泡盛製造業等実態調査事業体(りゅうぎん総合研究所と沖縄県)は、3月22日沖縄県市町村自治会館(那覇市)2階ホールにおいて「琉球泡盛消費拡大に向けたシンポジウム」を開催した。このシンポジウムは県民の琉球泡盛に対する理解を深め、さらなる泡盛製造業の振興を図ることを目的としており、参加費が無料ということもあって、たくさんの泡盛ファンや泡盛関係者が訪れ、会場は補助席が出るほど満員となった。
開催者挨拶のあと、エッセイストで酒ジャーナリストの葉石かおり氏が「琉球泡盛の新たな飲み手」と題し基調講演を行った。葉石氏は昨今の「日本酒ブーム」の動きに着目し、泡盛の飲み手の拡大のヒントが隠れていると指摘し、さらに本格焼酎の全国展開にクールなイベントの開催があると分析。泡盛だけではなく酒類全体が落ち込んでいる中にも飲み手は本格志向になっており、米麹と水だけで造られる歴史と伝統ある泡盛こそ日本を代表する國酒といい、本物と呼べる琉球泡盛の魅力を再発見し、若い世代の飲み手に泡盛の魅力を「発信すること」が大切だと述べた。
葉石氏は更に「泡盛の伸びしろはまだある。若い人向けに継続的に泡盛の良さを知ってもらうイベントを開催するのもいい」と語る。食との相性の良さを活かすため「食中酒」と位置付け、各地の郷土料理や世界の料理と合わせたペアリングを研究し、飲食店や酒販店とコラボするのも大事。また、泡盛の魅力としてカクテルベースに向いていること、料理によって水割りやロックなど飲み方を変えたり、油を多用した現代料理やエスニック、中華にもマッチする点をあげた。
また、「今、本土では空前のパクチーブームで、専門店は予約でいっぱい。パクチーに合うお酒は少ないけれど、泡盛はパクチーに合う世界でも稀有なお酒」だともいう。パクチー料理との相性を提案したり、泡盛とパクチーを使ったパクチーモヒートなどいろいろな飲み方ができるのも魅力であると語り、いろいろな可能性のある泡盛だからこそ、あらゆるところにヒントがあると結び講演を終えた。
続いて、九州経済調査協会から「泡盛製造業等実態調査事業報告」が行われ、日本での酒類消費量が落ち込んでいる中、泡盛も例外なく落ち込んでいると報告。泡盛が落ち込んでいる理由については、泡盛に関するアンケートで自宅で泡盛を「飲まない」が約6割、自宅外でも泡盛を「飲まない」と答えた人が3割強もいること、県外での認知度も低く、福岡市内の20歳以上の大学生170名へのアンケートでは、泡盛を「知っている・飲んだことがある」と答えたのが1割で、存在そのものを知らないのが約6割となっている。さらに調査協会はアンケートだけではなく泡盛メーカや流通関係者の聞き取り調査を実施。泡盛ファンを増やすためにワークショップを行ったり、消費者ニーズの対応した商品づくり、流通段階での課題、若者や女性、観光客など今後需要が認められる新らしい消費者の掘り起こしなどの提言も行った。
プログラムの最後は「琉球泡盛の消費拡大に向けて」と題し、パネルディスカッションが行われた。コーディネーターに泡盛製造業等振興策検討委員会委員長の下地芳郎琉球大教授、パネリストには沖縄県卸売酒販組合連合会会長で(有)喜屋武商店代表取締役の喜屋武善範氏、㈱OTSサービス経営研究所代表取締役社長佐藤基之氏、㈱ぐるなび沖縄営業所添石洋一氏、消費者代表藤原明美氏が参加。泡盛への思いや思い出を語ったあと、それぞれの立場から泡盛拡大への提言を行った。
飲食業界に詳しい添石氏は、「日本酒ブームがあったり、人気の焼酎ブランドを置いている店ができたことから、沖縄の飲食店は積極的に泡盛を推していない」という。推さないどころか焼酎をすすめる店員がいたり、泡盛の知識のないスタッフがほとんどの店もある」と語り、店のスタッフに泡盛の魅力を伝えるべきだといった。
喜屋武氏は「泡盛を始め酒類全般が落ち込んでいる中で、泡盛の消費をいかに残すべきか。沖縄の若い人たちが泡盛を知らないので、泡盛の勉強をしてもらい、泡盛を飲む機会を作りその良さを知ってもらうのがいい」と答えた。
最後に下地氏は、泡盛を消費してもらうにはとにかく動くことが大切。泡盛ファン一人一人が知人や友人はもちろん、仕事や遊びで関わった人たちなど周りの人たちに積極的に宣伝したり、おいしい飲み方を教えたり、泡盛の歴史や文化を教えたりすることがファンを増やすことになる。とにかくいろんな人を巻き込んで、飲んでもらうことで泡盛の美味しさを知ってもらうことも大切と語った。
(嘉手川 学)