業保護(輸入業者および観光サービス業者)の観点からも決して良策でない
と税率引き上げには反対の立場を示している。
いっぽう、洋酒煙草輸入商協会(会長宮島健次氏)でもこの答申に強く反対し、立法院、主席、主税局、通産局に対し強く現行税率の据え置きを陳情している。
同協会の反対陳情要旨をまとめてみると
(1)税審の答申で、輸入ウヰスキーに対する酒類消費税の税率を現行の185%から一気に65%も大幅に引き上げるように勧告しているが、これはまったく、現在の沖縄経済の立地条件や現状を無視したものである。
(2)税率だけを先走って直ちに「本土税率」に近づけることが緊急に必要であるか疑問がある。
(3)税審の答申では、「免税販売店が設置されているので観光客に対する影響は少ない」としているが、それは沖縄土産として持ち帰るのが対象となっている。
それ以上に観光客は、沖縄の民間の遊興飲食店で安い外国製高級ウヰスキーが飲めるというのが沖縄観光の魅力の一つでもある。年間約15万人(1968年時)とすると、この内、酒類消費対象者を12万人と仮定した場合、一人当たりの平均消費額198ドルとなっているが、この15%(30ドル)が遊興飲食費となっている。
すなわち、この30ドルは、宿泊費、土産品、外食費、交通費、その他を差し引いた純遊興費30ドルのほとんど半額が島内での酒類愛飲に費やされたことはいうまでもないが、仮に一人当たり、10ドルを酒類消費に当てたとすると、年間120万ドルに達するものとみられる。
したがって、税率引き上げによって観光客の落す金額が半減される結果を招き、ひいては沖縄経済にも少なからぬ影響を及ばすことになろう。となっている。