琉酒連が復帰に備え要望~ぜひ実現させて欲しい~(昭和45年10月20日)
-
[公開・発行日] 1970/10/20
[ 最終更新日 ] 2016/01/25 - 読む
主税局では先に琉球酒造組合連合会(会長:佐久本政敦氏)に対し泡盛業界の全般的な対本土政府への具体的措置要請書を作成すべく、業界の要望書を早急にまとめて提出するよう求めていたが、琉球酒造組合連合会ではその要望書をまとめ、去る9月26日に提出した。
この基礎資料を基いて復帰対策室でまとめあげ、総合的な対本土政府への要望事項に琉球泡盛業界の基本要望も繰り入れられることになった。
今度提出された要望書の骨子は7つからなっており、
(1)酒造免許の件
(2)酒税の件
(3)酒造原料米の件
(4)泡盛販売ルートの件
(5)泡盛の商標ラベルの件
(6)中小企業資金融資の件
(7)醸造試験場設置の件
となっているが、いずれも泡盛業界にとっては切実な問題であり、これだけの措置が実現するよう強く要望している。又同時に復帰の時点までには琉球泡盛の定義付けも早急な課題だとする意見も強い。
先ず同要望書を列記してみると、要旨は次のようなものとなっている。
(1)酒造免許の件
終戦直後の1945年より3ヶ年間、泡盛製造は琉球政府工務部の直営となっていたが、1948年に民営に移され、百数十軒が酒造(泡盛)免許を得て泡盛の製造をした。
その後、焼酎甲類、ビール、洋酒の製造が許可になり、又泡盛業界も過当競争を繰り返し、次第に廃業者が多くなり、最近10ヶ年の泡盛製造業者の状況は以下の通りである。
全琉で58業者の酒造業者が営業しており、やや安定しているが、琉球酒造組合連合会としては現在の業者を近代化促進法に従って協業、合併、系列化をつくり、企業の合理化を図り過当競争を避けて安定した企業にして酒税の保全に協力したいと思う。
(2)酒税の件
現在、泡盛の税は以下の通りである。
(3)酒造原料米の件
泡盛の原料は古くから主としてタイ砕米(蓬莱米、加州米、本土米)が使われ、現在に至るまでタイ、ビルマ(現ミャンマー)から屯当たり70弗~90弗の値段で琉球酒造組合連合会が泡盛業者が集った協同組合的会社である琉球酒造組合連合会社に委託し、一括購入して各業者に販売させているが、復帰後も果たしてタイ砕米を輸入できるかどうか、吾々泡盛業者は心配しているが、復帰後も長い間の輸入実績を尊重され、タイ砕米の外貨割当てを認めて貰いたい。
又、本土の古々米を泡盛の原料にしたらとの話もあるが、これを使用さすことになれば、本土政府の食管法下の値段ではどうしても引き合わぬので、食管法からはずして現在のタイ砕米と同等値で使用させて貰いたい。
(4)泡盛販売ルートの件
現在,泡盛の販売は製造場から卸売店(俗称配達人と云っている)へ、卸売店から小売店へ、小売店から消費者への順序となっており、小売りは現在殆んどの店が行なっており、復帰後、販売制度が本土法によって施行すると、小売業者の生活をおびやかして社会的問題も発生し、商取引きの混乱を招くおそれがあるので、当分の間、現行法で施行してもらいたい。
(5)泡盛の商標ラベルの件
現在、各業者が使用している商標ラベルは、使用してから20有余年になる。沖縄には終戦から現在まで商標ラベルに関する工業所有権の登録法がないので、復帰後本土に於ける登録法のため、現在使用していお商標ラべルが使えなくなると、業界が大変混乱するのが予想されるので、是非現在の商標ラベルがそのまま使用できるよう要望する。
(6)中小企業資金融資の件
泡盛業は中小企業近代化の指定業種になり3年目をむかえた。当連合会では中小企業資金を活用して企業近代化(協業、合併)の促進を図っているが、現在あまり利用されていない。それは貸付が2ヶ年据置き5ヶ年払いとなっており(実際にはもっと短い期間となっている)本土では中小企業資金と更に設備促進資金の両面があって然も後者は無利子となっている上に要請額面の80%も融資できるようになって、非常に利用されているようであるので、沖縄でも貸付条件をもっと拡大してもらいたい(租税の減免、金利は無利子か低利、据置期限の延長、支払い期間の15~20年、土地造成費並びに運営費等)又、融資条件並びに融資額が僅少なるが故に効果をあげていない状態にああので、復帰以前に本土法と同様な融資条件で適用できるような育成策を構じてもらいたい。
(7)醸造試験場設置の件
醸造技術の向上を計るためには、常に鑑定官の醸造技術指導が必要であり、沖縄の酒造業界は終戦から今日まで、業者自ら酒質の向上研究に努力してきたが、業者自体のみでは到底所期の目的が得られない。従って本土復帰後は早急に沖縄県に醸造試験場を設置されるよう強く要望する。
となっている。