音楽ファンが夏フェスを心待ちにするように、毎年夏が来ると在京沖縄ファンのテンションを上げてくれるイベントがある。
“沖縄”と冠が付いた多くのイベントの中でも歴史、内容、規模で頭一つ抜きん出た沖縄物産展、伊勢丹新宿店の「めんそ~れ~沖縄展」がそれだ。
第24回目となる今年。会期は7月25日(水)~30日(月)の6日間。
伊勢丹新宿店公式ホームページによると、実に79もの沖縄企業、メーカー、店舗が出展する大催事だ。
泡盛メーカーからは「沖縄県酒造協同組合」「神村酒造」「久米島の久米仙」「久米仙酒造」「瑞穂酒造」「多良川」「比嘉酒造」「まさひろ酒造」「瑞泉酒造」「金武酒造」の10メーカーが来展。そして那覇の泡盛バー「泡盛倉庫」がカウンターを構えた。
これほどの多くの泡盛メーカーが自慢の泡盛を持ち寄る場は、沖縄県外では数少ない。
ということで、SNSで募集をかけ泡盛新聞東京支部では「初心者向け泡盛勉強ツアー」なるものを企画・主催させていただいた。目的は、泡盛ファンの掘り起こしである。
開催日は29日(土)。
この日、東京には「台風直撃」の予報が出ていたが、そんな中でも5人の生徒(参加者)が集ってくれた。沖縄出身の琉球料理の先生、沖縄でのリゾートウエディングで泡盛の虜になってしまったご夫婦、日本酒の勉強会を主催されてる日本酒のエキスパート、沖縄でも仕事経験があり文化風俗にも詳しいラジオディレクター。
初心者と呼ぶには少々頼もしすぎる生徒たちに、講師役の私を加えた計6名のパーティーで、開店と同時に会場入りした。
今回のツアープランは、全泡盛ブースを回りそれぞれの泡盛や蔵の特徴などを勉強。試飲もさせてもらい、最後に気に入った1本を共同購入するというもの。
6名がブース前を占拠する形になるので比較的客の少ない時間帯にスタートしたつもりであったが、さすがは人気物産展の週末、会場内は、開店前から行列を作っていた客たちで開店直後から賑わいを見せていた。
回る蔵の順番は特に決めず、その時比較的に空いてるブースを辿っていくことに。
まず向かったのは、瑞泉酒造ブース。ところが、到着前にそのすぐ向かいの南都酒造所ブースで新商品「琉球レモンサワー」のをすすめられ1杯目としていただく。
シークワーサー、泡盛、きび砂糖のみで作られたシンプルでさっぱりとした味わい。泡盛勉強ツアーの良い乾杯酒となった。
あらためて、瑞泉酒造へ。
昨年秋に発売された「migaki」(8年、12度)のプレミアム(10年、44度)がお目見えしていた。優しくしっかりとした味わいが日本酒好きの生徒に好評だった。
続けて久米島の久米仙、沖縄県酒造協同組合、まさひろ酒造の順に訪問。蔵の特色や成り立ちなどを伺いながら、代表銘柄や新商品などを次々と試飲した。
中でも、まさひろ酒造「まさひろOKINAWA GIN」は会場内の注目の的で、「なぜ泡盛酒造所からジンが?」と驚く生徒も。
その後、多良川、金武酒造、神村酒造と訪蔵を進めたところで、酔ったそぶりを見せない生徒たちの頼もしさに不安を覚えつつ、一旦昼食休憩を挟むことに。
フィッシュバーガー、てんぷら、クーブイリチー、いなむどぅちなどの沖縄名物を、出展ブースで買い物。イートインコーナーに持ち寄って参加者でシェアした。
前半戦の感想を語り合いながら、ここで各々自己紹介をし生徒同士の親睦を深める。
ビールを買ってきた生徒2名には戦慄を覚えた。
後半戦は比嘉酒造ブースからスタート。減圧蒸留のエース銘柄「残波」でお馴染みの比嘉酒造だが、物産展では毎年常圧古酒のクオリティの高さも見せてくれる。瑞穂酒造、久米仙酒造のブースを訪問し、10メーカー全てを回り終えた。
相変わらず顔色一つ変えない生徒たちに驚いたが、対応してくださったメーカーの方に聞くと、試飲のカップをうまく持てなくなっていた生徒もいたとか。
感想戦のため、泡盛倉庫のテーブル席へ移動。
泡盛サングリアと、神村酒造「暖流」のハイボールを注文。全員でシェアした。
勉強会の仕上げは、この日気に入った銘柄の「共同購入」。どの銘柄が良いか、全員で話し合った。
全ブース回って試飲したお酒はおそらく40銘柄以上。意見は大いに割れた。
10分間の”アディッショナル・タイム”を設けて、もう一度、確認のため、今度はバラバラに会場を回る。再度集合した生徒たちが、共同購入したい銘柄名を一つずつ挙げると、1順目で複数票を集めた銘柄に決まった。
昨年の産業祭り(台風で中止)に合わせ発売された新商品で、泡盛らしい深みのある味わいの逸品だ。
全員で久米島の久米仙ブースへ出向き、商品を購入し、営業の仲宗根営課長と一緒に記念写真を撮っていただいた。この久米島の久米仙8年古酒は、持ち帰ってすぐに飲んでもよし、またこのメンバー集まれるときまで取っておいてもよし、さらに熟成を目指してもよし。勉強会のいい思い出としてくれたら幸いだ。
「泡盛初心者」だったはずの生徒たちも、泡盛のことをより深く知り、メーカーの方々の熱心な姿勢に触れたことで、より泡盛に対して興味を持ってくれたようだ。
解散後、散り散りになった生徒たちが再び泡盛ブースに戻り買い物をしている姿があちらこちらで見受けられた。
(文/岡山進矢東京支部長:写真/岡山進矢・げんちゃん)