世界初!?渡嘉敷島の謎の泡盛を探せ!(文/二代目預)

   

ボクも嘉手川先輩風に書いてみたくなった。確か先月の中頃の深夜たぶん2時ごろ、ボクは桜坂のバーでとある泡盛蔵の若大将と泡盛を飲んでいた。記憶が定かでないがすでに3,4件はハシゴしただろうか。泡盛談義も3周目を迎えようかというころ、若大将が不思議なことを言い始めた。「渡嘉敷の米を使った泡盛を造ったんですよ。」

この若大将、泡盛造りに尋常ならざる情熱を持っており、真面目で頑固な職人気質も相まって時に根を詰めすぎてやいないかと心配になることがある。蔵人として午後のイベントへ参加するときは、午前の仕込みを終えて久米島から飛行機で那覇へ飛んできては、酒が心配だからとその日の最終か、翌朝一便で島へと帰っていく。今日もお疲れなのだろう。少し泡盛をすすめすぎたかもしれない。ボクは「渡嘉敷島?泡盛を造るほど米はとれないけどな?」と思ったが口には出さなかった。せっかくの上機嫌の若大将に水を差さないようにだ。「オレもね、最初はどうしようか迷ったんですよ、でもね、“島の酒がほしい”という気持ち、同じ島の人間としてすごく分かるじゃないですか、原料米のブレンドなんて手間のかかること誰もやりたくないですよ。でもそういうのこそオレたちがやらねば …  」

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki01泡盛の原料は主にタイ産のインディカ米である。時に国産米が使われることもあるが、種麹を除けば、それを混ぜて使ったりはしない。米の品種により蒸し方も麹の付き方も違い製造に余計なリスクや手間がかかるからだ。原料米をブレンドして醸す、もしそんな泡盛が本当に存在したらおそらく沖縄初、すなわち世界初の原料米ブレンド泡盛の可能性すらある。ボクは少し反省した。お疲れの若大将に飲ませすぎたかもしれない。いやボクが飲み過ぎたのかもしれない。ここらでお開きに、とあいなった。

翌週の月曜日、やはりどこかしら気になったので若大将の蔵に確認の電話をした。すると本当にタイ産米に渡嘉敷島の米をブレンドした“原料米ブレンド”泡盛は存在するという。それならば実物が見たいので売ってくれないかとお願いすると、すでに全量渡嘉敷島の国吉なる人物の手に渡したとのことだ。それならばと国吉氏の連絡先を教えてほしいと食い下がると、先方から連絡するように手配してくれるという。

さらに翌日、国吉氏からボクのスマホに連絡が入った。「田場さんから連絡するように言われたんですが。」電話口からはボクの想像とは違って若く元気な男性の声がした。ボクは彼の持つ泡盛がどこで購入できるかを尋ねたが、小売店での販売はしていないという。渡嘉敷島のいくつかの居酒屋へ卸しているのでそこで飲んで欲しいとのことだ。「それでは次の日曜日に渡嘉敷島へ行きます。もしお時間が合えば国吉さんの取材もさせてください。」とお願いし、ボクは電話を切った。

渡嘉敷島は、沖縄本島(泊港)から高速船で35分で行ける比較的近い離島である。しかも世界有数の透明度を誇る海はケラマブルーと称されマリンスポーツのメッカでもある。もしボクが安里らへんの居酒屋で観光客にどこのビーチがオススメかと問われたら、まずは本島内のビーチをいつくか紹介した上で、次回、沖縄本島に来るときはぜひ渡嘉敷島へも行きなさいと付け加える。
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渡嘉敷島には渡嘉敷、渡嘉久(とかしく)、阿波連(あはれん)の三つの集落があり、その集落間の距離は遠くてもおよそ5キロメートル。国吉さんの携帯電話の番号も着信履歴にあることだし、その他の準備はあまりいらないな、と思った瞬間、ちょっとしたイジワルを思いついた。

そういえば、最近気がつけばタメ口どころか日陰からボクに的確な指示を出している我が社の広報兼企画兼お笑い担当兼利き酒担当の泡盛ファン女子大生アルバイト社員ヒナ嬢に、この謎の泡盛を探すというミッションを与え、困り果てたところでボクの豊富な知識と経験、そして人脈で難題が解決する様を見せ、オジサンの真の実力というモノを見せつけてやろうというイジワルである。

さっそく「今週末、日帰りで渡嘉敷島に謎の泡盛を探しに行くけど来る?」と軽く誘ってみると、「わーい!友達のミユユも連れて行っていいですかぁ?」とさらに恐ろしく軽い返事が帰ってきた。まずは仕事と遊びの違いから教えねばなるまい。

「10時発のフェリーに乗るから9時30分に泊港集合ね。泡盛探しはヒナがやって、その様子をボクが記事にするから。サブタイトルは”ヒナ嬢はじめてのおつかい”な。」と言い残すと、ボクは計画通りその後の段取りをやめた。

<<ヒナ嬢はじめてのおつかい>>

泊港に停泊するフェリーとかしき

泊港に停泊するフェリーとかしき

7月3日(日)ボクはチケットの手配もあるので、フェリーの出航約1時間と30分前に那覇市の泊港に到着し、渡嘉敷島行きのチケット売り場に並んだ。そして最初の事件が起こった。まだ夏休み前だからと高をくくっていたら、行きの船は座席残りわずか、帰りの船は予約ですべて満席という。係員が拡声器でアナウンスする「渡嘉敷島からの本日の帰りの船は全て予約で満席です。お帰りの船のご予約がないお客様は本日那覇へは戻れません。」ボクは本気で焦った。さすがにこの段取りの悪さはボクのミスである。このままでは最後に残ったなけなしの何かもきっとヒナ嬢に根こそぎ持って行かれる。たぶん微笑みながら。

約束の集合時間まであと30分。どうする?冷や汗をかきながら全力で言い訳を考えているとヒナ嬢からメールが。

「今、起きたんですけど大丈夫ですかね?」。

ヒナ嬢の家から泊港まで車で1時間弱。大丈夫なわけがないだろう!!勝った!いや、引き分けた!「もう日帰りはムリなので、今日はいったん中止にしよう。一泊にして一人で行きます。」ボクはすぐさま返信した。

約1時間後、とりあえず港にやってきたヒナ嬢はお腹が空いたからまずは何かを食べさせろという。港の2階の食堂で、朝定食をごちそうすると、ヒナ嬢は手の甲の火傷のいきさつと、バーで仲良くなった社長の話を30分ほど熱弁して帰っていった。朝寝坊の謝罪はなかった。ボクが4回も謝ったのに。

ヒナ嬢はじめてのおつかい。記録0メートル。

ボクは気を取り直して、13時発の高速船マリンライナーとかしきに乗船することにした。高速船はフェリーにくらべ小さくシンプルなフォルムである。出航前に写真に収めようとしたが、今ひとつ単調で絵にならない。近くにいた観光客らしき女性に恐る恐るフレームに入ってもらえないかお願いすると「いいですよ!」と二つ返事。世の中には天使のよう女性もいるもんである。しかも三人も。
world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki05午前中のゴタゴタの疲れもあり、ボクは出航するとすぐに眠ってしまった。次に目が覚めたらそこは渡嘉敷島だった。島に上陸すると宿からの送迎バスが待っていた。急遽手配した宿は港の反対側にある阿波連地区のホテルサンフラワー。さっそく送迎バスを運転してくれたジュンさんに渡嘉敷島の米で作った泡盛を知っているかと尋ねてみると「分からない」との返答が。まだあまり知られていないらしい。

ホテルサンフラワーのジュンさん

ホテルサンフラワーのジュンさん

渡嘉敷島にはボクの友達の友達であるタイキという男がいる。以前、居酒屋でマリンレジャーの達人として紹介された。ほとんどアポナシで島へ来てしまった以上、どんなコネでも使うしかない。タイキが働いているマリンハウス阿波連を訪ねた。マリンハウス阿波連は、シュノーケル、ダイビング、シーカヤック、バナナボート、海遊びならなんでもござれの渡嘉敷島でも有名なショップだ。「お久しぶり!」「お久しぶりっス!今日はプライベートで?」「半分そうだけど、渡嘉敷の米を使った泡盛を探してるんだけど知ってる?」「泡盛?知らないですね。新商品ですか?」

マリンハウス阿波連のタイキ。マリンレジャーの達人

マリンハウス阿波連のタイキ。マリンレジャーの達人

ボクがこの段階でもっている情報は三つ。一つ目は、国吉さんの電話番号。でも国吉さんはダイビングショップや宿を運営しており、来客対応で日中はほとんど連絡がつかない。二つ目は、バラックという居酒屋にその泡盛があるらしいこと。こちらもボクが到着した時間はランチタイムとディナータイムの間の休憩時間で連絡がつかない。三つ目は、渡嘉敷島で米を生産している當山さんという方の電話番号。そこで當山さんに電話をかけると、会ってくれるという。「渡嘉敷集落から渡嘉久集落に向かう途中に石碑と田んぼがありますから、そこに来て下さい。」非常にアバウトな指示ではあるが、渡嘉敷島の田んぼの位置はだいたい分かっているので、とりあえずレンタルバイクをかりて向かうことにした。
world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki08田んぼにたどり着くと、そこにはなぜか2匹の自由なヒージャー(山羊)が。しばらくすると、軽トラックに乗って、元気なオジサンが現れた!「あーコレ家つくらんともうあっちこっち行って危ないな。」どうやらヒージャーはオジサンのペットらしい。「當山さんですか?」ボクが尋ねると「あ!エイジが来るかと思ったら、君か?」。ボクは十分な段取りをせずに島に渡ったことを詫びた上で、當山さんが米を作るようになったいきさつと、泡盛用にどのような米を供給したのかを聞いた。
world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki09當山さんによると、泡盛に使われている渡嘉敷の米はなんと當山さんが栽培した黒米であるとのことだ。エイジとは国吉さんの名前のことで、當山さんとの会話により、エイジは島想いの青年で非常に賢いこと。當山さんの息子とエイジは友達であること。當山さんは昔学校の先生で、今では黒ウコン、ゴーヤー、黒米など色が濃くポリフェノールが豊富な作物を作る達人であることが分かった。「“黒”には何かあると思うわけよ。」とほほえむ當山さんは、今年で78歳という。恐らくその“黒”のおかげでだろう、異様に若々しい方であった。

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki10當山さんにお礼を言い、途中渡嘉久ビーチでコロゴロしつつ阿波連地区に戻った。レンタルバイクを返却する際、ショップ(かりゆしレンタサービス)の店員で情報通のヨッ君からさらに貴重な情報を得た。「たしかその泡盛、マーサさんの店にあったような気がします。」

 

あとは、日が沈むまでケラマブルーの阿波連ビーチでゴロゴロして、バラックかマーサさんの店(まーさ-の店)が開店するのを待つばかりである。やはり渡嘉敷島の海は沖縄でも屈指の美しさであることをゴロゴロしながら再確認した。
world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki11午後6時、まーさーの店が開店すると同時に入店し、開口一番「渡嘉敷の泡盛ありますか?」と注文すると、ついに出てきました!原料に渡嘉敷島の黒米をブレンドした“原料ブレンド泡盛”その名も「渡嘉敷」。

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki12まず驚いたのがラベルの美しさ。キラキラと青く光る渡嘉敷の文字は、まさにケラマの海の色である。味はなるほど原料の風味を十分残した、あの蔵ならではの奥深さ。相変わらず丁寧に造っていると感心した。2杯目を飲み終えたころ、店の前に行列ができ始めたので、いったん店を出ることにした。

次に向かったのは、まーさ-の店から50メートルほど離れたところにある、喰呑屋バラック。すでに店は満席でボクが座る席はなかったが、取材ということで立ち飲みを許していただいた。そんな挙動不審のボクに客が質問する「何かの取材ですか?」「渡嘉敷という珍しい泡盛を取材しているんですよ。」「泡盛?」「そう、この泡盛は今までありそうでなかった”原料米をブレンド”した泡盛で、歴史に名を残すかもしれない泡盛なんですよ。」ボクの興奮が伝わったのか、あちらこちらのテーブルで“渡嘉敷”の注文が入り出した。「泡盛って美味しいのね。」「そうでしょう。しかもこの泡盛は渡嘉敷島でとれた黒米が原料としてブレンドしてあるんですよ。その風味も残ってるでしょ。」world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki13実際にその黒米を作ったスーパーオジーの話を交えながらお客さんと交流していると、ボクのスマホに国吉さんから連絡が入った。「やっと一段落つきました。30分くらいしか時間がありませんが、大丈夫ですか?」ボクは大急ぎで指定の場所ケラマテラスに向かった。

大人気の喰呑屋バラック

大人気の喰呑屋バラック

ケラマテラスは喰呑屋バラックからさらに100メートルほど離れた場所にある白壁のおしゃれな宿である。玄関を入り受付で名乗るとすぐに国吉さんが現れた。笑顔がステキな好青年である。ボクは国吉さんとは初対面であったが、バラックの店長から、スーパーオジーから、若大将から、ヨッ君からエイジ(栄治)の話を聞き、彼が企画した泡盛にも感動していたため、勝手にどぅしぐゎ(友達)気分であった。エイジは泡盛「渡嘉敷」ができたいきさつを話てくれた。

 

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki15実はエイジはケラマテラスを運営する有限会社ケラマの代表取締役であると同時に、渡嘉敷村商工会青年部の部長でもあった。彼が島外での様々な集まりに参加すると、親睦会では皆一様に自分の出身地で製造された地元の酒をすすめてくる。そんな中、慶良間諸島への愛着が人一倍強いエイジは自分たちの島の酒が欲しいという想いを強めていった。そしてどうせ島の酒を持つなら、渡嘉敷島の遠浅でやさしくきれいな海のイメージに合う、米だけで造る透明で混じり気のない泡盛が欲しいと。しかも島に酒造所がないからと言って、ただラベルだけ”渡嘉敷”を貼ったのでは意味が無い、せめて島の米を原料にした泡盛ができないかと訪ねたのが、先の若大将の蔵「米島酒造」であった。なぜ、久米島の米島酒造を選んだのか?と尋ねると、答えは明白だった。「米島の泡盛は美味いでしょ。しかも田場さん(4代目)なら僕ら島の人間の気持ちを分かってくれると思って。」そしてその想いに賛同したもう一人の島人が、石垣島出身の書道家浦崎善隆。この泡盛“渡嘉敷”のラベルに踊る豪快な筆文字は彼の作品である。

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki16島の人々の想いが一つになって生まれた幻の黒米ブレンド泡盛“渡嘉敷”。販売は一切していないが、現在渡嘉敷島の9個所の飲食店で飲むことができるという。ぜひ渡嘉敷島に立ち寄った際は探して飲んでいただきたい。

翌朝、撮影用にとお借りした泡盛を持って、阿波連ビーチに出かけ写真をとっていると、ファインダーの中になにやら元気な女性たちが。アイ!行きの港であった天使さんたちではありませんか!「やあ!もし …」「いいですよ!」。世界屈指の美しいビーチに、美味しい泡盛、そして天使さんたち。渡嘉敷島、行くしかないでしょ、やっぱり。

world-first_find-the-awamori-of-the-mystery-of-tokashiki17(二代目預)

泡盛“渡嘉敷”が飲める店(平成28年7月15日現在/取材時より3店舗追記)

阿波連集落

喰呑屋バラック(渡嘉敷村阿波連145)
まーさーの店(渡嘉敷村阿波連176)
オクトパスガーデン(渡嘉敷村阿波連87)
SOUND BEACH CAFE(渡嘉敷村字阿波連122 ペンションハーフタイム)
海鮮居食屋シーフレンド(渡嘉敷村阿波連155)
cafe島むん+<カフェシマムンプラス>(渡嘉敷村阿波連152) 

渡嘉久集落

とかしくマリンビレッジ(渡嘉敷村字渡嘉敷1919-1)
我喜屋商店(渡嘉敷村渡嘉敷1923)

渡嘉敷集落

マリンボックス(渡嘉敷村渡嘉敷1779-5)
漁師食堂かなろあ (渡嘉敷村字渡嘉敷196)
リバーサイド(渡嘉敷村字渡嘉敷205)
串焼き屋台 三男坊

製造メーカー

手作り一筋「米島酒造」
yoneshima

ご協力いただいたショップ・宿

ケラマテラス(渡嘉敷村阿波連103)
マリンハウス阿波連(渡嘉敷村阿波連106)
かりゆしレンタサービス(渡嘉敷村字阿波連128)

ケラマテラス

ケラマテラス

マリンハウス阿波連の海の家

マリンハウス阿波連の海の家

タイキとマリンハウス阿波連のスタッフ。阿波連最強か?

タイキとマリンハウス阿波連のスタッフ。阿波連最強か?

マーサさんがやっているまーさーの店

マーサさんがやっているまーさーの店

SoundBeachCafe 阿波連集落では比較的遅くまで営業している。

SoundBeachCafe 阿波連集落では比較的遅くまで営業している。

オクトパスガーデン

オクトパスガーデン

海鮮居食屋シーフレンド

海鮮居食屋シーフレンド

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