【提言】温かい措置に報いるために 瑞穂社長 玉那覇 有義(昭和47年1月30日)

  • [公開・発行日] 1972/01/30
    [ 最終更新日 ] 2016/06/01
   

1972_1_30_in-order-to-reward-the-warm-measures琉球泡盛は琉球王朝時代から保護育成されて家内工業として成長してきておりますが、戦後は人口の増加に伴い消費も伸び、また企業合理化によって家内工業から企業化へ脱皮すべく、弊社では工場の改増築を計り、2万石の生産工場を完成させたのであります。

現在、全琉の工場を合わすと、約6万~7万くらいの生産は可能だと思います。しかるに現在消費されている泡盛の年間数量は4万2,000石前後であります。

人口対比で隣県の鹿児島県と比較してみますと、人口180万の鹿児島県で焼酎の年間消費量が15万石(1人当り年間8升3合3勺)という数字をみた場合、沖縄は100万人の人口に対して、どうしても年間8万石は出すべきであり、泡盛業界はあらゆる角度から検討すべき時期にきていると考えます。

この泡盛は貯蔵すればするほどクース(古酒)として昔から珍重されてきておりますが、それを商業ベースに乗せて実行したのが当社製品の10年もの古酒瑞穂であります。こう云う風に貯蔵することによって、泡盛の真価は立証されております。

私は復帰が決まって本土政府の沖縄に対する第3次要綱まで出る時点で、本土政府に沖縄の泡盛の保護育成を強く訴え、特に「①泡盛の定義」「②貯蔵設備」「③原料米問題」を進言した。

上記①~②の内容を或る政治家を通して山中総務長官に打診したところ、200万ドルはかかるが①と②については快諾が得られ、③は今後接渉いかんによっては認められそうだと云うことであったが、この③は御承知の通り暫定期間認められたのでありますが、①・②について取り上げられなかったことは残念に思っている次第であります。

今度、本土政府の特別措置で5ヶ年間の税率の軽減額では199万1,000ドル余になる。これを各人が受け取ると云うことは業界の過当競争を招く恐れもあるので、積立方式(連合会に)はほぼ賛成であるようでありますのでこれを採用し、199万1,000ドル余を基金として本土政府から200万ドルを前借りの形で融資して貰い、貯蔵設備(4万石容量)をして貯蔵することによって本土並み企業に、いや本土業者と十分な品質での太刀打ちも出来るのではなかろうか。

これが本土政府の温かい措置に対する私共の当然の義務でもあり、目的も達成されるのではなかろうか。この際業界は今までの殻から思い切って脱皮し、泡盛企業を子々孫々に伝える100年の大計の土台を打ち立てるべきである。

そして来る昭和50年(1975年)に開催される沖縄海洋博には、私の構想であるが、敷地1万坪を確保し、その真ん中に近代ビルを建て、貯蔵施設をして、予想される世界からの参観者300万人に泡盛のPRをすることによって、文字通り世界の銘酒として君臨するのではなかろうか。

洋酒、ビールが本土政府の減税措置によって値下げした場合、一体泡盛はどうなるかと云う心配は毛頭考えられないことではなかろうか。このように施設をすることによって販売の一元化が可能になり、経費の節減を図り、利益が上がることによって事情で廃業する業者に対して減税分を返すとか、転業資金の融資にも利益から出すことができるのである。

このような遠大な構想をもって業界が一丸となって当たることによって、全ての面に於いて大きな力となり、業界100年の礎ができるのである。以上が私の構想であり、提言であります。

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