泡盛製造業の経営状況と中長期的重点施策を発表(沖縄県酒造組合)
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[公開・発行日] 2016/10/29
[ 最終更新日 ] 2016/11/01 - 泡盛検定
沖縄県酒造組合(玉那覇美佐子会長)は、平成28年10月28日(金)、泡盛製造業者の経営状況等を報告するとともに、来年度より5年間の泡盛業界振興に向けた取組について発表した。
3分の1が営業赤字
現在休業中の1社を除く組合傘下45泡盛製造業者の平成26年度決算ベースでの営業利益(酒類関連のみ)は、2社が1億円超、3社が5,000万円超、5社が1,000万円超、8社が500万円超、12社が500万円以下、営業損失(赤字)業者が15業者と、約3分の1が営業赤字であると発表。
【営業利益の階層別事業所数】
階層 | 事業所数 |
---|---|
1億円超 | 2 |
5,000万円超~1億円以下 | 3 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 5 |
500万円超~1,000万円以下 | 8 |
500万円以下 | 12 |
営業損失 | 15 |
合計 | 45 |
(備考)平成26事業年度決算
清酒製造業者と比較して、泡盛製造業者の製成数量は20分の1、利益率は約半分
国税庁がまとめた清酒製造業の概況(平成25年度調査分)を基に、泡盛製造業者(平成26年度データ)と清酒製造業者を比較すると、事業者数は、泡盛製造業者が45社に対し、清酒製造業者は、1,178社、年間売上高は泡盛が169億4,500万円に対し、清酒413億1,890万円、年間の営業利益は、泡盛2億2,500万円に対し、清酒98億9,100万円、営業利益率は泡盛が1.3パーセントに対し、清酒が2.4パーセントと、泡盛製造業者の経営基盤が清酒製造業者に比して脆弱であると説明。
【清酒製造業との比較】
泡盛製造業 | (参考)清酒製造業 | |
---|---|---|
企業数 | 45社 | 1,178社 |
売上高 | 16,945 | 413,189 |
営業利益 | 225(百万円) | 9891(百万円) |
営業利益率 | 1.3% | 2.4% |
※泡盛製造業は平成26事業年度の状況
※清酒製造業は専業割合50%以上の1,178社分における平成25事業年度の状況(「清酒製造業の概況(平成25年度調査分)」(国税庁)から作成)
また中心的な事業者を見ると、泡盛製造業者は年間製成量が2,000~5,000キロリットルの事業者であるのに対し、清酒の中心的製造業者は年間製生量が5,000キロリットルを超える大規模事業者であると分析。事業者の規模的に見ても泡盛製造業者は清酒製造業者に比して弱小であるため、酒税の軽減措置の延長を含めた引続きの業界への支援が必要であると訴えた。
5年以内に全国単式蒸留焼酎(焼酎乙類)シェア5%台を目指す
来年度から5年間の目標として、沖縄県内出荷数量を1万7,000キロリットル(H27年比で3.9パーセント増)に、県外出荷数量を7,000キロリットル(H27年比で243パーセント増)に、全国単式蒸留焼酎のシェアを5%台にすることを掲げた。そのための取組として次の5分野23の重点施策が示された。
<商品開発>
●若者、女性、観光客などの消費者ニーズにあった泡盛を開発する。
●泡盛カクテルの開発と普及推進を行う。
●泡盛ベースのリキュール製品の開発を推進する。
●泡盛好適原料米(インディカ米)の育種と試験製造を産官学連携で行う。
<需要喚起>
●商談会等、県外・海外向けプロモーションを強化する。
●女性や若者をターゲットとしたイベント等を開催する。
●ホテル組合や沖縄観光コンベンションビューローとの連帯を強化する。
●空港ターミナルや国際港で観光客向けイベントを開催する。
●専門家の支援によるマーケティングを強化する。
●SNS等の各種メディアを使った情報発信を推進する。
●著名人等によるマスコミ・口コミでの話題喚起を促す。
●泡盛乾杯条例制定に向けての取組を強化する。
●一万人で泡盛乾杯事業(運動)への支援を強化する。
<ブランド育成>
●古酒のブランド化を推進する。
●首里城「銭蔵(琉球王朝時代の泡盛蔵)」の復元要請活動を行う。
●銘柄数の絞り込みを推進する。
●琉球泡盛の「仕次ぎ(古酒製造法)」に関するが科学的検証を行い、公正競争規約の改正を目指す。
<経営基盤の確立>
●経営の透明化に努める。
●個人事業主である酒造所の法人化を推進する。
●共同配送センターの有効利用による流通コストの削減を行う。
●オリオンビール(株)との連携により「古酒の郷」事業を推進する。
●琉球料理と泡盛のユネスコ無形文化遺産登録に向けた活動を支援する。
<社会貢献>
●貧困家庭の児童・生徒に対する教育支援を行う。
(重点施策は以上)
今回の記者発表は、重点施策の一つにもあげられている経営の透明化の一環として行われた。記者からは、さらなる詳細な情報の開示や新たな施策の前に、過去の施策の失敗に対する総括が先ではないかなどと厳しい質問、意見も出た。
「泡盛が売れない」を言い換えれば「消費者が買わない」である。泡盛カクテルの開発であれ、古酒のブランド化であれ、各種イベントであれ、それが“消費者”の心に届かなければ、これまでの10年間のように、ただ公金で企画・イベント会社や広告代理店を豊かにするだけで終わる。
それが一部であれ、初の試みである経営状況の公開は、間違いなく消費者の心に届きやすいメッセージである。消費者側からすれば、小さな一歩かもしれないが、業界側からすれば、業界が消費者に向き合った飛躍の一歩であると評したい。今回の記者発表が我が琉球泡盛の真の反撃の狼煙たらんことを、心から願うものである。
(二代目預)