砂糖の島のキビの波から生まれるお酒(グレイスラム/文・沼田まどか)

  • [公開・発行日] 2017/10/23
    [ 最終更新日 ] 2017/11/07
   

コルコル、という口の中で音符が跳ねるような、軽快な名前のラム酒があるのをご存知だろうか。「珊瑚の王冠」という意味の「Coral Colona(コーラル・コロナ)」を略して「コルコル」。南大東島が隆起珊瑚からなっており、すり鉢状の島の形状が王様の冠に似ていることからこの名がついたそうだ。
2017_10-23_grace-rum_minamidaito-island_okinawa01もともと無人島だったこの島に人が住み始めたのは1900年と言われている。鳥島のアホウドリの羽で財を成した玉置半右衛門氏が、孤島ビジネスに味を占めて南大東島を開拓する際に、この島を砂糖の島にすると決めて人材を募ったのが始まりだ。そう、黒糖ではなく、この島の主要産業は砂糖。南大東島で作られたさとうきびは、ここで原料糖に姿を変えて消費地に近い精製糖工場へと送られ、砂糖となって私たちの口に届く。日本国内で生産される、さとうきびの約4割が南大東島で作られているという。

2017_10-23_grace-rum_minamidaito-island_okinawa02このさとうきびの島で、国内初のアグリコール・ラムを造ろうと思い立った女性がいる。株式会社グレイスラムの金城祐子社長だ。2004年に、沖縄電力の社内ベンチャー制度を活用して起業された。沖縄県産のさとうきびを使ってラム酒を造れば、文字通り「地酒」になるとひらめいて、夫のお仕事とゆかりのある南大東島での試行錯誤が始まったそうだ。

離島の慣習やしがらみを少しずつ解きほぐしながら、純正南大東島産のラム製造にこぎつけたという。2005年の発売開始から12年を経たいま、「コルコル」は日本国内だけではなく、フランスやイギリスへも輸出されている。将来的にはアメリカやアジア各国へと販路拡大の夢は広がるばかりだ。

2017_10-23_grace-rum_minamidaito-island_okinawa03現在、世界中で広く流通しているラム酒は、インダストリアル・ラムと呼ばれ、さとうきびから原料糖を精製する際にできる副産物「モラセス(廃糖蜜)」を主原料としている。一方、搾りたてのさとうきびジュースに酵母を加え、発酵させたものを蒸留して造られたものをアグリコール・ラムと呼ぶ。こちらは、さとうきび生産地の近くでなければ製造できないこともあり、非常に個性的な風味を持つものが多い。全世界で生産されているラム酒のわずか3%がこれにあたり、さとうきびが主産品の沖縄県では、伊江島と南大東島、2つの蒸留所でアグリコール・ラムを製造している。

 

 

2017_10-23_grace-rum_minamidaito-island_okinawa04南大東島でのラム酒造りを、たった一人で担う玉那覇工場長によると、コルコルは「新鮮なさとうきびをかじったときのような瑞々しい味わい」を目指しているという。確かに、こちらのアグリコール・ラムは、搾りたてのさとうきびジュースそのままの、果実感あふれる香りが特徴的だ。ストレートで口に含むと、ツンとした酸味のあとに、ふわっと甘い香りが広がる。氷をひとつ浮かべると口当たりがまろやかになって、いかにも南国らしい、とろみのある味わいになる。浜辺で木陰のハンモックに揺られながら、グラス片手にのんびり昼寝がしたくなるお酒だ。

ラム製造工場の中は、糖蜜をぶちまけたような、濃厚で甘い香りが充満している。ところが、日々こちらに通っておられる工場長には、もはやなんの香りもしなくなったそうだ。身に沁みついてしまった香りは、自分ではなかなか感じることができないものだ。他にもたくさんお話を伺った中で、このエピソードが不思議と強く印象に残った。

ちなみに、今回は那覇空港を出発し、プロペラ機に揺られて島に降り立った。釣り好きの聖地としても知られる南大東島は急峻な断崖絶壁に囲まれているため、船でアプローチする際には岸壁から少し距離を置いて停泊し、人も貨物と同じようにクレーンで積み下ろされるそうだ。次回は、ぜひ船旅でのクレーン吊下げ上陸を体験したいと思っている。
2017_10-23_grace-rum_minamidaito-island_okinawa05(沼田まどか)

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