泡盛 環境衛生面の改善に努力せよ(昭和46年4月29日)
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[公開・発行日] 1971/04/29
[ 最終更新日 ] 2016/02/28 - 読む
両先島、沖縄本島の各泡盛メーカー工場を見て感ずることだが、旧態依然とした工場が多い。例えば豚舎と同居だったり、或いはすぐ近くにあったり、工場内の天井、床等汚れ過ぎる工場が案外多く見受けられる。
嗜好の中で清涼飲料、アルコール類は直接人間の口に入ることを考えた場合、環境衛生面には十二分な気を配らなければならないし、それが又前提である筈だ。
勿論、泡盛メーカー工場には一流の近代設備をして衛生面に徹底した工場は多い。しかし、まだ一部には非衛生的工場があると云うことは、復帰後、外来人間交流が激しくなってくることを予想した時、500年の伝統を誇る琉球泡盛と自慢するだけの自信をもって工場を案内でぎるだろうか甚だ疑問である。
とかく外来人はその島の古くから伝わる歴史を探りたがる。わけても、本土人は一を見て十を語るの類が多い。一のために琉球泡盛全体を語られたとしたら、それこそたまったものではない。
今後、彼らはぶらりと道端の工場を見たりする機会は常にあると考えねばならない。なるほどスカッチ(スコッチ)の本場スコットランドあたりの工場の天井は、その伝統を誇示するようなものだと云われているが、しかし貯蔵室ならいざ知らず、蒸溜場や仕込場は自ら話は別である。
ステン容器 有利
ところで、最近モロミ仕込タンクが段々ステンレスに変りつつあることは喜ばしい傾向である。ステンレス容器に切り変えた或るメーカーの話によると、13本の容器(1本250ドル)を2人で処理していると云うが、以前の甕容器では3~4名がかりだったと語っている。
これから推してみても、仮に2人分の賃金、1人150ドルの賃金として考えた場合、年間3,600ドル(ボーナス抜き)となる。250ドルのステン容器13本で〆めて3,250ドル。たった1年間に350ドルのお釣りがくる勘定になる。
3,250ドルの設備投資で次の借り入れ資金の担保にも効くし、能率的だと或るメーカーは話している。また従業員にしても明るくセメント張りに輝く清潔なステンのある工場になってからは定着率もよく、自分が近代的工場に働いているんだという自負心に燃えているとも云う。
これは一例ではあるが、業者は環境衛生面の改善を積極的に取り組んで欲しい。そうすることによって、内外に琉球泡盛の本当の良さを声を一段と張り上げて宣伝できると思われる。復帰前年の姿勢の第一歩とも云えよう。