第6回「泡盛川柳」結果発表!(琉球泡盛倶楽部)
- [公開・発行日] 2025/11/01
- 飲む
琉球泡盛倶楽部(長嶺哲成会長)は、令和7年11月1日(土)、第六回泡盛川柳における受賞作品を発表した。応募総数は330人より857首。受賞した川柳の作者には、副賞として琉球泡盛5升甕等が贈られる。
入賞川柳の審査員による選評
★大賞
沖縄のタイムカプセルクース甕
【評】
沖縄・タイムカプセル・クースと、よく耳にするフレーズが使われている1首。ただ単に 読んでしまうと、何気ない、ありがちな印象を受けてしまうが、じっくり読むと非常に深い内容の川柳だと感じられた。実際、選考会議においても最初は選には漏れていた。しかし、時間の経過と共に、次第に存在感が増してきたのである。
まず、タイムカプセルという文言である。当初は個人的な意味合いで使っているのであろうと思っていたのだが、視点を変えて味わってみると、非常に奥深いことに気づかされたのである。それは、個人的な単純なものではなく、時間や空間を超越した意味を持つということ。これが「我が家」であるとか、「我が父」というフレーズに置き換えてみると理解できるであろう。「沖縄」というフレーズを使うことによって、泡盛だけではなく、琉球・沖縄史や世界といった大きな世界を感じることができるのである。
そこには、この句独特の壮大さを感じることができた。
過去5回の泡盛川柳にはない、スケールの大きさがある。
読めば読むほど、味わえば味わうほど、味わい深い感覚にとらわれる素晴らしい川柳であった。
☆優秀賞
妻と飲み酔ったフリして「オレ好きか」
【評】
最優秀賞とは異なり、内向きだが、妻への愛情に満ち溢れた可愛らしい句。
この泡盛川柳では、妻を題材にした句は多い。6回目を迎えた今回も、そのような句は多かった。過去5回の作品を振り返っても、「熟成が進む古酒と恋女房」(第1回)、「妻だけが知る水割りのいい加減」(第2回)がある。しかし、この句の特長は、妻と最初に持ってきながら、自分自身の思いを込めているところである。
泡盛や古酒の熟成に妻をかけて詠まれた川柳がほとんどを占めるなか、この句の独創性がみえてくる。
愛する妻と飲みながら、素面では口にできない言葉「オレ好きか」と言ってみる。その光景が目に見えるようである。返ってくる言葉にはふたつ考えられるが、そのどちらにも対応する夫の姿も想像できる。
夫婦の会話に泡盛が一役買っており、ユーモアもあり、絆をも感じることのできる秀句であった。
〇ユーモア賞
1DK増える古酒と減る寝床
【評】
泡盛好きには飲んで楽しむ人と、飲むのも好きだが、泡盛を揃えておきたい、ビンや甕を愛でるのも好きな人、泡盛を寝かせて古酒になるのを待つ人等々、さまざまなパターンがある。
この作品の作者はどのタイプであろうか。古酒にしようと買ってきたのだが、ガマンできずに開けてしまうタイプではないように思われる。
買わないでおこうと思っていても、つい衝動的に購入してしまうのであろう。しかし、後悔はないのでは?。ただ、衝動買いなだけに、置くスペースを考えていないので、寝る場所が次第に侵食されていく。ふと我に返ったときに呆然としてしまう作者の姿が垣間見えるようである。
多分、独身だろうな。同居人がいたら、絶対に邪魔に思われるだろうなと、ついつい想像してしまう、そこはかとないユーモアを感じさせられる1句である。
泡盛好き、本好きの選者にとって、同じく泡盛と本に寝床を侵食されている者として、身につまされる内容でもあった。
【総評】
第6回を迎えた泡盛川柳。今回の応募作品は866句。例年と同じく、家族や酔い方、泡盛の味や味わい、古酒作りに関する作品が多かった。そして沖縄の風土と泡盛を描いた作品も多かった。
三線の喜怒哀楽を知る古酒
ヤンバルじゃオバアはカメカメオジイはクイナ
カラカラの余韻に響く首里の夜
その中で、最優秀賞・優秀賞・ユーモア賞の3句は、これまでの泡盛川柳にはみられなかった視点から描いた内容で、独創性のある作品が選ばれた。
また、時代を反映する句が多いのも川柳の特徴。ことしは、古米・コメ不足・ジャングリア・万博・●●ファースト・大谷選手などをネタにした句が多かった。まさしく時代を反映したジャンルが川柳である。それと泡盛を結びつけた作品の多さが、泡盛川柳の特徴ともいえることを実感させられた。ただ、沖縄尚学の甲子園優勝ネタが多いであろうと予想していたが、思いの外少なかった。高校球児の明るさと、泡盛の明るさはあまり結びつかなかったのだなと考えた次第である。
泡盛川柳のもう一つの特徴がある。沖縄戦関連である。ことしは、選に漏れたが、鎮魂や悲しみに満ちた川柳が多いのも、沖縄で川柳を創るうえで忘れてはならない内容なのだと考える。
終戦日遺影とクース飲み交わす
平和祈る泡盛の香に島の風
良き風味歴史刻んだ平和酒
もちろん、選者の評価は高かったが、惜しくも選に漏れた作品もいくつかある。
泡盛を土産に訪ねた移民の地
(これまでの泡盛川柳にはなかった移民を題材にした句。しかし、素直すぎた。もう一捻りあれば最優秀賞に選んだとの評であった)
知らぬ間に夫(つま)の築きし古酒城(クースじょう)
(これも優秀賞の候補作品。今回選んだ「1DK増える古酒と減る寝床」と対極をなす作品で、最後までどちらを選ぶか議論となった。優秀賞はペーソスを感じるが、この作品には川 柳独自のユーモアがもう一歩だったということで漏れたが、評価が高かった秀句であった)
降格し泡盛届かぬ盆と暮れ
(これは川柳らしい句。役付きのときは、中元や歳暮として届いていた泡盛、、、それもジョートー酒であったろう、、、が届かなくなったことは想像に難くない)
結びに、今年も泡盛川柳に応募していただいた皆様には感謝を申し上げる。そして選考する際、川柳を味わいながら、泡盛を飲みたくなったのも事実。
来年も川柳独特のユーモアとペーソスのある作品を期待したい。
泡盛川柳審査員長 宮城一春























