那覇にも登場!県民ステーキ!(シリーズ・食の太(ふと)道/文・繁多川芭蕉成)
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[公開・発行日] 2016/08/17
[ 最終更新日 ] 2016/08/30 - 飲む
食費は500円台の価格にして、行き交うトーシーは食べ人なり。車中のシートに座り、ハンドルを握りて甥を迎えるものは、日々食べ歩き、食べを趣味と化す。古人も多く食べたセロリあり。以下略。
――繁多川 芭蕉成(ばさない)
というわけで始まりました「食の太(ふと)道」。美味しい食堂で美味しい泡盛やオリオンビールなど飲みつつ料理や店の雰囲気を紹介するコーナーである。ホントは「食べ歩き」と「旅歩き」をかけて「食の細道」というタイトルにしようと思ったけれど、ボクの場合、よく考えてみたら食が全然細くないことからこのタイトルとなった。もちろん序章は「奥の細道」を参考にしたのはいうまでもない。――芭蕉成(ばさない)記す。
※ちなみにばさないとはウチナー口でバナナのことである
県民ステーキ
記念すべき第一回目のお店は「県民ステーキ」。何故「県民ステーキ」なのかというと、広島の大学に通い、帰省中の息子が「肉が食いたい、牛肉が。食うなら焼肉よりステーキがいい」というので、「そうだよな、沖縄県民なら牛肉を食べるなら焼肉よりもステーキだよな」といったところで、「そうだ、それなら県民ステーキを食べよう」と思い、息子とその彼女の3人で出かけたのである。
繁多川からバスに乗り国際通りのてんぶす前バス停で下車すると、いきなり赤いバラ一輪を持った集団がいた。ボクはカメラを構えて、てんぶす館周辺の写真を撮っていると、その中の一人の男と目が会ったとき、ツカツカツカと近づいてきて、「私はあなたを愛しています」と言いながら男がバラを差し出してきた。
ボクは男からバラをもらう趣味はなく無視をするというか、「今、仕事中だから」といってカメラを構えたのだが、それでも「私はあなたを愛しています」といいながら、バラを目の前につきだした。何がなんだか分からず、あまり理解もできなかったので「ハイハイ、ご苦労さん」といって、写真を撮るふりをしてその場を離れた。
後になって思えば「もう少し親身になってその男の心情を聞けばよかったのかなぁ」とか、あるいは「バラを受け取ればよかったのかなぁ」と思いつつ、ローソンの横の道(桜坂中通りって言うらしい)を通り、「県民ステーキ国際通り店」に向かい歩いたのである。
「県民ステーキ」の場所は桜坂近くにある。かつてこの周辺は昔ながらの雰囲気を残した飲み屋が広がる「桜坂社交街」と呼ばれた地域で、1960年代から復帰直後まで、那覇市最大の歓楽街として賑わっていた。
復帰後はだんだん寂れていったが、それでも数年前まで昔のお嬢さんたちがやっているバーやスナック、カフェーが軒を並べていた。店は戦後しばらくして建てられた古い建物が多く、水洗トイレではない店もあった。
最近は、再開発の名のもと古い建物がどんどんなくなり、2012年に開通した開南へ抜ける新しい道(桜坂中通りって言うんだって)ができると、世界的に知られているハイアットホテルや新らしい建物が建ち始め、現代的な風景と昔のままの原風景が混在する街並みになっていった。
ボクは昔から桜坂飲み屋街でも徘徊していたので、この新しい道(桜坂中通りって言っているらしい)を作るために見慣れた店の看板が一つ一つ消えていくのを虚しい気持ちで眺めていた。街の発展のための再開発は正しいと思うが、昔ながらの街並みや風情を残したままの開発はできないものかとつくづく思うのであった。
そんなことを思案しつつ歩いていると、いつの間にか「県民ステーキ国際通り店」の前に立っていた。よく見ると近代的な道向かいに比べ、こっち側は昔と変わらない佇まいを残す店が並んでいたのである。しかも、店の隣には50代以上の人には懐かしい70年代の音楽がガンガン流れる「バー エロス」があるではないですか。ボクもタマに行く店なのでそれだけでも嬉しくなってしまう。
「バーエロス」はいい店なのでいつか紹介したいと思うけど、今回は「県民ステーキ国際通り店」の紹介である。店内に一歩入ると、赤いビニールのチェック柄のテーブルクロスがかけられたテーブルと椅子が並び、飾りっけも何もない普通の食堂のような雰囲気になっている。少し違うのは店の中央にセルフサービス用の炊飯器やスープジャー、野菜の入った皿やドリンク用のポットなどが置かれていることだ。この店はドリンク、スープ、サラダ、ごはんが自由に飲み食べできるのだ。
「県民ステーキ国際通り店」は2016年の7月9日にオープン。元々は那覇市曙にあった「お食事のでいご」がスタート。ステーキ屋を始めたきっかけを店主の真栄田さんに聞いたところ、「自分で商売をする時に居酒屋かステーキ屋をやりたかったが、居酒屋を先に始めてしまった。それで10年経ったら今度はステーキ屋をやろうと思った」という。
その時、縁があって8年前に曙で始めた「でいご」という名の食堂を、ステーキ屋を実践するため店名をそのままに食堂からステーキ屋に変更した。その後2015年11月に糸満の食堂を居抜きで借りて、「県民ステーキ」と名前を変えて曙から移転をして名実ともにステーキ店となった。県民ステーキ糸満店はその美味さが口コミで広がり連日の大盛況。そして、満を持してこの7月に那覇の桜坂中通りにお店を開いたのだという。
県民ステーキというネーミングは「今、県内のステーキハウスはほとんど観光客がメインになり、いつでもいっぱいでなかなか地元の人が入れない状況ですよね。値段的にも観光客プライスになっているため、入りにくいと思うんです。それで、安くて美味しいステーキを県民の手に取り戻したいと思い、この店名になったんです」と真栄田さん。
「安くて美味しい」という言葉通りにお肉も厳選したものだけを提供している。また、真栄田さんは牛肉に関してはかなりの目利きだという。なので県産和牛も美味しいけれど、沖縄の人はサシの入った霜降り牛よりも、牛肉の本来の旨味を感じる赤身が好きな人が多いということで、やわらかくて旨みのある美味しい肉を厳選してお店に出している。
おすすめメニューは県民ステーキ。150gから500gまであり、料金は1,480円からと手頃。ハンバーグや上タン、アグーステーキがセットになったコンビプレートダブルも人気だという。そういう話を聞きながらオリオンドラフト生ビールを注文。
何を食べようか思っていたら、ビールには「バジルソーセージ100gと県民ステーキ」が合うよ、といわれたのでそれを注文。ジューシーなバジルソーセージの旨みがビールとマッチしすぎて、思わずビールをお代わりしてしまった。
ご飯はステーキと食べるためにセルフで入れ、ついでにサラダと牛すじを使ったスープもセルフで入れてきた。このスープが普通に牛汁として一品出せるほどの美味しさがあり、ご飯にもよく合っていた。もちろんステーキは肉汁たっぷりでやわらかく、噛めば噛むほど肉の旨味が口の中に広がり、何グラムでも食べたくなるのだった。
実際にボクの息子は「県民ステーキ100gと上タン100g」を注文し、サラダにスープ、ご飯を2杯食べたが、もっと牛肉が食べたいと県民ステーキ150gを追加注文、さらにご飯とスープを飲んで満足したようだった。
お腹も気持ちもいっぱいになって店を出てバス停に向かって歩いていると、息子が「お父さん、ステーキ美味しかったね」といい、「広島に戻る前に、また食べに行こうよ。もちろん、父さんのおごりで。今度は県民ステーキ400gを食べようかな」とてんぶす前バス停で呟いたのであった。
店舗情報
店舗名:県民ステーキ 国際通り店
電 話:098-959-1612
H P:http://okinawa-steak.net/
駐車場:お店裏手のコインパーキングをご利用下さい。
住 所:那覇市牧志3-8-31