2017年3月15日(水)ANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー(那覇市泉崎)10階にて、喜屋武商店(那覇市・喜屋武善範社長)主催の「第11回コース料理と泡盛を楽しむグルメの会」が開催された。
この会は、琉球料理及び琉球泡盛をユネスコ無形文化遺産へ登録するための支援活動も兼ねており、開催回ごとに異なる酒造所の蔵人を招きつつ、その蔵の泡盛とホテルのコース料理とのコラボレーションを楽しむ会となっている。
今回、コース料理とコラボしたのは、沖縄県本島最北の蔵、田嘉里酒造所(大宜味村・池原弘昭代表)。やんばるの大自然の中で、小規模ながらも時間をかけ丁寧に醸された泡盛は、地元はもとより、全国にも熱烈なファンが多い蔵元の一つである。
会は、池原代表のあいさつでスタート。池原代表は主催者、参加者へのお礼の言葉に加え、「田嘉里酒造所は山原大宜味(やんばるおおぎみ)の北の方にありまして、すぐ隣は国頭村(くにがみそん)の浜という集落になっております。その大宜味村と浜の境界に屋嘉比川(田嘉里川)が流れていますが、その3キロ近く上流の湧水から水を引いて醸造している酒造所であります。」と自然豊かな大宜味村での酒造りについていくつかのエピソードを紹介した。
乾杯の酒(食前酒)として用意されたのは、KUINA BLACK(クイナブラック)5年古酒40度の炭酸水割り。そしてこのクイナブラック乾杯の後、会場がざわついた。このクイナブラックの炭酸水割りが驚くほど甘いのである。
料理は、季節の野菜と魚介類をふんだんに使った和食テイストの上品な味付けのものが多く、旨みの多い田嘉里酒造所の泡盛が主食、料理が副食のようにも感じられ、一つの完成された世界を作り出していた。
今回は、クイナブラックを中心に、炭酸水割り、お湯割り、ロック、水割りと様ざまな飲み方の提案があったが、ストレートで少量ずつ楽しんでほしいと出てきたのは、2007年に蒸留し、その後10年間ステンレスではなく、ほうろうタンクで育てたという秘蔵酒43度であった。
グラスを軽く回すと、グラスの側面の泡盛がとろりと降りていくのが目でもわかる中身の濃さ。香りは甘さの中にビターチョコレートのようなほろ苦さを秘めていて、飲めば43度とは全く思えない滑らかと甘さだ!
この秘蔵酒のことを、同席した音楽家はべーぜんどるふぁ(と、私には聞こえた)のようだと称えられたが、語彙力も楽才も乏しい筆者は、ただただ「上等、上等、上等、上等」と言いながら、香り、味、香り、味、香りと交互に楽しむのが精いっぱいであった。
田嘉里酒造所の泡盛は独特の力強さと味わいを持ち、古酒に育てたとき更にその味わいに深みが増すことを泡盛通たちは良く知っている。地域イベントなどで田嘉里酒造所の限定酒が出ると、早々に買い付けに来ている人々の顔ぶれは、泡盛通や泡盛居酒屋、泡盛バーの経営者など泡盛を良く知る業界人が特に多い。
会の途中で、看板娘の池原文子氏があいさつに立った。蔵のブログ(http://takazato-maruta.jp/blog/)では、おちゃめな一面を見せる通称“まるた娘”も、そうそうたる泡盛通たちを目の前にしていくばくか緊張した面持ちである。
「はじめまして、田嘉里酒造所の池原文子と申します。私は、田嘉里酒造所で働き始めて4年目になります。田嘉里酒造所は従業員が6名、社長が1名の総勢7名で頑張っている小さな酒造所です。
これまでは、本島の北部の地元地域を中心に活動しておりましたが、喜屋武商店さんのお力もあり、最近では中南部でもクイナの銘柄を飲んでいただけるようになりました。大変感謝しております。
田嘉里酒造所は、すでに国立公園に指定され、これから世界自然遺産登録も目指そうという自然に恵まれたやんばる地域にあり、これほどの大自然の中で泡盛を造らせていただいているのは我々だけであろうと自負しています。造りに関しましても、時間をかけ、手間を惜しまず、ゆっくりと腰を据えて造っております。
本日お出ししている泡盛ですが、今お手元にあるのがKUINA BLACK(クイナブラック)40度5年古酒になります。ラベルには5年古酒と書かれておりますが、実際には6年目、7年目にも入るような泡盛も詰めておりまして、味わい的にも深み、まろやかさ、甘さ、酸味、苦味も感じられる複雑な味わいの泡盛になっております。
また、先ほど秘蔵酒としてお出ししました泡盛は、ほうろうタンクで10年間寝かせた古酒となります。2007年の2月に蒸留し、44.8度の態状で10年間寝かせ、加水することなく現在43度になっています。ステンレスタンクですと、10年では度数はほとんど変わりませんが、今回の古酒はほうろうタンクの中でゆっくりと10年間かけて43度になっています。
味わい的にも、また格別にまろやかに仕上がりまして、そのまろやかさが原料のお米からくる香ばしさ、甘みなどを引き出してくれています。
できれば、少しずつ、チビリチビリと飲んでいただいて、お手元に届いたときの香りと、時間を経た後の香りの違いを楽しんでいただきたいと思います。
お食事の最後までとっておいていただけますと、より甘く、チョコレートのような香りを感じられるかと思います。」
会はそのまま、質問コーナーへ。
司会者が、「何か質問がありませんか?」と参加者に尋ねると、最初に出た質問が、先の異常に甘いKUINA BLACK(クイナブラック)5年古酒40度の炭酸水割りの作り方である。
「クイナブラックは、味わいの伸びが良いお酒で、お酒が炭酸水に負けないので、クイナブラック3に炭酸水7の3:7の割合で、結果的に12度前後になるように作りました」と返答。
さらに「氷を入れないのもポイントか?」との質問には「氷を入れると、味が引き締まりますが、古酒の風味を感じていただくには、冷やした炭酸水を入れる程度の冷たさがバランス的に最適だと感じ、あえて氷を入れませんでした。この点は、お好みで氷を入れていただいてもいいと思います」とのことだ。
その後も、出続ける参加者からの質問に、様々な角度から丁寧に答える姿は、少人数ながらも一人一人が真剣に泡盛を造っている蔵そのものの姿勢を表しているようで、大変心地よいものであった。
うまい泡盛と、うまい料理と、気持ちいい蔵を同時に楽しめ、心もお腹も大満足の会であった。最近ではクイナブラックも入手しやすくなったと聞く、ぜひ皆さんも、大自然やんばるがたっぷり詰まった田嘉里酒造所のクイナブラックをお試しあれ!
(二代目預)