~知られざる泡盛の世界~泡盛技術セミナーin御茶ノ水(文・写/岡山進矢)

   

沖縄国税事務所と沖縄県工業技術センターは、令和元年10月14日(月)、ワイム貸会議室御茶ノ水(東京都千代田区)にて、首都圏での泡盛認知度向上を目的とした泡盛技術セミナー「知られざる泡盛の味わいの世界 ~伝統から革新技術まで~」を開催した。

+セミナー_会場

折しも、この日の前日には、超大型の台風19号が本州を襲い、交通機関を含めたインフラが混乱を極め、開催が危ぶまれたが、沖縄からの関係者も無事到着し、予定通りの開催となった。

受講費は無料、定員は100名。主に酒類販売業者や飲食業従事者、酒類業に関わるマスメディアを対象としたセミナーだったが、オープンでの公募だったこともあり、参加者にはディープな泡盛ファンの姿も多く見受けられた。

今回の登壇者は4名で、全員、各々泡盛酒造所を代表する現役の造り手だ。

開幕にあたって、沖縄国税事務所 池田義典所長から「日本のハードリカーとして他に替えられない価値を持つ泡盛を、県外にも広く知って欲しい」と挨拶があった。

+セミナー_石川最初の演者は、石川酒造場 製造部課長代理 石川由美子氏。「甕仕込み・甕貯蔵のこだわり」と題し、伝統的な”甕仕込み”を創業当初から続ける蔵元としての苦労とその利点を紹介した。あくまで他社製品と比較するものではないと前置きした上で、複雑な味わいと甘い香りがより得られるという甕仕込み製法の優位性について、イラストを使いわかりやすく説明した。 +セミナー_請福

次に登壇したのは、請福酒造 代表取締役社長 漢那憲隆氏。「琉球王国庶民の酒イムゲーの復活」と題し、飲酒人口の減少や消費の多様性などの影響を受け年々減り続ける泡盛消費量に対する考察とともに、そこに一石を投じる新ジャンル酒「イムゲー」開発プロジェクトについて紹介した。

+セミナー_瑞穂15分の休憩を挟み、瑞泉酒造 製造部 伊藝壱明氏が、自身がリーダーとして牽引する3回蒸留製法泡盛「尚」のプロジェクトについて解説。「新製法で和酒のハードリカーへ」と題し、新製法に関する詳細と開発秘話、そしてその思いを語った。

+セミナー_瑞泉トリを飾ったのは、瑞穂酒造製造部品質管理室主任の仲里彬氏。「沖縄から届けるジンとビターズの魅力」と題し、リリース以来、衰えぬ人気で、国内外で多くの受賞実績ももつ泡盛をベースとしたジン「ORI-GiN」シリーズと「ビターズ」について語った。現在、各所セミナーに引っ張りダコの仲里氏のプレゼンテーションは流暢でわかりやすく、受講者の興味を惹いていた。

今回のセミナー全体を通して印象的だったのは、新商品開発が「まず目的の香味を設定して、それに対する製造方法を設計する」という考え方に基づき、「イメージQDA」と呼ばれる分析方法を利用した手法が主流となっていること。

現状の原材料や製造設備、製造経験からの着想で進められることが多かったこれまでの商品開発に比べ、まずは結果をイメージして、それを実現するための製造方法、設備を模索するという高難度の取り組みに移行している。

加えて、日本を代表するハードリカーである琉球泡盛の若き造り手たちの意識が、完全に世界と競っていることを感じることができた。

各講義の後にはそれぞれ質疑応答の時間が設けられ、受講者から積極的に手が挙がった。予定時間を超過し、セミナーは終了。大きな拍手が起こった。

主催である沖縄県工業技術センターの玉村隆子主任は「受講者の反応が良かった。普段忙しい造り手さんたちに来てもらっているので、そうそうはできないが、ターゲットを一般ファンに広げることも視野に入れ、また開催したい。」と手応えを語ってくれた。

熱心に聴講していた某泡盛メーカーの在京営業の男性は「個人的なお酒の知見を深めるために参加した。他のお客さんの反応を含め、とても勉強になった。」

都内で焼酎・泡盛バーを経営する男性は「イムゲーのことは以前から知っていたが、お店で扱うことには躊躇していた。今日詳しく話が聞けて、俄然興味が湧いた。」

神奈川から参加した泡盛マイスターの男性は「若手が努力し、上がそれを支えようとしている業界の雰囲気を感じることができ、感激した。日本のハードリカーが世界に打って出る可能性に期待したい。」と語ってくれた。

+セミナー_卓上

(文・写/岡山進矢東京支部長)

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