泡盛、復帰に伴う諸経費等を勘案して価格検討の時期(昭和46年1月10日)
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[公開・発行日] 1971/01/10
[ 最終更新日 ] 2016/01/26 - 読む
近年、琉球泡盛のよさが消費者に理解され、沖縄の全酒類消費量の約60%が泡盛のシェアだと云われているが、それは各メーカーの企業努力による品質向上の結果だと云える。しかし今後復帰までに幾多の面で体制固めを業界がしなければ、到底他の中小企業並みの企業経営は困難になってくることも予想されている。
泡盛業界の場合、本土復帰対策はその地域によって違ってくるが、大体の業者が近促資金や産発資金の融資の適用を受け、設備改善や新設拡張を行なって、前向きに取りくんでいるが、これで一応は外廓(がいかく)はできつつあるとみてよいわけだが、今後内部的な問題として、現在使用している他酒類メーカーの容器を廃し、琉球泡盛独自の新容器の購入対策であり、それに伴う各メーカーへの負担率、蓄積であろう。
又、年々上昇していく人件費の問題、中でも年間ボーナスが1番高いととろで20割という
程度で、ところによっては手当ての名にはほど遠いというのもあり、加えて地味な仕事で
若者の定着率もよい方ではないのが実状のようだ。
そう云う実状のなかでの設備投資であり、その金利や貯蔵に伴う金利人件費対策、マージン引き上げ等を考慮に入れた場合、生産価格を検討されるべき時期であろう。
例えば現在、2合瓶のメーカー出し値が17セント、卸業者売り値が18セント、小売業者が20セント売りになっているが、税金約4.8セント、瓶代約0.5セント、王冠・ラベル・人件費で7厘となっているが、その他にも燃料費、紐、輸送費等があり、1.8Lの場合、本土の焼酎と比較してみると25度の焼酎(1.8L入)が450円(1ドル25セント・小売価格)で卸マージン6%(7.5セント)、小売マージン15%(18セント7厘5毛)ととなり、泡盛は卸、小売共マージンは各5セントと低く、95セントの小売り値に対し、生産者価格は85セントと、その差13セント7厘5毛。
しかも焼酎が25度であるのに対し、泡盛は30度である。泡盛を同じ25五度に換算してみると、1升2合となり、つまり本土の焼酎に対比する限りでは、1升に対して2合はタダで出しているととになる訳だ。
この20%ものサービスの分をどう受けとめるか、その上歩溜り面でも本土業界が高く、そう云う面のギャップも業界の課題であり、現在使用している容器の他メーカー空瓶1.5セントもの使用からの脱皮に伴う新容器が約7~10セントとみた場合、とても生産価格が追いつけそうになく、人件費も10年前の約倍と云われ、それも年々急テンポのうなぎのぼりの現状だ。
マージンの引き上げによる卸、小売り業者の積極販売意欲の向上新容器開発費、人件費対策、更には復帰以降に予想される原料の値上げ等、総合的な改善策は早急に検討されるべき大きな問題といえよう。
そう云った基本的な面の改善策で、宣伝費の予算計上も可能となってこようし、琉球泡盛は対本土にも大きく伸びる1つの大きな要因となってくるであろう。いずれにしても、詳細な生産者価格表を割り出して、消費者啓蒙にのり出すべき時期にきているといえよう。