部落ごと“まさひろ”党 国頭村の安波部落
都市地区は勿論のこと、遠くは南部、国頭にいたるまで、今、その本格派の泡盛“まさひろ”が静かなブームを呼んでいる。とにかく百聞は一見にしかず、と云うことで記者は新春早々カメラをかついで現地探訪をしてみた。
先ず国頭村安波部落、辺土名から更に北へ1時間10分位かかる谷間に安波川をはさんで点在する人口364名の部落である。なんと、遠くヤンバル船時代から与那原から泡盛“まさひろ”を運んで飲んでいると云う、文字通り部落ごと“まさひろ党”である。
今では同字の共同売店のトラックで石嶺の比嘉酒造(比嘉昌宏社長・現まさひろ酒造)まで“まさひろ”を仕入れに来るが、昔はヤンバル船で運んでいたそうだ。部落ごと1種類の酒を飲んでいると云うのは、沖縄にはその土地の酒以外に例をみない。
「人口364名で1日の消費量が4合瓶40本、2合瓶40本、1升瓶5本です。」と共同売店では帳簿を見ながら説明していたが、沖縄一消費する部落ではなかろうか。以前は1人で1升5合平らげた豪の者もいたが、今では少し量が落ちているそうな。
少し落ちているといっても、まだ1升位はへっちゃらと云うことであろう。とにかくこの部落で“まさひろ”を買いに来る青年は、おいナポレオンくれと云う位だから、いかに“まさひろ”に馴染んでいるかがわかろう。
20代はコーラで割って飲むが、30代からはオールストレートである。だからこの部落の人は味には敏感な人が多い。酒もめっぽう強いが気象条件も厳しく、沖縄では一番寒いところと云われているところである。
詳しくは別記するとして、安波から那覇にUターンして市内のおでん屋、山羊料理店を覗いてみることにした。まさに“まさひろ”繁昌節(はんじょーぶすぃ)でもひねってみたくなるほど、今や“まさひろ”ブームである。
それと云うのも、同社の比嘉社長が研究熱心で絶えず研鑽を重ねてきた賜であり、又同氏の気さくな人間味が大きくプラスしていることは間違いないことだ。1972年は泡盛“まさひろ”が一段と大きく飛躍する年であろうが、先ずは直接飲んでいる安波部落の青年団長の方々、又那覇市内の山羊料理店経営者、おでん屋のカミさん方に“まさひろ”の売れ行きや人気について直接話しを聞いてみよう。
これを読んでみて、なるほど“まさひろ”とはこんな酒か、では1度試飲してみようと云うきになれば、もうあなたもその虜になるのは先ず間違いない。
安波青年団長・比嘉利幸さんの話
トラック1台の酒で1ヶ月ないですね、この部落は10名の青年ですがスポーツは披群の腕前で、バスケット、バレー、駅伝にしても村だけでなく名護市がも勝でないですよ。それも“まさひろ”のお陰でしょう。
スポーツは全琉に誇りたいですね。この部落にはミスター泡盛ベストワン、ツーと云う風に順位もあるんですよ。これは単なる量だけで決めるんではなく、飲みっぷりも勿論ですが酔いっぷりやスマートさ、品行まど総合採点で決めるわけです
又、バスケットの試合が名護である時などは、その慰労会用として“まさひろ”を売店で買って持って行きますし、他字で祝いなどのある時にもひっさげて持っていきます。とにかく“まさひろ”以外は絶対飲みませんね。
メーカーではそういう造り方はしていないと思いますが、大きい瓶ほどうまいような気がしますね。“泡盛まさひろ”は郷愁の酒でもあります。時たま那覇のボーリング場からの帰りに“まさひろ”を持って歩く人を見かけると兄弟みたいに感じますね、なんとなく語りたくまる思いにかられるんですよ。
新垣米蔵さんの話
泡盛では“まさひろ”が1番よい。翌日頭にこないですね。去年から沖縄タイムス駅伝に出場しておりますが、今年もアルコールエンジンでぶっ飛ばそうと、今一生懸命に練習をしているところです。他の酒がもし口に合うんだったら試飲してみてくださいと置いて行ったが、その酒まだそのままありますよ。
城間正義さんの話
私は久志村的出身で、ここに来てから6年になりますが、最近久志村の大浦も“まさひろ”がだいぶ人気があります。私は酒を飲み始めてまだ2ヶ月位しかありませんが、上戸の部にランクされでおります。勿論“まさひろ”一辺党です。
当山光彦さんの話
まさひろ以外絶対飲みません。受け付けないんですよ。とにかく“まさひろ”はマーハッサー。云うことないですね。“まさひろ”のオヤジによろしくお伝え下さいね。ウイーッ。
山羊料理店・玉城テツ子さんの話(那覇市牧志2丁目1番地在)
うちの店では1晩で1升瓶1本位い“まさひろ”が売れております、他の酒も1酒類位い置いてありますが断然“まさひろ”が売れゆきがいいですね。いい酒はそれをつくる人もいいですね。比嘉さんは気さくな万で、大体うちのお客さんには事業家が多いんですが、桜坂辺りからの流れ客も多いですね。あなたもどうぞ1杯召し上がって下さい。お酒だけ飲まないで。又いらっしゃいね。
山羊料理店「宏」の具志堅宏子さんの話(那覇市東町・ニュージャパン通り)
うちの周囲は高級マンションやアパートが多く、したがいまして客筋もいいですね。開店当初から“まさひろ”を売らせて頂いておりますが、人気はよいですね。お酒を飲む方は山羊料理を好みますし、泡盛とはとくに合うんでしょう。どうぞこれをご緑にまた泡盛“まさひろ”をお飲みにいらっしやって下さい。
おでん屋「古都(波之上の松の下向かい側」)、おでんや屋「のんのん(泉崎病院横)」のお話
「古都」では“まさひろ”を甕に入れて置いてあるが、人当たりのよいマダムさんは、最近特にお客さんの評判がよく、“まさひろ”はよく出ておりますねと語っている。一方で「のんのん」でも他酒類よりも人気は良い。
この両方の店の特徴のひとつはマスコミ人の常連が多く、気をゆるして落ちついて飲める雰囲気であると云うことだ。
おでん屋「東大(栄町)」
この店も“まさひろ”を売ってながらくなるが、やはり人気は良く、非常に庶民的な雰囲気を持つ店である。
終わりに
本格派の泡盛“まさひろ”はまさに、ただ今静かなブームをよんでいる酒である。“まさひろ”探訪は遠くは国頭村の安波部落にはじまり、栄町の「東大」で一応終わったが、南部の与那原、佐敷、知念、具志頭、玉城の各村は“まさひろ”一色であるが、南部一帯の探訪は次回にゆずることにしたい。